ひき逃げで自首する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
夜、三重県北牟婁郡紀北町の県道を車で走行していたAさんは、左折時に左方向から横断していた自転車に気付くのが遅れ、自転車と接触する事故を起こしました。
Aさんは気が動転し、自転車の運転者の様子を確認することなく、そのまま車を発進させました。
その後、Aさんは事故の件で最寄りの三重県尾鷲警察署に出頭しようと考えましたが、これは自首になるのか、自首となったらどうなるのか、いろいろとわからない点があったため、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
サスペンスドラマでは、崖に追い詰めた犯人に自首するよう説得する主人公がしばしば登場しますが、現実の世界では、「自首」はどのような場合に成立し、成立した場合にはどのような効果があるのでしょうか。
今回は、法律上の「自首」について解説します。
自首は、犯人が捜査機関に対し、自己の犯罪事実を申告して、その処分に委ねる意思表示です。
刑法第42条は、
1 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
と規定しています。
上のように、刑法上の自首は、罪を犯した者が、「捜査機関に発覚する前に」自首をすることが自首の成立要件となっています。
■自首の成立要件■
①捜査機関に発覚する前に
「捜査機関に発覚する前」とは、犯罪事実が全く捜査機関にわかっていない場合だけでなく、犯罪事実はわかっていても、犯人が誰であるかわかっていない場合も含みます。
ただし、犯罪事実と犯人が誰であるかがわかっているが、犯人がどこにいるのかがわかっていない場合は、「捜査機関に発覚する前」とは言えません。
②捜査機関に対して
自首は、検察官または司法警察員に対して行わなければなりません。
ただし、それ以外の捜査機関関係者、例えば、検察事務官や司法巡査に対して自首した場合でも、彼らは検察官または司法警察員に自首した者の身柄を引き渡すことになっているので、実際は、検察官または司法警察員ではない捜査機関関係者に自首を申し出ても問題はありません。
③自己の犯罪事実を申告してその処分に委ねる意思
自首の成立には、罪を犯した者が自発的に犯罪事実を申告していることが必要です。
取調べや職務質問中に、犯罪事実を自白したとしても、それは自発的申告とはならず、自首は成立しません。
自首は、自己の犯罪事実を申告するものですが、その申告内容に虚偽が含まれている場合には、その虚偽が含まれている事項や程度によっては、およそ犯罪事実を申告したものとは言えず、自首は成立しません。
また、罪を犯した者が自身の処罰・処分を求めていることも必要です。
犯罪の一部を隠蔽するために申告する場合には、自首は成立しません。
以上の要件を満たしている場合に初めて自首が成立します。
■自首の効果■
自首が成立した場合、「その刑を減軽することができる。」という効果があります。
これは、任意的減軽事由であって、必ずしも裁判官が刑を軽くするとは限りませんが、裁量により刑が減軽される可能性があります。
どのくらい刑が減軽されるのかについては、法律で以下のように定められています。
第68条 法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
1 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮とする。
2 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、7年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
3 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
4 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
5 拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。
6 科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。
また、自首をした場合には、自ら出頭し捜査機関に自己の処分を委ねる意思を示していることから、逮捕・勾留されずに捜査が進められる可能性も高まります。
ひき逃げ事件のように、一度事故現場から逃走している場合には、被疑者の身柄を拘束して捜査する必要があると判断されることが多いのですが、事件後すぐに自首をしているような場合には、逮捕・勾留されないことも少なくありません。
自身では自首が成立すると考える場合であっても、上の法律上の要件を満たさず自首が成立しないこともありますので、法律の専門家である弁護士に一度相談されるのがよいでしょう。
自首が成立しない場合であっても、自ら出頭することにより、逮捕・勾留を避けることにもつながる場合もあります。
自首が成立するのかどうか、自首した後の手続の流れや見込まれる処分などについて、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
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