業務妨害

【信用毀損及び業務妨害罪(刑法233条)】

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

【威力業務妨害罪(刑法234条)】

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 

1 信用棄損罪について

233条には信用棄損罪と業務妨害罪が規定されていますので、まず信用棄損罪について説明させていただきます。

信用毀損罪は、人に対する社会的評価のうち、「経済的信用」を保護する罪です。経済的信用以外の社会的評価は名誉毀損罪や侮辱罪で別に処罰されます。経済的信用には、支払い能力または支払い意思に加えて、商品に対する社会的信頼も含まれます。例えば、飲食店の料理に真実でないのに「異物が混入している」とネットに書き込むことは、商品に対する社会的信頼を低下させたとして、信用棄損罪が成立する可能性があります。

 

2 偽計業務妨害罪について

(1)偽計業務妨害罪はどのような場合に成立するか

偽計業務妨害罪は、成立範囲が非常に広い犯罪です。成立範囲は、ほとんど無限定と言っても過言ではありません。あらゆる手段が、犯罪の行為とみなされます。条文上、偽計業務妨害罪が成立するのは、①虚偽の風説を流布し、②又は偽計を用いて、③業務を、④妨害したといえる場合である。

 

(2)虚偽の風説を流布

虚偽とは、客観的真実に反することを指します。したがって真実をいくら言ったところで偽計業務妨害罪は成立しません(ただし、別途名誉棄損罪の成立の可能性はあります)。

風説というのは噂を指し、その内容は具体的なものである必要はありません。

流布とは、不特定の者又は多数の者に伝えることを言います。しかし、たとえ1人しか言っていなくても、他人を通じて順次広まっていくことを認識して、実際に風説が広まってしまった場合には、「流布」に当たります。

 

(3)偽計

偽計とは、人を騙し、あるいは人の錯誤または不知を利用することをいいます。この偽計は、幅広く解釈されているため、実際には「威力以外の不正な手段」と捉えられています。

裁判で「偽計」にあたると判断された例では、用もないのにお店に問い合わせ電話を何回もした例、お店の前に壁を立てて休業中であるかのように見せた例、替え玉受験をした場合に偽計業務妨害罪が成立しています。

 

(4)業務

「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務又は事業をいいます。社会生活上の活動であることが必要で、個人的な活動や家庭生活上の活動は含まれません。簡単にいえば、職業として行っているような行為を対象としていて、スポーツや学習、娯楽や趣味、料理や洗濯などの家事は含まれないということです。

 

(5)妨害

現実に妨害されている必要はなく、妨害されるに足りる行為が行われた場合には業務妨害罪が成立すると考えられています。

 

3 威力業務妨害罪について

威力業務妨害罪の要件としては、偽計業務妨害罪の、「偽計を用いて」の部分が「威力を用いて」に変わるのみです。そして、「威力」とは、人の意思を制圧するに足る勢力の使用をいいます。この意味について、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいいます。この意味について、暴行や脅迫より広い意味であるとされています。

裁判で「威力を用い」と判断された例としては、デパートの食堂で蛇をまき散らした行為、猫の死骸を事務所の机に入れて社員を驚かせようとした行為、弁護士のカバンから訴訟記録等を自宅に隠した行為等に、威力業務妨害罪が成立しています。

 

4 業務妨害罪についてよくある質問

Q いたずら電話をすると何か犯罪が成立しますか

A 偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

裁判例の中に「中華そば店に約970回にわたり無言電話をかけた事例」に関し、偽計業務妨害罪を成立させたものがあります。ここまでの回数でなくても、相手の業務を妨害すると判断されれば、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

 

Q 威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪はどのように区別するのですか

A 明確な区別はありませんが、大まかにいえば相手が明らかに障害を認知できる状態であれば「威力」、相手にわからないようなこっそりとされる障害の場合には「偽計」にあたると判断されています。

近年ではネットの書き込みで爆破予告、殺人予告等の脅迫が行われることがありますが威力か偽計かの区別が難しい事案のひとつです。しかし「偽計」にあたるか「威力」にあたるかによって法定刑に差はないので、重要なのは、「威力」と「偽計」のどちらに当たるかではなく、どちらかには当たるかどうかなのです。

 

~業務妨害事件における弁護活動~

1 示談活動

業務妨害罪は親告罪ではありませんが、被害者が存在する犯罪です。ですので、被害者との間で、示談を成立させたり、被害弁償を行うことで、事件を早期に解決することができる可能性が高まります。

被害届が出される前であれば、示談をして被害者が被害届を出さないように交渉することで、そもそも事件化することを防ぐことができるかもしれません。また、捜査が開始していても、早期の身柄開放のために考慮される事由となります。

 

2 業務妨害罪が成立しないことを積極的に争っていく

身に覚えのない事実で、業務妨害の疑いがかけられている場合には、アリバイや別の犯人がいる可能性を表す証拠の収集や事実調査をして、捜査機関に適切な対処をとることで、早期に疑いを晴らし、事件を解決できるよう努めます。

津や四日市など三重県の業務妨害事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。弊所では、三重県内の様々な暴力犯罪について、刑事事件・少年事件に専門特化した弁護士による無料の法律相談を行っています。関係者が三重県で逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。

 

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