1 どのような法律なのか
児童買春・児童ポルノを規制する法律は、正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいますが、本ページでは便宜上「児童買春・児童ポルノ禁止法」として説明させていただきます。
どのような場合に処罰を受けるのかを説明する前に、この法律が制定され、近年重罰傾向にある目的について説明させていただきます。児童買春、児童ポルノ禁止法は、児童の性的搾取、性的虐待に対応する目的で制定された法律です(1条)。単に児童ポルノを所持するだけでも処罰されるのは、購入する人がいることで、児童ポルノの製造が助長され、児童の被害者が増え、上記の趣旨に反するからなのです。
2 児童買春・児童ポルノ禁止法の用語の説明
(1)児童
18歳に満たない者を指します。就学の有無は問いません。ここで児童買春や児童ポルノに係る罪の故意が問題になります。被害者が18歳未満であっても18歳以上であると認識していれば、児童買春の故意がなかったとなります。
(2)児童買春
次の①~③に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、児童に対し、性交等をすることを指します。よく争いになるのは「対償の供与又は供与の約束」の有無です。渡した金額が僅かな場合や、買い物に連れて行ってあげるといった抽象的な約束でも、要件を満たす場合があるので注意が必要です。
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(3)「性交等」
性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることを指します。
なお児童買春・児童ポルノ禁止法では、性行為について同意があることが大前提になっています。仮に同意がない場合には、不同意性交等(旧強制性交等)や不同意わいせつ(旧強制わいせつ)と言ったより重い罪が成立します。
(4)「児童ポルノ」
写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した
もの
- 児童を相手方とする又は児童による性交または性交類似行為に係る児童の姿態
- 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 衣服の全部又は一部をつけない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
3 児童買春・児童ポルノ禁止法の罰則
この法律で規制される行為についての主な罰則は以下の通りです。
- 児童買春→5年以下又は300万円以下の罰金
- 児童ポルノ単純所持→1年以下又は100万円以下の罰金
- 児童ポルノ製造・提供→3年以下又は300万円以下の罰金
4 児童ポルノ・児童買春禁止法でよくあるご質問
Q 児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪は被害者が告訴しなければ罪に問われませんか
A いいえ。成立します。
児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪は非親告罪ですから、被害者が告訴しなくても罪に問うことは可能です。ただし、児童買春については被害者がいらっしゃる犯罪ですので、被害者と示談が成立していることは、処分内容に一定の影響を与えます。
Q たまたま送られてきたファイルをダウンロードしたところ、そのファイル内に児童ポルノが含まれていました。この場合にも児童ポルノ単純所持罪が成立しますか。
A 成立しません。
児童ポルノ所持罪も、故意犯です。故意犯とは、犯罪事実の認識が必要となるところ、児童ポルノをダウンロードしようという認識が必要になるの、たまたま含まれていただけでは犯罪になりません。
ただし、そのデータが児童ポルノであると認識した後も、これを削除せず所持を続ければ単純所持の故意が認められることになるので注意が必要です。
~児童買春・児童ポルノ禁止法違反の弁護活動~
1 捜査段階における弁護活動
①取調対応
弁護士が接見に赴き、嘘の自白調書やニュアンスが違った調書が作成されないようアドバイスします。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪については年齢の認識や所持の故意等が争点となることが多く、適切なアドバイスを受けることで、同罪の成立を争うことが可能になります。
②示談交渉
早期に示談交渉に着手するとともに、不起訴処分など有利な結果を導けるよう活動します。特に児童買春については、被害者がいる犯罪ですので示談をすることでより有利な処分結果を狙うことが可能になります。
③身柄解放活動
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。
④否認の場合の弁護活動
否認事件では、独自に事実調査を行うとともに、意見書を作成するなどして不起訴に向けて検察官に働きかけを行います。
2 公判段階における弁護活動
①有利な判決を目指した公判活動
少しでも有利な処分(執行猶予)がでるように活動します。公判段階でも示談、監督者の確保、被告人の反省を訴えていくこと等が具体的な活動になります。
そして有利に働く事情として、再犯防止策の策定、すなわち今後の再犯防止策をしっかりと講じているかが重要になります。児童買春・児童ポルノ禁止法違反のような性犯罪の場合、自分の欲求をコントロールできずに犯行に至ってしまうケースが一般的に多いです。そのため自分の力だけで再犯を防止できない場合があります。そのような場合には家族を含めた協力や、専門機関を受診したりプログラムに参加したりといった周囲の協力が重要になります。そして、そのような策を講じていることを証拠として裁判で提出することで、有利な情状として評価してもらえる可能性があります。
②無罪判決を目指した弁護活動
否認事件では、冤罪を防止すべく被害者の方に記憶違いがないかの検証・弾劾活動及び弁護側独自で有利な証拠を収集・提出できるよう活動します。
津や四日市など三重県の児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。弊所では、三重県内の様々な性犯罪について、刑事事件・少年事件に専門特化した弁護士による無料の法律相談を行っています。関係者が三重県で逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。