児童虐待事件の幇助犯
児童虐待事件の幇助犯について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
三重県いなべ市に住むA子は、一人で5歳の娘を育てるシングルマザーでした。
あるときから、A子は男性Bと交際するようになり、3人で同棲するようになりました。
BはA子の連れ子が気に入らず、たびたび暴力をふるうようになっていきました。
A子は娘への暴力に対して注意や制止をすればBを怒らせ、かえって事態を悪化させてしまってしまうのではないかと考え、暴力をふるうのを見て見ぬふりをしていました。
ある日、A子の娘の怪我を見て不審に思った幼稚園の先生が児童相談所に通報し、児童相談所職員が家を訪ねたことにより、職員が三重県いなべ警察署に通報したため、A子とBは傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(この事例はフィクションです)
傷害罪
第204条
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
~共犯~
共犯として、二人以上で共同して犯罪となる行為を実行した場合、二人とも罪に問われる可能性があります。
今回のA子も共犯として傷害罪の容疑で逮捕されてしまっています。
一般には共犯と呼ばれますが、法律上は正犯と同じ罪となる共同正犯や、犯罪をそそのかしたという教唆犯、犯罪を助けたという幇助犯など犯罪に関わったとして処罰される可能性にはさまざまなものがあります。
今回のA子が共犯となるのか、なるとすればどのような共犯となるのか検討してみましょう。
~見て見ぬふりも犯罪?~
今回のA子は直接娘に暴行を行っていませんが、Bの共犯といえるのでしょうか。
A子は娘に対するBの暴行を見てみぬふりをしていただけで、なにか積極的な行為(作為)にでていたわけではありません。
そのため、傷害罪の共同正犯や教唆犯にはならないと考えられます。
しかし、幇助犯については、例えば犯罪に使用する道具を準備するなど積極的な援助行為が該当しうるのはもちろん、正犯の行為を防止しないという消極的な行為が該当することもあるのです。
似た事実関係の過去の実際の裁判例でも、子どもを助けなければならない義務のある母親が、同棲相手の子どもに対する暴行を監視や制止という手段を用いて防止できるのにしなかったことから、そのことによって父親の犯罪の成立を容易にしたと判断され、母親に対する幇助犯の成立を認めたものが見られます(札幌高裁H12.3.16)。
同様の考え方を用いると、今回の事例でもA子が傷害行為の実行を助けたとして、傷害罪の幇助犯が成立する可能性があります。
しかし、例えばA子に傷害行為を止める手立てがなかったということが証明できる事情があれば、傷害罪の幇助犯は成立しないと主張していくことも可能です。
どういった事情がこうした主張のための材料となるかは、専門知識と実際の事件の状況や事情を突き合わせながら検討していかなければなりません。
また、幇助犯は従犯と呼ばれ、法律的に従犯の刑を減軽する、とされています。(刑法第62条、第63条)
そのため、事実に争いがある場合でもない場合でも、児童虐待事件の容疑をかけられたら刑事事件に精通している弁護士に相談しましょう。
児童虐待などの傷害事件で弁護士に相談してみたい、専門家の話を聞いてみたいという方は、刑事事件に熟達した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に、ぜひご相談下さい。
ご家族が逮捕されてしまったという方は刑事事件に強い弁護士を逮捕されている方の下へ派遣する初回接見をご利用ください。
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