三重県の迷惑防止条例違反事件

三重県の迷惑防止条例違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

Aさんは、仕事終わりに津市内の居酒屋で同僚と飲酒し、二軒目のお店を探して繁華街を歩いていました。
その時に、友達数人で歩いている女性グループに近寄り、女性に向かって「おっぱい触らせてよ。」としつこく言い寄り、女性たちとトラブルになってしまいました。
女性に謝罪を求められましたが、Aさんがそれに応じなったことから、女性の一人が怒ってしまい、110番通報して、警察官が駆け付ける騒ぎにまで発展してしまったのです。
Aさんは「別に女性の体に触れたわけでもないし、何の犯罪にもならないだろう。」等と、警察官に言いましたが、Aさんは三重県の迷惑防止条例違反で検挙され、三重県津警察署に連行されてしまったのです。
(フィクションです。)

◇三重県の迷惑防止条例◇

三重県の迷惑防止条例は、県民及び滞在者の平穏な生活を保持することを目的に、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止しています。
三重県の迷惑防止条例では、Aさんのような卑猥な言動の他、痴漢行為、盗撮行為、粗暴な言動、たかり行為や、押し売り行為、客引きやダフヤ行為等を禁止しています。

◇卑猥な言動の禁止◇

何人も、人に対し、公共の場所、公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、卑猥な言動をしてはならない。」(同条例第2条2項3号を抜粋)と卑猥な言動を禁止しています。
ここでいう「公共の乗物」とは、電車、バス、船舶、航空機その他、不特定多数の人が利用する乗物をいい、タクシーやハイヤー、貸切バス等の、不特定多数の人が利用しない乗物は「公共の乗物」に含まれないとされています。
またここでいう「著しく」とは、通常人の感覚において「ひどい」と思われる程度を意味し、「羞恥させ」とは、性的な恥じらいを感じさせることを意味します。
「不安を覚えさせる」とは、痴漢行為によって身体に対する危険を感じさせ、あるいは心理的圧迫を与えることをいい、脅迫に至らないものを意味します。
最後に「卑猥な言動」とは、、一般人の性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪感を覚えさせ、又は不安を覚えさせるようないやらしくみだらな言語、動作を意味します。
卑猥な言動には、刑法第174条(公然わいせつ罪)でいうところの「わいせつな行為」も含まれ、迷惑防止条例でいうところの卑猥な言動は、公然わいせつ罪でいうところの「わいせつな行為」よりも広いとされています。
つまり刑法の公然わいせつ罪に抵触しない「わいせつな行為」に迷惑防止条例違反が適用されるのであって、公然わいせつ罪が成立する場合は、迷惑防止条例違反の行為は、公然わいせつ罪に吸収されます。
ちなみに公然わいせつ罪は、わいせつな発言までは対象としていませんので、Aさんのように、わいせつな発言をした場合は、迷惑防止条例違反の適用を受けます。

◇卑猥な言動の刑事処分◇

卑猥な言動の法定刑は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
しかし卑猥な言動をしたからといって、必ず刑事罰が科せられるわけではありません。
事前に被害者と示談することによって、不起訴処分となって刑事罰が科せられない場合もあるのです。
不起訴処分になれば、前科は付きません。
そのため、卑猥な言動の主な刑事弁護活動は、被害者との示談交渉になります。

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