GPSの悪用でストーカー規制法違反?

GPSの悪用でのストーカー規制法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
元交際相手のVさんに対して、一日に何度も電話やLINEで復縁を迫っていた会社員のAさんは、三重県大台警察署から警告を受けました。
しかし、何とか話だけでもできないかと思ったAさんは、Vさんの車にGPS機器を取り付け、Vさんの位置を確認し、休日Vさんのいる場所を訪れていました。
ある日、ニュースでGPSの悪用がストーカー規制法の規制対象となったとのニュースを耳にしたAさんは、心配になり刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

5月18日、改正ストーカー規制法が、衆議院本会議で可決、成立しました。
改正ストーカー規制法は、GPS機器を悪用して、相手の承諾なく位置情報を把握する行為などを規制対象に追加しました。

ストーカー行為等の規制等に関する法律(「ストーカー規制法」)は、平成12年に制定・施行されました。
ストーカー規制法は、「ストーカー行為」を処罰対象とするほか、「つきまとい等」の行為を取り締まり、被害者に対してストーカーからの被害の防止のための援助などを行うことを定めています。

ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは、
「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」
と定義されています。

「ストーカー行為」の要件である「つきまとい等」については、以下のように定義されています。

この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

■犯行の対象■
「つきまとい等」の対象は、特定の者、その配偶者、直系・同居の親族、その他特定の者と社会生活において密接な関係を有する者(例:友人や職場の上司など)です。

■目的■
「つきまとい等」と言えるためには、特定の者に対する恋愛感情や好意感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情等を充足する目的がなければなりません。

■行為■
上に掲げた8つの行為を反復して行うことです。
①~④及び⑤(電子メールの送信等に限る。)の行為は、身体の安全、住居等の平穏、名誉が害され、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法である必要があります。
「反復して」とは、複数回繰り返すことを意味します。

近年、元交際相手の自動車等にGPSをひそかに取り付け、その位置情報を取得するというケースが発生していました。
しかし、相手の自動車にGPSをひそかに取り付けて位置情報を探索・取得する行為は、ストーカー規制法で規制の対象とされる「住居等の付近においての見張り」には該当しないとの裁判が出ており、その規制の対象外となっていました。
今回の改正ストーカー規制法は、「つきまとい等」の行為に、
相手の承諾を得ずに、その所持する位置情報記録・送信装置(GPS機器等)に係る位置情報を取得する行為、
相手の承諾を得ずに、その所持する物にGPS機器等を取り付ける行為
を追加しており、改正ストーカー規制法が施行されれば、GPSを悪用した相手の位置情報の無承諾取得等がストーカー規制法違反として取り締まりの対象となります。

ストーカー行為に対する法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
平成28年の改正前は親告罪とされていましたが、改正後は非親告罪となっており、被害者の告訴の有無に関係なく、起訴される可能性があります。
非親告罪とはいえ、被害者がいる事件では、被害者との間で示談が成立すれば、起訴猶予で不起訴となる可能性がありますので、事件を早期解決するためには、できる限り早い段階から弁護士を介した示談交渉を行うことが重要でしょう。

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