建造物等以外放火事件で不起訴処分を得たい
建造物等以外放火事件で不起訴処分を得たいという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、三重県四日市市内のアパートの駐車場に止めてあったVさん所有の原付バイクに直接火を放ちました。
原付バイクは全焼しましたが、幸い、駐車場に停めてあった他の車や駐車場に隣接したアパートには燃え移らなかったといいます。
その後、Aさんは、四日市南警察署の警察官により、建造物等以外放火罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「職場の同僚に叱られストレスを感じていた」と建造物等以外放火罪の容疑を認めています。
Aさんは建造物等以外放火罪での刑事裁判を避け、不起訴処分を得ることはできないかと考えています。
(2020年11月26日に石川テレビNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【建造物等以外放火罪とは】
放火して、前2条(刑法108条、109条)に規定する物以外の物を焼損し、よって公共に危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する(刑法110条1項)。
建造物等以外放火罪の目的物(放火の対象)は、「前2条(刑法108条、109条)に規定する物以外の物」です。
刑法108条(現住建造物等放火罪)では、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」が目的物であると規定されています。
また、刑法109条(非現住建造物等放火罪)では、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」が目的物であると規定されています。
まとめれば、建造物等以外放火罪の目的物は、「建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑ではないもの」ということができると考えられます。
刑事事件例では、AさんはVさん所有の原付バイクに放火していますが、この原付バイクは「建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑ではないもの」、すなわち「前2条(刑法108条、109条)に規定する物以外の物」であるとして、建造物等以外放火罪の目的物に該当すると考えられます。
【建造物等放火罪の各要件】
建造物等以外放火罪の要件である「放火して」とは、目的物(又は媒介物)に放火することをいいます。
また、建造物等以外放火罪の要件である「焼損」とは、目的物が独立に燃焼を継続する状態をいいます。
刑事事件例では、Aさんは原付バイクに直接放火しています。
また、Aさんによる放火の結果、原付バイクは独立して燃焼を継続する状態に達し、全焼するに至っています。
よって、刑事事件例では建造物等以外放火罪の要件である「放火して」、目的物が「焼損」したという要件を満たすといえると考えられます
さらに、建造物等以外放火罪の要件である「公共の危険」とは、不特定又は多数の人の生命、身体又は財産に対する延焼の危険であると考えられています。
すなわち、建造物等以外の物に放火し、その結果、不特定又は多数の人の生命、身体又は財産に燃え移る危険を生じさせた場合、建造物等以外放火罪の「公共の危険」を生じさせたといえることになります。
刑事事件例では、Aさんは、建造物以外の物である原付バイクに放火しています。
そして、原付バイクが停めてあった駐車場には、原付バイク以外の車も駐車されていたようです。
また、犯行現場となった駐車場には不特定又は多数の人が住むアパートも隣接していたようです。
よって、Aさんによる原付バイクへの放火により、その他の車やアパート、その住民などに対する延焼の危険である公共の危険が生じたといえると考えられます。
以上より、Aさんには、建造物等以外放火罪が成立すると考えられます。
【建造物等以外放火罪と刑事弁護】
刑事事件例の建造物等以外放火事件の刑は、「1年以上10年以下の懲役」です。
罰金は規定されていないため、起訴された場合に略式裁判(刑事訴訟法461条以下)のような非公開の手続きが取られることはありません。
建造物等以外放火罪で起訴されるということは、公開の法廷に立って裁判を受けるということになります。
そのため、建造物等以外放火事件の刑事弁護方針として、まずは不起訴処分の獲得を目指すこと、仮に起訴されてしまったとしても執行猶予付き判決の獲得を目指すことが考えられます。
刑事事件例では、Vさんの原付バイクが放火の被害に遭っています。
そこで、刑事弁護士を通し、被害者の方へ正式な謝罪と損害の賠償をする示談交渉ができると考えられます。
示談締結などにより、不起訴処分を求めることや、起訴されてしまった場合でも執行猶予付き判決を求めることができると考えられます。
まずは、早期に弁護士に相談・依頼し、示談交渉などに取りかかってもらうことが重要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
建造物等以外放火罪で不起訴処分を得たいとお悩みの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。