動物の虐待事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇事件◇
会社員のAさんは、三重県伊賀市内の駐車場に住み着いている野良猫に対してボーガンを発射し、猫を虐待していました。
矢が刺さった猫を見つけた人が、SNSに写真を投稿し、この写真が拡散されたことから三重県伊賀警察署が、動物を虐待した容疑で捜査に乗り出しようで、先日、Aさんの自宅を警察官が訪ねてきました。
Aさんは、玄関先で警察官から、事件のことを追及され、「全く身に覚えのないことです。」と嘘を吐いたので、警察官はそのまま帰って行きましたが、その二日後に、自宅を捜索されたAさんは、ボーガンを押収されてしまい、警察署まで任意同行されました。
そこで取調べを受けたAさんは、犯行を自供したようです。
(フィクションです。)
◇三重県伊賀警察署◇
【所在地】〒518-0823 三重県伊賀市四十九町1929-1
【電話番号】0595-21-0110
三重県伊賀警察署は、旧青山町を除く伊賀市を管轄する警察署で、管内は四方を山岳に囲まれた盆地となっており、管内人口は約8万2千人です。
管内を、関西地区と中京地区を結んでいる主要道路である名阪国道が通っており、その交通量は相当なものです。
三重県警察のホームページによりますと、三重県伊賀警察署管内の、平成30年度の刑法犯犯罪発生件数は479件となっており、検挙件数は108人です。
(三重県警察のホームページを参考)
◇動物愛護法違反◇
動物愛護法とは「動物の愛護及び管理に関する法律」の略称です。
この法律は主に、動物の虐待を防止したり、動物の飼い主やペット業者に責任や義務を課すための法律です。
動物愛護法の対象となる動物は、犬、猫、牛、馬等の哺乳類だけでなく、鳥類や爬虫類で、犬や猫などの一部の動物においては、特定人物の占有下にあるか問われない、つまり俗に言う「野良犬、野良猫」でも対象となります。
そして、この動物愛護法の第44条第2項で、動物に対する虐待を禁止しています。
これに違反して動物を虐待すれば「100万円以下の罰金」が科せられるおそれがあるので注意しなければなりません。
ちなみに、野良猫に向けてボーガンの矢を発射する行為自体が、虐待行為に当たるので、実際に発射した矢が、猫に命中するか否かは違反が成立するかどうかに関係ないとされています。
◇器物損壊罪◇
虐待した動物が他人の所有物だった場合は、刑法第261条に規定されている器物損壊罪が適用されるでしょう。
器物損壊罪とは、他人の物を損壊する事を禁止する法律で、罰則規定は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
損壊とは、物そのものの形を変更又は滅失させる場合だけでなく、その物の効用を害する一切の行為が損壊に当たるとされています。
人が植えた植物を引き抜いたり、飲食店の食器に放尿する行為、人が飼っている動物を故意的に死傷させる行為も器物損壊罪に当たるとされています。
~親告罪~
器物損壊罪は、親告罪です。
親告罪は、被害者をはじめとした告訴権者による告訴がなければ、検察官は起訴をすることができません。
また告訴は、一度取り下げると、同じ犯罪事実で再度告訴することができません。
そのため器物損壊罪のような親告罪で逮捕された場合は、検察官が起訴するか否かを決定するまでに、被害者が告訴を取り下げれば、絶対に起訴を免れることができます。
器物損壊罪等の親告罪の弁護活動は、スピードが命です。
器物損壊罪等の親告罪で警察の捜査を受けている方、ご家族が警察に逮捕された方は、一刻も早く、弁護士に被害者との示談交渉を依頼してください。