自転車のひき逃げ
自転車のひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
三重県桑名市に住む大学生のA(20歳)は、通学にスポーツタイプの自転車を使用していました。
あるとき、Aがその自転車に乗って移動している際、よそ見していて歩行者に気付かず、歩行者と接触する事故を起こしてしまいました。
歩行者は転倒しましたが、Aは、「自転車に当たったくらい大丈夫だろう」と思い、「すみません」とだけ言ってその場を去りました。
歩行者は転倒した際に手の骨を折ってしまっており、Aは後日、三重県桑名警察署に重過失傷害罪とひき逃げによる道路交通法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aの逮捕を聞いたAの両親は、自転車もひき逃げになるのかと不思議に思い、専門家の見解を聞くために、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(この事例はフィクションです。)
~自転車での人身事故〜
自転車での事故というと、多額の賠償金が請求されてしまうという、民事的な側面が話題となることが多いですが、刑事的に罰を受ける可能性もあります。
人身事故の場合、車であれば、自動車運転処罰法の過失運転致傷罪(場合によっては危険運転致傷罪)が成立します。
では、自転車の人身事故はどうなるのでしょうか。
自転車での人身事故は、刑法の過失傷害罪や重過失傷害罪が適用されると考えられます(被害者が亡くなっている場合には過失致死罪や重過失致死罪になります。)。
刑法第209条(過失傷害罪)
第1項「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。」
第2項「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」
刑法第211条(業務上過失致死傷罪、重過失致死傷罪)
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」
過失とは、簡単にいえば故意ではなく不注意で、ということです。
今回の事例のAのように自転車でよそ見運転をしていた場合も、過失となる可能性が高いでしょう。
こうした過失によって人に怪我をさせてしまったり人を死なせてしまったりすれば過失傷害罪や過失致死罪、重過失傷害罪や重過失致死罪となるため、自転車による人身事故の場合はこれらの犯罪が該当する可能性があります。
~自転車でのひき逃げ~
ひき逃げというと、車での行為をイメージしますが、自転車での人身事故であってもひき逃げとなる可能性があります。
ひき逃げは、事故の際に適切な行為をせずに逃げた場合に、道路交通法の規定に違反することで成立します。
道路交通法では、事故を起こしてしまった場合の対応について、いくつかの義務を定めています。
道路交通法第72条第1項
「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」
この条文の中に定められている義務は、一般に「救護義務」(負傷者の救護)、「危険防止措置義務」(道路上の危険を防止する)、「報告義務」(警察官等への通報・報告)と呼ばれています。
自転車は道路交通法上、軽車両に分類されるのですが、軽車両の運転者が救護義務に違反した場合にも「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」という罰則が規定されているので、自転車によるひき逃げも道路交通法違反となるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、自転車による人身事故により、刑事事件発展してしまった場合の弁護活動にも対応しています。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。