リベンジポルノ防止法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇事件◇
三重県四日市市に住む会社員のAさんは、自身の性交渉を動画で撮影することを趣味にしています。
Aさんは、これまで交際してきた女性や、出会い系サイト等で知り合った女性との性交渉をビデオカメラで撮影してきましたが、必ず女性の承諾を得て撮影しており、撮影した動画は誰にも見せないことを約束していました。
しかし最近登録したアダルトサイトで、性交渉の動画を掲示板に投稿し、閲覧数が増えるとポイントが付与されることを知ったAさんは、自身のパソコンに保存していた性交渉の動画を、女性に無断で投稿したのです。
最初のうちは、女性の顔にモザイク処理を施していましたが、女性の顔にモザイク処理をしない方が閲覧回数が増えることに気付いたAさんは、性器や自分の顔にだけモザイク処理を施し、女性の顔にはモザイク処理をせずに投稿するようになりました。
そんなある日、元交際相手の代理人を名乗る弁護士から「女性の承諾なく、わいせつ画像を公開していることを刑事告訴する。」旨の通知が届いたのです。
不安になったAさんは、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
◇リベンジポルノ防止法◇
リベンジポルノ防止法とは、平成26年11月に施行された「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」の略称です。
リベンジポルノ防止法は、個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生、またはその拡大を防止することを目的とした法律です。
ここでいう「名誉」とは、人に対して社会が与える評価としての外部的名誉を意味し、また「私生活の平穏」とは、性的プライバシー、すなわち性に関する私生活上の事柄をみだりに公開されない権利を意味します。
リベンジポルノとは、交際中に撮影した元交際相手や元配偶者の裸などの性的画像を、撮影された人の同意なく、インターネット上などに公開することです。
リベンジポルノ防止法は、インターネットの普及等により、リベンジポルノなどの嫌がらせ行為により、被害者が長期にわたり多大な精神的苦痛を受ける事案が多数発生しているため、そうした被害を防止するために制定された法律です。
~禁止事項と罰則~
撮影対象者が特定することが出来る方法で私事性的画像を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。
また、上記の行為をさせる目的で私事性的画像を他人に提供した場合も処罰の対象となり、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に問われることになります。
~私事性的画像~
リベンジポルノ防止法でいう「私事性的画像」とは、撮影された人が第三者に見られることを認識せずに撮影された
①性交・性交類似行為
②他人が撮影対象者の性器等を触る行為又は撮影対象者が他人の性器等を触る行為で、性欲を興奮、刺激するもの
③衣服の全部又は一部を着けない姿態で、殊更に性的な部位が露出され又は強調されているもので、かつ、性欲を興奮、刺激するもの
を指します。
ちなみに、撮影された人が、他人が閲覧することを認識した上で、撮影に承諾して撮影された画像については対象となりません。
今回の事件で、Aさんは撮影当時、撮影する女性に対して撮影の承諾を得ていますが、撮影した動画を誰にも見せないことを約束しています。
つまり、撮影された人は、撮影された動画を他人が閲覧することは認識していませんので、
Aさんが投稿した動画は、リベンジポルノ防止法でいうところの「私事性的画像」に該当するでしょう。
◇その他◇
Aさんの行為は、リベンジポルノ防止法違反だけでなく、名誉毀損罪に抵触する可能性があります。
名誉毀損罪は、刑法第230条に定められている法律で、その条文によりますと「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」とされています。
まず「公然と」とは、不特定多数人が認識できる状態を意味しますので、Aさんが投稿したアダルトサイトの掲示板が、登録さえすれば誰でも閲覧可能な掲示板であれば、公然性は認められるでしょう。
続いて「事実を適示」についてですが、ここでいう事実は真実である必要はありませんが、内容については、人の社会的評価を害する、ある程度具体的なものでなければならないとされています。
性交渉の動画は、プライバシー性が強く、世間一般的に考えると人の社会的評価を害すると考えられるでしょう。