交番で業務妨害は何罪?②~威力業務妨害罪~

交番業務妨害行為をした場合は何罪となるのか検討するにあたり、特に威力業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

三重県いなべ市に住んでいるAさん(17歳)は、以前、三重県いなべ警察署の警察官に補導され、その時に夜遅くに出歩かないよう注意されたことを根に持っており、警察官に迷惑をかけてやりたいと思っていました。
そこでAさんは、三重県いなべ警察署の管轄にある交番へ行き、警察官が不在の間に、交番の出入り口に消火器を噴射しました。
これによって、交番はしばらく出入りが困難な状態になってしまいました。
Aさんの犯行を目撃していた通行人が通報し、捜査の結果、Aさんは威力業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさん逮捕の知らせを聞いた際、警察の邪魔をしたらしいということなのになぜよく聞く公務執行妨害罪ではないのか、もしかしてAさんが不要な疑いを持たれているのではないかと不安に思っています。
(※令和2年4月9日東海テレビ配信記事を基にしたフィクションです。)

交番に消火器噴射で威力業務妨害罪

前回の記事で、Aさんには公務執行妨害罪が成立しないだろうということに触れました。
では、Aさんに何罪が成立しうるのかというと、逮捕容疑にもなっている威力業務妨害罪が挙げられます。
威力業務妨害罪は、刑法第234条に定められている犯罪です。

刑法第234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

この「前条」とは、刑法第233条の偽計業務妨害罪・信用毀損罪のことを指しています。

刑法第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

つまり、威力業務妨害罪を犯してしまった場合、偽計業務妨害罪や信用毀損罪と同様、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、ということなのです。

威力業務妨害罪の条文に戻って、威力業務妨害罪が成立する条件を確認してみましょう。
威力業務妨害罪は、「威力を用いて」「人の業務を妨害した」ことで成立します。
「威力を用いて」の「威力」とは、なかなか日常生活で用いる言葉ではありませんが、「犯人の威勢、人数および四囲の状勢からみて、被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力をいい、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要しない」とされています(最判昭和28.1.30)。
つまり、簡単に言えば、「威力を用いて」とは、相手の意思を制圧する行為をして、ということを指しています。
例えば、店内に大量の蛇や虫をばら撒いて営業を妨害したような場合には、相手=店は抵抗のしようがなく、店の意思は制圧されていると考えられますから、「威力」が用いられていると考えられます。

そして、威力業務妨害罪の行為の部分、「人の業務を妨害した」という部分です。
「妨害した」と書いてあるものの、威力業務妨害罪の成立には、実際に業務がされた必要はないと解釈されています。
威力業務妨害罪の成立には、業務が妨害される危険が発生していればよいということです。
ですから、例えば「威力を用いて」業務妨害のおそれのある行為がなされたとして、何かの事情で特に業務が妨害されることなく済んだとしても、業務妨害の危険は発生していたのであれば、威力業務妨害罪の成立が考えられるということです。

さて、以上のことを考慮しながら、今回のAさんの事例を検討してみましょう。
Aさんは、交番に消火器を噴射していますが、この行為は交番側からすれば抵抗のしようのない行為ですから、「威力を用いて」いると言えるでしょう。
そして、実際に交番はしばらく人の出入りが難しくなり、おそらく交番に勤務する警察官は噴射された消化剤の処理などにも追われることとなり、しなくともよいはずの業務が増えるなどして業務に支障が出たと考えられます。
したがって、「人の業務を妨害した」とも考えられることから、Aさんには威力業務妨害罪の成立が考えられる、ということになるのです。

前回と今回でみてきたように、私たちがイメージする犯罪と実際に成立する犯罪の間にはギャップがあることもあります。
こうしたギャップについてきちんと理解するためには、刑事事件・少年事件に詳しい弁護士に分かりやすく説明してもらうことが有効です。
容疑のかかっている犯罪のこと、これからの手続きや必要な活動のことをきちんと知ることで、慣れない刑事事件・少年事件の手続きの中でも適切な行動を取れる可能性が高まります。
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