精神疾患と刑事事件

1 はじめに

現在、高齢者による犯罪が増加傾向にあり、その多くが万引きなどの窃盗罪や、落ちている物を拾ってしまう占有離脱物横領罪です。このように犯罪を行ってしまう高齢者の方の中には認知症等の精神疾患の影響で、正常な判断ができないまま犯罪を行っている方もいます。

 

2 問題となる条文

【刑法39条】

1 心神喪失者の行為は、罰しない。

2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

精神疾患の影響で正常な判断ができず犯行をしてしまった場合には、責任能力の条文である刑法39条が問題になります。心神喪失者、心身耗弱者の意味は次の項目で詳しく説明します。

「罰しない」というのは文字通り、犯罪が成立したとしても処罰しないという意味です。要するに無罪ということになります。次に「減軽する」というのは罪を軽くするということになります。

 

3 心神喪失・心神耗弱の意味

心神喪失とは①物事の良い・悪いを判断する能力②その判断に従って行動する能力のどちらかが欠けている状態を指します。①②の両方が欠けている必要はなく、どちらかが欠けているだけで構いません(もちろん両方欠けていても構いません)。この①か②が欠けている状況のことを、責任能力がないなどと言います。

心神耗弱とは、①②の両方とも完全に欠けているわけではないが、①②のいずれかが著しく減退している状況にある場合を指します。

 

4 認知症と責任能力の関係

被疑者・被告人の方が認知症を患っている場合には、①②に影響が出ていると考えられます。しかし、認知症=責任能力がないと判断されるわけではありません。したがって認知症という診断があるから無罪になるというわけではありません。もちろん、病名が重要な要素にはなってくるのですが、責任能力の有無はそれ以外の要素も考慮して、検討するとされています(詳しくは下記をご覧ください)。

 

5 精神疾患による刑事事件のよくあるご質問

Q 心神喪失かどうかはどのように判断しますか

A 判例では、病名だけではなく、犯行当時の病状・犯行前の生活状態・犯行の動機・態様等総合考慮して判断するとされています。

その中で、医師の判断は、不合理でない限り尊重すべきであるとしていますが、責任能力の有無は法律上の判断なので、最終的には裁判所が判断するとしています。

 

Q 認知症などの精神疾患は処分においてどのように考慮されますか

A 刑法39条の責任能力において考慮されることは先述の通りですが、情状で考慮される場合もあります。認知症が犯行に影響している場合には、たとえ責任能力があると判断されたとしても、犯行の経緯に酌むべき事情があるとして、処分・刑を決定するのに有利な影響を与える場合があります。

 

~責任能力が問題になる場合の弁護活動~

①示談交渉

精神疾患が影響した犯罪が、窃盗罪や占有離脱物横領罪であれば被害者のいる犯罪なので示談が成立することで有利な処分判断がなされる可能性が高いです。

示談交渉については、弁護士が間に入ることで有利には働くことがあります。例えば会社によっては被害者とは直接交渉しないが、弁護士限りであれば交渉に応じてもらえる場合もあります。また、個人の方を相手にする場合であっても、弁護士限りで個人情報を教えてもらえる場合もありますし、仮に連絡先を知っていたとしても、相手の被害感情を考えると直接被疑者が被害者と交渉を行うのは困難であり、示談ができたとしても不相当に過大な金額での示談解決になる可能性が大きいと考えられます。

 

②取調対応

取調べの段階から、責任能力に問題があることを主張していくことができます。身柄事件であれば弁護士が接見することで、身体拘束のない在宅の事件であっても、弁護士と取調べ前に打合せすることで、取調べの際の注意点や、誤った調書にはサインしてはいけない等のアドバイスを受けることができます。このように弁護士をつけることで、取調べに対し適切に対応することが可能になります。

 

③身体解放活動

逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

精神疾患の影響が疑われる場合、正式な診断を受ける必要性があるので、保釈の重要性が高い事件であるといえます。

 

④公判弁護活動

責任能力の有無は高度な法律的判断になります。そこで診断書等の客観的証拠など、責任能力に関する事情を集める必要があります。

仮に責任能力に問題がなかったとしても、精神疾患が犯行に影響を与えた事案では再犯可能性の大きさが処分に大きく関係してきます。そこで、弁護士を通じ、福祉事務所と連携し、再犯を行わない環境づくりを行うことが重要になります。

津や四日市など三重県の精神疾患・責任能力が問題となる事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。圧倒的な解決実績を誇る弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、取り調べ対応、再発防止策、刑事裁判の対応などについて刑事事件・少年事件に専門特化した弁護士による無料の法律相談を行っています。当事者が三重県で逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。

 

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