株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕されたら(前半)

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕されたら(前半)

株式会社会社法違反・特別背任事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、三重県津市にあるB株式会社の取締役と、同区にあるC株式会社の代表取締役も務めていました。
B株式会社とC株式会社はどちらも取締役会設置会社であり、会社法356条1項1号の競業の関係はありませんでした。
ところが、Aさんは、B株式会社の取締役会決議での承認を得ることなく、C株式会社を代表して、B株式会社と売買契約を締結し、通常の販売価格より著しく安い価格でB株式会社の商品の買い付けを行いました。
Aさんには元々その目的もあったのです。
その後、津地方検察庁は、Aさんを会社法違反特別背任罪の容疑で逮捕しました。
Aさんはなるべく早く社会生活を送れるよう、保釈を認めてほしいと考えています。
(2020年7月28日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【特別背任罪とは】

会社法960条は、取締役等の特別背任罪として、以下のように規定しています。

会社法960条
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 取締役、会計参与、監査役又は執行役

会社法960条の特別背任罪は、刑法247条の背任罪を基にして規定された犯罪です。
すなわち、刑法247条の背任罪が一般条項、会社法960条の特別背任罪が特別条項といえます。

参考として、刑法247条の背任罪を引用します。

刑法247条
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

会社法960条(特別背任罪)と刑法247条(背任罪)の規定を比較すると、犯罪の行為や目的、結果に当たる要件については、どちらも同じあるといえます。

会社法960条(特別背任罪)と刑法247条(背任罪)の規定の違いは、犯罪の主体(行為者)が限定されているか否かという点にあります。
すなわち、会社法960条の特別背任罪の主体(行為者)は「次に掲げる者」として法定の者に限られるのに対し、刑法247条の背任罪の主体(行為者)は限定されていないといえます。

以上をまとめると、会社法960条の特別背任罪は、例えば取締役のように法律に規定された一定の責任ある者が背任行為を行った場合に、刑法267条の背任罪に規定された刑罰よりも重い刑罰を課すために規定された犯罪であるといえると考えられます。

以下では、会社法960条の特別背任罪の各要件を見ていきます。

【特別背任罪の要件(1)】

まず、会社法960条の特別背任罪の主体(行為者)は、上述の通り、「次に掲げる者」として法定の者に限られています。
そして、会社法960条1項3号には、「取締役」が規定されています。
刑事事件例では、AさんはB株式会社の取締役を務めています。
よって、会社法960条の特別背任罪の「取締役」に該当すると考えられます。

次に、会社法960条の特別背任罪の要件である行為は「任務に背く行為」です。
会社法960条の特別背任罪の本質は信任関係の破壊にあると考えられます。
よって、会社法960条の特別背任罪の「任務に背く行為」とは、誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されているところに反する行為をいうと解されます。

そして、事務処理に関し、法令や契約等により手続的規制が加えられている場合、その法定や契約等の手続的制約に反する行為であれば、原則として会社法960条の「任務に背く行為」に該当すると考えられます。
なお、任務違背性は、信任委託の趣旨に則り、実質的に会社に不利益になる行為といえるかという観点から判断されるという考え方もあります。

特別背任罪などは、なかなか聞きなれない犯罪であることから、どういった人がどのような行為をすると特別背任罪に当てはまるのかなど、分からないことも多いでしょう。
だからこそ、刑事事件に詳しい弁護士に説明してもらい、アドバイスをもらうことが重要なのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
株式会社会社法違反・特別背任事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕(後編)に続きます。

 

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