万引き事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇事件◇
三重県桑名市で印刷業を営むAさんは、2ヵ月前に近所のコンビニのカウンターに置き忘れていた財布を盗みました。
財布の中から現金だけを抜き取り、他は近所の用水路に投棄して証拠隠滅を図っていました。
この事件で、Aさんは一週間前から三重県桑名警察署に呼び出されて刑事から取調べを受けていますが、Aさんは、これまで「身に覚えがない。」と言って容疑を否認し続けています。
そして3日前に警察署に出頭する約束になっていましたが、否認を続ける自身をなくしたAさんは、出頭の約束を無視し、その後、警察署からの架電は着信拒否にしました。
すると今朝、三重県桑名警察署の捜査員が数名、自宅を訪ねてきて、Aさんは窃盗罪で逮捕されてしまったのです。
(フィクションです)
◇三重県桑名警察署◇
【所在地】〒511-0836 三重県桑名市大字江場626-2
【電話番号】0594-24-0110
三重県桑名警察署は、三重県の最北端に位置する桑名市と桑名郡木曽岬町を管轄する警察署です。
管内には、非常に交通量が多いことで有名な国道一号線と東名高速道路、伊勢湾岸自動車道がはしっていることから犯罪発生件数だけでなく、交通事故も多く発生しています。
三重県警のホームページによりますと、平成30年度の刑法犯検挙人数は124人で、そのうち86人が窃盗犯人であるようです。
また少年事件に関しては、平成30年度中、24人の少年を刑事事件で検挙しているようです。
(三重県警察のホームページを参考)
◇事件を検討◇
~窃盗罪~
財産犯事件の代表ともいえる窃盗罪は、刑法第235条に定められている法律です。
≪刑法第235条≫
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(刑法第235条抜粋)
窃盗罪の客体となるのは「他人の占有する他人の物」です。
また、窃盗罪が成立するためには「不法領得の意思」が主観的な要件となりますが、この不法領得の意思は、窃盗の「故意」ともいわれています。
今回の事件で、Aさんが盗んだ、他人が置き忘れた財布は、まさに他人の占有する他人の物となるので窃盗罪の客体となるでしょう。
~証拠隠滅行為~
現金を抜き取った財布を遺棄する行為は、不可罰的事後行為となり、新たな犯罪を成立しませんが、この行為は証拠隠滅行為となります。
刑事手続きにおいて「証拠隠滅行為」は悪質な行為と捉えられています。
もし警察に捜査を受けている段階で証拠隠滅のおそれがある場合は、逮捕や勾留といった身体拘束を受ける原因にもなりかねないので注意しなければなりません。
~なぜAさんが犯人だとわかったのか?~
今回の事件はコンビニの店内で起こっています。
最近のコンビニでは万引きの防止だけでなく、アルバイト、従業員の不正防止の観点から、死角がないくらいに防犯カメラが設置されています。
おそらく、今回の事件においてもAさんが財布を盗む状況が防犯カメラに映っていたのでしょう。
そしてその映像を基に、捜査員は、コンビニ店員に対する聞き込み捜査や、周辺の防犯カメラの精査などを行ってAさんの身元を割り出しと考えられます。
~任意の出頭を拒否する危険性~
犯罪捜査規範第99条では「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない(犯罪捜査規範抜粋)」と任意捜査の原則を定めています。
つまり逮捕の必要性と要件がなければ、基本的には、逮捕して強制的に取調べを行うのではなく、任意の取調べを行うべきだと法律では定められているのです。
しかし任意の取調べに応じなければ、当然、警察等の捜査当局は逮捕状を請求し、犯人を逮捕してから強制的に取調べを行うでしょう。
つまり、任意の取調べを拒否するということは、逮捕されるリスクが高まるのです。