少年事件と私選弁護人・国選弁護人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務が解説します。
◇事件◇
大学生のAくん(18歳)が、特殊詐欺の受け子をしたとして、三重県名張警察署に窃盗の容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、急いですぐに対応してくれる弁護士をネットで探しています。
その過程で、弁護人には私選弁護人と国選弁護人とがあることが分かり、それぞれの長所短所を調べています。
(フィクションです。)
少年事件と弁護人
あなたやあなたの家族が、事件を起こし、刑事事件の被疑者・被告人となってしまった場合、あたなやあなたの家族は、刑事手続に基づいて何らかの処分を受けることになります。
法律では、刑事手続において、被疑者・被告人は、検察官と対等の立場にあることがされています。
しかし、現実では、一般の被疑者・被告人が、法律や刑事手続に精通していることは稀であり、自ら法的に防御することは困難が伴うのです。
そのような状況において、被疑者・被告人と検察官が真に対等な立場にあるとは言えません。
そこで、そのような不均衡を補い、刑事手続における正当な利益を擁護するために、法律に精通した専門家である弁護士を被疑者・被告人の代理人として選任します。
被疑者・被告人の代理人である弁護人は、被害者・被告人に法的支援を行います。
加えて、馴染みのない刑事手続に付されている被疑者・被告人は精神的にも不安定となることが多く、特に、逮捕・勾留されている場合には、社会と切り離された環境に身を置いていますので、より精神的な苦痛を伴うことが多いため、彼らの精神的な支援も行います。
被疑者が少年である場合も同様に、弁護人が担う役割は大きいと言えます。
特に、身体的にも精神的にも発展途上にある少年の場合、被疑者となってしまったことで感じる不安や、逮捕・勾留されたショックは成人が感じる以上に大きいものでしょう。
連日の取り調べにおいて、取調官の誘導に乗って自分に不利な供述をしてしまったり、問われていることの意味をきちんと理解することができなかったりするおそれもあります。
ですので、少年の場合であっても、早期に弁護士に相談し、対応について相談したり、弁護人を選任し、弁護活動を行ってもらうことが重要です。
少年でも成人でも、弁護人を選任することができます。
しかし、弁護人の種類によっては、選任できる要件や時期が異なります。
国選弁護人とは
国選弁護人は、貧困などの理由で自分で弁護人を付けることが出来ない場合に、国が弁護士費用を負担し選任する弁護人のことです。
被告人国選弁護選任の手続は、必要的弁護事件か任意的弁護事件かによって異なります。
必要的弁護事件というのは、法定刑が死刑、無期、長期3年を超える懲役・禁固にあたる事件、公判前整理手続もしくは期日間整理手続に付された事件、または、即決裁判手続による事件のことで、弁護人がいなければ公判を開くことができません。
このような事件において、私選弁護人が選任されていない場合には、裁判所は国選弁護人を選任しなければなりません。
一方、任意的弁護事件とは、上の必要的弁護事件以外の事件のことです。
任意的弁護事件においては、被告人が国選弁護人選任を請求し、資力申告書を提出し、資力が50万円に満たない場合には、そのまま選任請求ができます。
そして、被疑者国選弁護の選任手続については、まず、被疑者に対して勾留状が発せられている場合であって、かつ、被疑者が貧困その他の事由によって私選弁護人を選任することができない場合に、裁判官に対して国選弁護人の選任を請求することができます。
ここで留意しなければならないのは、「勾留状が発せられている場合」という条件が付いていることです。
つまり、逮捕後に勾留されてからでないと、被疑者の段階では国選弁護人を選任することはできないのです。
私選弁護人とは
私選弁護人は、被疑者・被告人、その家族などが自ら選任した弁護人のことです。
もちろん、弁護士費用は、依頼者の負担となります。
経済的負担はあるものの、被疑者・被告人が身体拘束されているか否かは関係ありませんし、どの段階からでも選任することができます。
ですので、事件が起きた直後に弁護人を選任し、例えば、被害者との示談を成立させることによって事件を早期に解決することも可能です。
この点、少年の場合、勾留後であれば国選弁護人の選任を請求することができますが、勾留された後でしか請求できないので、そもそも勾留を回避したい場合には、すでに勾留され身体拘束による不利益が発生していることになります。
また、勝手に弁護士を選ぶことはできませんので、刑事事件や少年事件に詳しい弁護士が弁護人として選任されるとは限りません。
少年事件と付添人
少年の場合、原則として、捜査機関による捜査が終了すると、事件が家庭裁判所に送致されることになります。
家庭裁判所送致後は、捜査段階で付いていた弁護人がそのまま自動的に同じ少年の事件に関われるわけではありません。
家庭裁判所に事件が係属したら、今度は「付添人」として、少年の権利・利益を守りながら、家庭裁判所や少年の家族、関係者と協力しつつ、少年の更生に向けた環境作りをしていきます。
この付添人は、弁護士がすることがほとんどですが、弁護士でない保護者も家庭裁判所の許可を得て付添人となることができます。
捜査段階で少年の弁護人として選任されていた場合であっても、改めて家庭裁判所に付添人として選任された届出をしなければなりません。
付添人にも国選付添人制度というものがあります。
国選付添人は、一定の重大事件で観護措置のとられた少年について、裁判所の裁量により選任されます。
対象となる事件は、
①検察官関与決定事件
②裁量国選付添事件
死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役・禁固にあたる事件を犯した、少年鑑別所収容の観護措置をとられている犯罪少年および触法少年に対して、裁判所の裁量により選任されます。
③被害者による審判傍聴の申出事件
このように、限られた事件にのみ当該制度が利用できます。