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【少年事件】痴漢事件で逮捕された少年 釈放後の手続きについて 

2022-02-25

【少年事件】痴漢事件で逮捕された少年 釈放後の手続きについて 

痴漢事件で逮捕された少年の、釈放後の手続きについてについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

痴漢事件で逮捕された少年

三重県四日市市に住む中学生のAくん(15歳)は、三重県四日市市楠町の路上において、見知らぬ女性に痴漢をはたらいたとして、三重県四日市南警察署に逮捕されました。
Aくんは、その日の夜に釈放されましたが、Aくんもその両親も今後どのように対応すればよいのか分からず不安で仕方ありません。
翌日、Aくんの父親は、ネットで探し出した少年事件専門弁護士に法律相談の予約を入れました。
(フィクションです。)

釈放後の手続き(在宅事件)

捜査機関は、事件を認知し、犯罪の嫌疑があると考えるときに、捜査を開始します。
捜査を進めるなかで犯人を特定すると、犯人の身柄を確保して捜査を進める必要があると判断すれば、犯人を逮捕することがあります。
犯人の身柄を確保して捜査を進める事件を、一般に「身柄事件」と呼びます。
一方、犯人の身柄を確保することなく捜査を進める事件を「在宅事件」といいます。
犯人が未成年の少年であっても、身柄確保が必要である場合には逮捕・勾留がなされることがあります。
一般的には、比較的軽微な犯罪に当たる行為を行った場合は、逮捕されずに、あるいは、逮捕されたとしても逮捕から48時間以内に釈放され、在宅のまま捜査が進められることが多くなっています。

~捜査段階~

少年の在宅事件の捜査段階の流れは、成人の在宅事件とほぼ同様となります。
先述しましたが、一度逮捕されても、その後勾留されずに釈放されて在宅のまま捜査が行われることもありますし、逮捕されずに捜査機関への出頭に応じる形で捜査が進むこともあります。
いずれにせよ、事件は勝手に終了するわけではなく、捜査機関による捜査は手続に沿って進められることになります。
まずは、警察署での取調べを受け、犯行現場で犯行態様の確認をしたりします。
大人であっても取調べを受けるときは緊張するものですので、事前に弁護士に相談し、取調べではどのようなことが聞かれ、どのように回答したらよいかについてアドバイスを受けておくのがよいでしょう。
警察での取調べが終わると、事件は証拠物や関係書類とともに検察官に送られます。
一定の場合には、警察から直接家庭裁判所に事件を送ることもあります。
事件を受理した検察官は、少年を呼び出して事件について取調べを行うこともありますし、呼び出さずに警察から送られてきた書類と一緒に事件を家庭裁判所に送ることもあります。

~家庭裁判所送致後~

家庭裁判所が事件を受理すると、調査官は少年に関する社会調査を行います。
調査官による調査は、少年の要保護性について行われます。
要保護性という用語は多義的に用いられますが、一般的には次の3つの要素から構成させるものと理解されています。
・少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
・保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性があること。
・保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
調査官の調査の結果、家庭裁判所が審判を開始するのが相当であると認めれば、審判開始決定がなされます。
そうでないときは、審判開始不開始決定が行われ、事件は終了となります。


家庭裁判所は、事件を管轄する間、いつでも観護措置をとることができます。
観護措置というのは、調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置のことです。
観護措置には、調査官の観護に付する措置と少年鑑別所の送致する措置の2種類がありますが、実務上は前者はほとんど活用されておらず、観護措置というときには後者の措置を指します。
捜査段階で逮捕・勾留されている事件では、家庭裁判所に送致された後に、そのまま観護措置がとられることが多いのですが、在宅事件であっても、家庭裁判所が観護措置の必要があると認めれば観護措置がとられることがあります。
そのため、在宅事件であっても、家庭裁判所に事件が送致されたときには、観護措置をとらないように家庭裁判所に働きかける必要があるでしょう。


審判では、非行事実と要保護性について審理されます。
つまり、少年がどのような行為をしたのか、そして、再びそのような行為をしないためにはどのような処分とすべきか、ということを明らかにします。
非行事実について特段争いがない場合には、要保護性の解消が審判のポイントとなります。
要保護性が解消されていると認められれば、社会内処遇での更生が期待できると判断され、保護観察となる可能性が高くなります。
しかしながら、要保護性の解消は、審判の日にその旨を述べるだけでは裁判官を納得させることはできません。
要保護性の解消に向けた環境調整活動は、できる限り早い段階から取り組む必要があります。
環境調整というのは、少年自身や少年の周囲の環境、具体的には家庭環境、学校、職場、交友関係などを少年の更生に適したものにする活動です。
そのためには、事件を起こした原因や少年が抱える問題を明らかにし、それらを解決する方法を探求し、実施していかなければなりません。
当然ながら、このような活動は少年ひとりで行うことはできません。
保護者や学校の先生方、職場の上司と協力して行う必要があります。
そして、少年と関係者と連携して環境調整を行うにあたってのファシリテイターとしての役割を担うのが弁護士です。
少年の内省を促進する、被害者がいる事件では被害者への被害弁償や示談を通じて少年に事件と向き合わせる、保護者と連携し家庭環境を改善する、学校関係者と話し合い少年の復学を支援するなど、弁護士が行う環境調整活動は多岐に渡ります。

少年事件に強い弁護士

お子様が事件を起こしてお悩みであれば、一度少年事件に精通する弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の対応にお困りの方は、弊所の弁護士に一度ご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

三重県の刑事事件。「不起訴って何ですか?」不起訴について教えてください。

2022-02-03

三重県の刑事事件。「不起訴って何ですか?」不起訴について教えてください。

不起訴について、三重県の刑事事件に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」が解説します。

不起訴に関する質問

三重県桑名市に住む33歳、自営業の男性からの質問
3カ月前に、近鉄桑名駅の近くにある居酒屋で、友人を殴って怪我をさせる傷害事件を起こしてしまいました。
逮捕はされていませんが、これまで何度か三重県桑名警察署で取調べを受け検察庁に書類送検されました。
友人とは和解して被害届を取り下げてもらうことができたので、検事さんから「不起訴にします。」と言われたのですが『不起訴って何ですか?』

三重県松阪市に住む50歳、会社員の男性からの質問
先日、通勤電車の中で痴漢と間違えられて三重県松阪警察署で取調べを受けました。
全く身に覚えのない事でしたが、被害者とされる女性は「私に痴漢された。」と言って警察に被害届を出したようです。
取調べで、私が容疑を否認していると、取調べを担当している刑事さんから「きちんと認めれば逮捕しないし、この程度の痴漢事件であれば不起訴になる。」と言われたのですが『不起訴って何ですか?』

三重県伊賀市に住む40代、公務員の女性からの質問
2カ月ほど前に、伊賀市ゆめが丘にあるスーパーで万引きをしてしまいました。
すでに警察の取調べを終え、検察庁に書類送検されていますが、職場である市役所の上司からは「不起訴でも懲戒処分になる可能性がある。」と言われて、現在は自宅待機中です。
『不起訴について教えてください。』

『不起訴』とは?

刑事事件のほとんどは、まず犯罪を認知した警察が捜査を行います。
そして捜査の過程で犯人(被疑者)が特定された事件のほとんどは検察官に事件が送致されます。
そして検察官がその犯人(被疑者)を起訴するかどうかを判断するのですが、ここで検察官が、刑事事件を起こした犯人(被疑者)を起訴しないことを「不起訴」と言います。
不起訴になれば前科は付きませんが、警察署で取調べを受けた記録は、前歴として残り、警察署で採取された被疑者指紋や写真も登録されたままです。

このように不起訴を決定するのは、警察官ではなく検察官です。
警察官の取調べで、警察官から「不起訴になるから大丈夫。」と言われたという話しをよく聞きますが、この警察官の言うことを鵜呑みにしてしまうのは危険です。
そもそも警察官には起訴、不起訴の決定権はありませんし、警察官がこのような事を言うのは、取調べを受けている人を安心させて、取調べを優位に進めるためだからです。
警察の取調べ段階で作成された書類を基に検察官が、起訴、不起訴の判断をするので、警察の捜査段階で、意に反する内容の書類が作成されてしまうと、その書類が起訴の決め手になることもあるので、警察の手続きで不安のある方は弁護士に相談することをお勧めします。

『不起訴』のメリットは?

警察の取調べを受けている方のほとんどは、今後の手続き等について大きな不安を感じていると思いますが『不起訴』というのは刑事手続きの終局処分となるので、不起訴が決定は刑事手続きの終了を意味します。
ですから不起訴が決定した事件の聴取で、警察署や検察庁から呼び出されることはないと考えていいでしょう。
ただ「起訴猶予」による不起訴の場合は、その後に新たな証拠が出てきた場合は起訴されてしまうこともあるので注意が必要です。

どんな時に『不起訴』になる?

法律的に不起訴になる理由は複数存在しますが、本日はその中でも代表的なものを3つ紹介します。

①嫌疑なし

警察はあなたが犯人だと決めつけて捜査を進めています。
当然あなたは、警察での取調べでは事件への関与を否定するでしょうが、それでも警察があなたを検察庁に送致したり、最悪の場合は逮捕してしまうこともあります。
まさに誤認逮捕です。
しかし検察庁では、法律のプロである検察官が、更に事件を精査します。
そこで検察官があなたが犯人ではないと判断したり、そもそも犯罪を認定するだけの証拠がないことに気付いた場合は「嫌疑なし」で不起訴となります。

②嫌疑不十分

送致を受けた検察官が、警察から送致された書類や、容疑者の取り調べを行い「嫌疑なしとまでは言い難いが、立証するだけの証拠が不十分だ」と判断した場合は「嫌疑不十分」で不起訴となります。

③起訴猶予

最後に紹介するのが「起訴猶予」による不起訴です。
起訴猶予は、無罪放免に近い「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」とは異なり、単に検察官が「現時点での起訴を見送った。」という意味に過ぎないので、その後の状況の変化(新たな証拠が出てきた等)によっては起訴されてしまう可能性があります。
検察官が起訴猶予による不起訴を判断するのは、犯人であること立証するだけの証拠はあるが、起訴して有罪を得るまでの十分な証拠とは言えない場合や、事件自体が軽微な場合、犯人の年齢や、境遇、性格、更生の期待を考慮した場合、被害者との示談が成立している場合等です。
実は、検察官が不起訴の判断をする場合に一番多いのが、この「起訴猶予」による不起訴で、その数は、不起訴全体の9割を超えています。


三重県の刑事事件における『不起訴』の獲得に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、三重県内で起こった刑事事件の『不起訴』の獲得に自信のある法律事務所です。
三重県の刑事事件でお困りの方は一度ご相談ください。
三重県の刑事事件に関するご相談は

フリーダイヤル 0120-631-881(24時間受付中)

にて24時間受付ております。
また、三重県の警察署にご家族、ご友人が逮捕されてしまった場合には、逮捕された方のもとに弁護士を派遣する初回接見サービスもご用意しております。
初回接見サービスについては

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三重県名張市のわいせつ事件 監護者わいせつ事件で逮捕されるか不安

2022-01-23

【三重県名張市のわいせつ事件】監護者わいせつ事件で逮捕されるか不安な方に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がアドバイスします。

三重県名張市のわいせつ事件

三重県名張市に住む会社員のAさんは、三重県名張警察署から監護者わいせつ事件の被疑者として呼び出しを受けています。
Aさんは、妻の13歳の連れ子に対して、胸を触るなどのわいせつな行為をしたと疑われています。
事の発端は、連れ子が学校の先生に相談したことで事件が発覚し、その日以降、連れ子は児童相談所に一時保護されています。
Aさんは、警察署に出頭すれば逮捕されるのではないかと不安で、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

監護者わいせつ事件

監護者わいせつ罪は、平成29年の刑法改正により新設された罪です。

第179条 
1 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。


まずは監護者わいせつ罪について解説します。

■犯行の主体■

監護者わいせつ罪の主体は、「18歳未満の者を現に監護する者」です。
「18歳未満の者を現に監護する者」とは、18歳未満の者を現実に監督し保護している者のことです。
これには、親権者が典型的な例となりますが、親権者であっても、実際に監護している実態がなければ「現に監護する者」には該当しません。
他方、親権者でない者でも、事実上、現実に18歳未満の者を監督し保護する者であれば、監護者に当たります。
監護者に当たるかどうかは、監護者わいせつ罪が、依存・被依存あるいは保護・被保護によって生じる監護者であることによる影響力があること利用してわいせつ行為をすることに処罰の根拠があることから、依存・被依存あるいは保護・被保護の関係があるかどうか、そして、その関係は、具体的な影響力を及ぼせる程度であるかどうかといった点から判断されます。
衣食住などの経済的な観点、生活上の指導監督などの精神的な観点から被疑者と被害者との関係性を分析し、その関係が継続的に続いているかどうかが検討されます。

■犯行の客体■

監護者わいせつ罪の客体は、現に監護されている18歳未満の者です。

■行為■

監護者わいせつ罪の行為は、①現に監護する者であることによる影響力に乗じて、②わいせつな行為をすることです。

①現に監護する者であることによる影響力に乗じて
「現に監護する者であることによる影響力」とは、監護者が被監護者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点や、生活上の指導監督などの精神的な観点から、現に被監護者を監督し、保護することにより生ずる影響力のことをいいます。
その影響力に「乗じて」とは、現に監護するものであることによる影響力が一般的に存在し、かつ、行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で、わいせつな行為を行うことをいいます。
つまり、わいせつ行為を行う場面で、影響力を利用するために具体的な行為を行うことまで必要ではないけれども、監護者の影響力と無関係に行った場合には、影響力に乗じたとは言えません。

②わいせつな行為
ここでいう「わいせつな行為」は、強制わいせつ罪における「わいせつ行為」と同じで、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為」をいいます。

■故意■

監護者わいせつ罪は、故意犯ですので、罪を犯す意思がなければ罪は成立しません。
監護者わいせつ罪の故意は、自己が18歳未満の者を現に監護する者であること、現に監護するものであることによる影響力があることに乗じること、わいせつな行為を行うことの認識・認容です。
18歳未満の者を現に監護する者であることの認識・認容については、現に監護する者に該当することの認識まで必要ではなく、これを基礎づける事実の認識・認容で足ります。

■罰則■

監護者わいせつ罪の法定刑は、強制わいせつ罪のそれと同じであり、6月以上10年以下の懲役です。

監護者わいせつ事件で逮捕されたら

監護者わいせつ事件では、被疑者と被害者との関係性から、被疑者の身柄を拘束をせずに捜査を進めると、被疑者が被害者、あるいは、被害者の母親と接触し、供述を変えるように迫るなど罪証隠滅のおそれがあると判断される傾向にあることから、被疑者の身柄を確保した上で、捜査が進められる可能性は高いでしょう。
つまり、逮捕される可能性も高く、その後に勾留が付くことが予想されます。
ただ、捜査段階での釈放が困難であっても、起訴後に保釈制度を利用して釈放される可能性はあるでしょう。
保釈が認められるかどうかの判断において、重要な要素のひとつに、罪証隠滅のおそれの有無があります。
逮捕・勾留の場面でも重要な要素となった罪証隠滅のおそれですが、やはり、起訴後、つまり、検察官が被疑者を有罪にするだけの十分な証拠を揃えた後であっても、被害者との接触を図り、被害者の供述を変えるよう迫るおそれは残ります。
そのため、被害者との接触の可能性がないことを立証し、裁判官に罪証隠滅のおそれがないと認めらもらうよう、起訴される前から準備しておく必要があります。

監護者わいせつ事件では、犯罪を立証するだけの十分な証拠があると検察官がと考える場合には、起訴される可能性が高いでしょう。
監護者わいせつ罪の法定刑は懲役刑のみですので、起訴=公判請求となり、公開の法廷で審理されることとなります。
ただ、有罪にするだけの証拠が揃っている場合であっても、被害者が、その精神的な影響を恐れ、裁判で証言することを拒否するケースも少なくなく、起訴しないとすることもあります。

監護者わいせつ事件で逮捕された場合、身体拘束が長引く可能性、公判請求される可能性が高いでしょう。
そのため、取調べ対応や保釈に向けた準備、公判に向けた準備を捜査段階から進めておく必要があります。

警察に逮捕されてからの流れについては
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三重県名張市の刑事事件に強い弁護士

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三重県伊勢市の傷害事件 従業員をエアガンで撃った男が逮捕

2022-01-12

三重県伊勢市の傷害事件 従業員をエアガンで撃った男が逮捕

三重県伊勢市で、従業員をエアーガンで撃った男が逮捕され傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

三重県伊勢市の傷害事件

三重県伊勢市の老人ホームにおいて、このホームを経営する男性が、従業員の身体をエアガンを発射させ、全治10日間の傷害を負わせたとして警察に逮捕されました。
新聞等の報道によると、逮捕された男性は被害者に対して、去年の9月、事務所において一度に複数の弾が発射されるタイプのエアガンで、被害男性はわき腹に全治10日間の傷害を負ったとのことです。
逮捕された男性は、警察の取調べに対して「怒って被害者を投げたことは覚えているが、エアガンを撃ったことは思い出せない」と、容疑を否認しているようです。
※令和4年1月7日配信の東海テレビのニュース記事から抜粋

傷害事件

傷害罪とは、人に暴行を加えて傷害を負わせた時に成立する犯罪です。
刑法第204条に規定されており、その法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

傷害罪で逮捕されるとどうなるの

傷害罪で警察に逮捕されると、48時間以内は警察の判断で身体拘束を受けることになります。
当然、この48時間以内に釈放されることもあります。
釈放されなかった場合は、48時間以内に検察庁に送致されます。
検察庁に送致されると検察官から取調べを受けることとなり、その検察官が裁判所に勾留を請求するかどうかを判断します。
この時点で釈放される場合もありますが、検察官が勾留請求を決定した場合は、送致から24時間以内に裁判所に勾留請求されることとなります。
裁判所に勾留請求されると、裁判所で裁判官から質問を受けることになり、裁判官は勾留を決定するかどうかを判断します。
裁判官が検察官の勾留請求を却下すれば、その時点で釈放されますが、逆に勾留を決定すればその日から10日間は引き続き身体拘束を受けることになります。
そして勾留満期と共に、検察官は

①勾留延長を請求するか

②正式に起訴するか

③略式起訴による罰金刑とするか

④不起訴にするか

の何れかを判断します。

①勾留延長を裁判所に請求した場合
裁判官は10日まで勾留を延長する決定をすることができます。
そして勾留延長の満期後に以下の②~④の手続きとなります。

②正式に起訴することを決定した場合
その後の刑事裁判で刑事処分が決まり、保釈が許可されない限り身体拘束は続きます。

③略式起訴による罰金を決定した場合
刑事裁判は開かれず、最終的に裁判所で決められた金額の罰金を納付すれば刑事手続きは終了します。

④不起訴を決定した場合
その時点で刑事手続きが終了します。

エアガンを使用した傷害事件

傷害罪の量刑は、暴行の程度と、被害者の怪我の程度によって大きく左右されます。
今回の事件、被害者の傷害は全治10日間と、それほど大きな傷害ではなさそうですが、エアガンを凶器として使用している暴行の程度は非常に悪質なものと判断されるでしょう。
被害者との間で示談を締結することができれば略式起訴による罰金刑だったり、場合によっては不起訴処分の可能性もあるでしょうが、そういった事情がなければ正式に起訴される可能性が非常に高いと思われます。

傷害事件に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、傷害事件に関するご相談を

フリーダイヤル 0120-631-881

にて24時間、年中無休で受け付けております。
三重県伊勢市で、ご家族、ご友人が警察に逮捕された方や、傷害事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

遺体を放置して死体遺棄事件に

2021-12-28

遺体を放置して死体遺棄事件に

遺体を放置して死体遺棄事件になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

三重県多気郡大台町在住のAさんは、夫と2人暮らしでした。
ある日、Aさんは、Aさんの夫が昨夜の就寝時のまま亡くなっていることに気が付きました。
しかし、Aさんは誰にも相談することができず、また、遺体をどのようにしていいのか分からなかったため、夫の遺体を自宅に放置していました。
しばらくして、三重県の大台町役場が、Aさんの夫と連絡が取れないことを不審に思い、三重県大台警察署に相談。
三重県大台警察署の捜査の結果、AさんがAさんの夫の遺体を放置していたことが発覚し、Aさんは死体遺棄罪の容疑で逮捕されることとなりました。
Aさんは、親族の依頼で接見にやってきた弁護士に、遺体を放置していただけで死体遺棄罪になるのか相談しました。
(※令和3年12月25日YAHOO!JAPAN配信記事を基にしたフィクションです。)

・遺体の放置と死体遺棄罪

今回Aさんの逮捕容疑となっている死体遺棄罪は、刑法190条に規定されている犯罪です。

刑法第190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

条文を見ると、死体遺棄罪の名前の通り、死体を「遺棄」することで死体遺棄罪が成立するようです。
一般にイメージされる「遺棄」とは、物をどこかへ捨てる行為を指すでしょう。
それに対して、今回の事例を見てみると、Aさんは夫の遺体を放置しただけで、どこかへ捨てたわけではありません。
遺体を放置するという行為と「遺棄」という言葉のイメージは簡単に結びつきづらいかもしれませんが、今回のような場合でも死体遺棄罪は成立するのでしょうか。

ここで注意しなければいけないのは、死体遺棄罪の「遺棄」という言葉は、習俗上の埋葬と認められる方法によらないで放棄することを指しているということです。
つまり、死体遺棄罪の「遺棄」という言葉は、積極的に死体を捨てる行為だけを指しているわけではないということです。
よくイメージされるであろう、山などに死体を捨てるという行為はもちろん、今回の事例のAさんのように、家族である夫の死体を埋葬する義務のある者(=Aさん)が、一般的に埋葬と認められるような埋葬をせずに放置するような場合にも、死体遺棄罪の「遺棄」をしていると考えられるのです。
そのため、今回の事例ではAさんに死体遺棄罪の容疑がかかっているのです。

死体遺棄罪は、条文にある通り、懲役刑しか刑罰の規定がありません。
すなわち、罰金を支払って事件を終えるといったことはできず、起訴されれば必ず公開の法廷に立って刑事裁判を受けるということになります。
刑事裁判を受けるとなれば、裁判での尋問に向けた練習などの対策や、提出する証拠の準備などを綿密に行わなければいけません。
それだけ重大な犯罪ですから、死体遺棄事件の当事者となってしまったら、早期に弁護士に相談・依頼すべきでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、死体遺棄事件を含めた刑事事件を専門としている法律事務所です。
三重県刑事事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

傷害罪で逮捕された場合の前科を相談

2021-12-24

傷害罪で逮捕された場合の前科を相談

傷害罪逮捕された場合の前科について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさん(大学3年生)は,三重県松阪市の居酒屋で同じサークルに所属している友人4人と楽しく食事をしていました。
しかし,その友人の中のVさんが大学の成績についてAさんについて悪口を言い始めました。
Aさんは,最初は我慢していましたが,徐々にエスカレートしていくVさんの悪口に耐え切れなくなり,Vさんに顔面を数発殴ってしまいました。
その結果,Vさんに頬の骨を骨折する怪我を負わせてしまいました。
Aさんは,その場にいた他の友人らに取り押さえられ,店員が呼んだ三重県松阪警察署の警察官に傷害罪逮捕されてしまいました。
Aさんが逮捕された旨の連絡を受けたAさんの父親は,Aさんに前科がつくことで就職活動に影響が出ないか気になり,刑事事件を専門に扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

~傷害罪とは何か~

傷害罪は,刑法の以下の条文に定められています。

刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪とは,人に対して暴行を行った事件のうち,相手方が傷害,つまり怪我を負ってしまった場合に問われる犯罪です。

今回の事例のような喧嘩によって傷害事件に発展した場合には,その場に通報によって駆け付けた警察官が臨場するケースもあり,傷害罪現行犯逮捕されることも十分考えられます。

~逮捕=「前科」なのか~

そもそも刑事訴訟法上「前科」について正確な定義はありません。
ただ,多くの人がイメージする「前科」とは,犯罪をしたという経歴を指しています。

では,その「前科」とは,逮捕された時点で付いてしまうものなのでしょうか。
逮捕については,刑事争訟法で以下のように定められています。

刑事訴訟法第199条第1項
検察官,検察事務官又は司法警察職員は,罪を被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは,あらかじめ発する逮捕状によりこれを逮捕することができる。

この条文は,逮捕はあくまでも罪を犯したことを疑うに足る相当合理的な理由がある場合に行われるというものです。
そのため,逮捕されたことは犯罪をしたと確定的に判断されたものではありません。

そのため多くの方がイメージする「前科」がつくのは,起訴をされ,かつ起訴された事件の裁判において有罪判決をうけた場合です。
先ほど触れた通り,「前科」については法律で定義されているわけではなく,一般に上記のような解釈がされているということになります。
したがって,起訴をされなければ有罪判決を受けることもないため「前科」が付くことはなく,逮捕されたからといって「前科」がつくわけではないのです。
つまり,不起訴を獲得すれば「前科」はつきません。
前科」を避けるためには,まずは不起訴処分を獲得することを目指すことになるでしょう。

今回のAさんのように,逮捕され身体拘束をともなう刑事事件では,被疑者を守るために逮捕から起訴までが最大23日以内という制限が存在します。
ただ,それは同時にその期間の間で起訴か不起訴か判断されてしまうことを意味します。
そのため,前科を避けるためには素早く不起訴獲得に向けた対応が必要になります。

そして不起訴獲得に向けた対応としては,被害を受けた方への被害弁償をしたり謝罪文を作成することで,反省の意思を見せることが挙げられます。
これらの行為を行うことで不起訴を獲得しやすくなるといえますが,当事者だけでそういった活動を行うことは難しいですから,弁護士の力を借りることがおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが,24時間体制で無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。

強要事件で逮捕されてしまった…勾留が不安

2021-12-21

強要事件で逮捕されてしまった…勾留が不安

強要事件逮捕され、勾留が不安な場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

三重県津市に住むAさんは、自分の子どもが小学校でトラブルになったことに腹を立て、自宅に同級生の父親(V1さん)と母親(V2さん)を呼び出し、体に彫られた入れ墨を見せた上、「あんたら家族、全員ぐちゃぐちゃにしたろか」などと大声をあげて脅しました。
そして、AさんはV1さんとV2さんに土下座を要求し、二人に土下座をさせました。
その後、V1さんとV2さんは三重県津南警察署強要事件の被害を訴えました。
その結果、Aさんは三重県津南警察署の警察官により強要罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「警察から『勾留される可能性が高い』と聞いた。自分の身体拘束がいつまで続くのか。」と不安に感じています。
(2021年2月24日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【強要罪とは】

刑法223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

被害者に対して、その①「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して」、②「害を加える旨を告知」して③「脅迫」し、被害者の方に「義務のないことを行わせ」たとき、上記強要行為を行った者には強要罪が成立します。

【強要罪の各要件について】

以下では、強要罪の各要件について解説した上で、Aさんに強要罪が成立するのかを考えていきます。

強要罪の②「害を加える旨を告知」する行為とは、これから害を加えることを、明示的又は黙示的に、口頭・文書・態度により告げることをいいます。
このとき、告知する害の内容は、告知した者の意思によりその害の実現を左右することができるものでなければならないとされています。

刑事事件例では、AさんはV1さんとV2さんに対して、体に彫られた入れ墨を見せた上、「あんたら家族、全員ぐちゃぐちゃにしたろか」などと言いました。
このAさんの行為は、V1さんとV2さんの生命、身体、財産に対して、これから害を加えることを、口頭により明示的に告げたといえます。
そして、Aさんが告知した害悪は、Aさんの意思次第で実現できるものであったといえます。
よって、Aさんの行為は、強要罪の①「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して」、②「害を加える旨を告知」する行為に当たると考えられます。

また、強要罪の③「脅迫」とは、一般人が畏怖するような害悪の告知をすることをいいます。
刑事事件例では、AさんはV1さんとV2さんに対して、体に彫られた入れ墨を見せた上、「あんたら家族、全員ぐちゃぐちゃにしたろか」などと言いました。
そして、この際、Aさんは体に彫られた入れ墨を見せたり、大声を出したりしています。
このAさんの行為を一般人から見れば、畏怖するに十分な害悪の告知であったと考えられます。
よって、Aさんの行為は、強要罪の③「脅迫」に当たるの考えられます。

さらに、強要罪の④「義務のないことを行わせ」る行為とは、被害者の方に義務がないことを強制することをいいます。
刑事事件例では、Aさんは上記脅迫行為により、V1さんとV2さんに土下座をさせています。
このとき、V1さんとV2さんによる土下座は法律上義務のないのことであったと考えられ、Aさんは義務のないことを強制したといえると考えられます。
よって、Aさんの行為は、強要罪の④「義務のないことを行わせ」る行為に当たると考えられます。

以上より、Aさんには強要罪が成立すると考えられます。

【強要事件で勾留が不安な場合の身柄解放活動】

強要事件逮捕された場合、強要事件の被疑者の方は逮捕に引き続いて勾留がなされる可能性があります。
勾留は、逮捕による身体拘束が延長されたとも考えることができます。
勾留が決定されると、身体拘束の期間は、逮捕による72時間(刑事訴訟法203条・刑事訴訟法205条)に加えて、さらに最長で(延長された場合で)20日間(刑事訴訟法208条)に延長されることになります。

この長期間の身体拘束の間は、強要事件の被疑者の方は仕事や学校に行くことができなくなったり、ご家族の方に自由に会うことができなくなったりするなど不自由が生じることになってしまいます。

そこで、刑事弁護士は、強要事件の被疑者の方を勾留する理由(刑事訴訟法60条)がない場合や、その勾留の必要性(刑事訴訟法87条)がないと考えられる場合、検察官や裁判官に対して、勾留をしないように求めることができます。
また、一度出されてしまった勾留の決定に対しては、不服を申し立てることができます。

さらに、刑事事件例のような強要事件は被害者が存在する刑事事件です。
そこで、強要事件の被害者に謝罪と被害弁償をするための示談交渉を行うことができます。
もし示談を締結することができれば、示談を締結したことを検察官や裁判官に伝えることにより、早期釈放がなされる可能性が高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
強要事件逮捕され、勾留が不安な場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕(後編)

2021-12-17

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕(後編)

株式会社会社法違反・特別背任事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
株式会社会社法違反・特別背任事件逮捕(前編)の続きとなります。

【特別背任罪と会社法】

ここで、会社法356条1項では、利益相反取引の制限をしています。

会社法356条1項
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
2 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき

また、会社法365条1項は、会社法356条1項の読み替えについて規定しています。

会社法365条1項
取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第1項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

つまり、取締役会設置会社において取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするときは、取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないとされているのです。

以上を踏まえて刑事事件例を見てみると、AさんはB株式会社の取締役であるため、Aさんが自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするときは、B株式会社の取締役会で承認を得なければなりません。
しかし、Aさんは、B株式会社の取締役会決議での承認を得ることなく、C株式会社を代表して、B株式会社と売買契約を締結し、通常より廉価で商品を買い付けています。
このAさんの行為は会社法356条1項2号違反の利益相反取引に該当します。
したがって、Aさんの行為は、誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されているところに反する行為といえます。
よって、Aさんの行為は、会社法960条の特別背任罪の「任務に背く行為」に該当すると考えられます。

なお、任務違背性を実質的に理解する考え方に立ったとしても、このAさんによる利益相反取引により、実質的にB株式会社に不利益が生じていると考えられ、結局は、Aさんの行為は、会社法960条の特別背任罪の「任務に背く行為」に該当すると考えられます。

【特別背任罪の要件(2)】

また、会社法960条の特別背任罪が成立するためには、上記行為が「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的」でなされる必要があります。

刑事事件例では、AさんはC株式会社を代表してB株式会社と売買契約を締結することにより、通常より極めて廉価での買い付けを行おうとしていました。
このAさんの目的はC株式会社の利益を図る目的であると考えられます。
よって、Aさんには、会社法960条の「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的」があったと考えられます。

さらに、会社法960条の特別背任罪が成立するためには、上記行為によって「本人に財産上の損害を加えた」といえなければなりません。
この「財産上の損害」は、経済的見地から会社の財産状態を評価することにより認められます。
刑事事件例では、Aさんは、C株式会社を代表して、B株式会社と売買契約を締結し、通常の販売価格より著しく安い価格でB株式会社の商品の買い付けを行っています。
確かに、上記売買契約により、B株式会社はC株式会社に対する代金支払請求権を有することになりました。
しかし、経済的見地からすれば、株式会社の財産が減少した、又は増加すべきであった財産が増加しなかったと考えられます。
よって、Aさんの利益相反取引により、B株式会社には会社法960条の「財産上の損害」が生じたといえると考えられます。

以上より、Aさんには会社法960条の特別背任罪が成立すると考えられます。

【特別背任罪と保釈】

Aさんは特別背任罪の容疑で逮捕されていますが、このまま身体拘束が続いた状態で起訴されることとなれば、その身柄解放の手段として保釈を請求していくことが考えられます。
刑事訴訟法では、保釈は被告人の「権利」として考えられています(刑事訴訟法89条柱書参照)。
しかし、刑事訴訟法89条には、被告人の権利である保釈を認めなくてもよい場合(権利保釈の除外事由)が規定されています。

そして、現在、権利保釈を却下する理由として最も多いのが、権利保釈の除外事由である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法89条4号)があることです。

刑事弁護士としては、保釈請求書において説得的な論述をするなどして、罪証隠滅のおそれがないことを裁判官に主張することができると考えられます。

また、刑事訴訟法90条は、職権保釈として以下のように規定しています。

刑事訴訟法90条
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

この職権保釈は、刑事訴訟法89条の権利保釈(被告人の権利として認められる保釈)の除外事由に該当する場合であっても、裁判所の裁量によって保釈を許可できるものとした規定です。

刑事弁護士としては、保釈請求書において、権利保釈とともに裁量保釈も求めていくことができると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
株式会社会社法違反・特別背任事件逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕されたら(前半)

2021-12-14

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕されたら(前半)

株式会社会社法違反・特別背任事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、三重県津市にあるB株式会社の取締役と、同区にあるC株式会社の代表取締役も務めていました。
B株式会社とC株式会社はどちらも取締役会設置会社であり、会社法356条1項1号の競業の関係はありませんでした。
ところが、Aさんは、B株式会社の取締役会決議での承認を得ることなく、C株式会社を代表して、B株式会社と売買契約を締結し、通常の販売価格より著しく安い価格でB株式会社の商品の買い付けを行いました。
Aさんには元々その目的もあったのです。
その後、津地方検察庁は、Aさんを会社法違反特別背任罪の容疑で逮捕しました。
Aさんはなるべく早く社会生活を送れるよう、保釈を認めてほしいと考えています。
(2020年7月28日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【特別背任罪とは】

会社法960条は、取締役等の特別背任罪として、以下のように規定しています。

会社法960条
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 取締役、会計参与、監査役又は執行役

会社法960条の特別背任罪は、刑法247条の背任罪を基にして規定された犯罪です。
すなわち、刑法247条の背任罪が一般条項、会社法960条の特別背任罪が特別条項といえます。

参考として、刑法247条の背任罪を引用します。

刑法247条
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

会社法960条(特別背任罪)と刑法247条(背任罪)の規定を比較すると、犯罪の行為や目的、結果に当たる要件については、どちらも同じあるといえます。

会社法960条(特別背任罪)と刑法247条(背任罪)の規定の違いは、犯罪の主体(行為者)が限定されているか否かという点にあります。
すなわち、会社法960条の特別背任罪の主体(行為者)は「次に掲げる者」として法定の者に限られるのに対し、刑法247条の背任罪の主体(行為者)は限定されていないといえます。

以上をまとめると、会社法960条の特別背任罪は、例えば取締役のように法律に規定された一定の責任ある者が背任行為を行った場合に、刑法267条の背任罪に規定された刑罰よりも重い刑罰を課すために規定された犯罪であるといえると考えられます。

以下では、会社法960条の特別背任罪の各要件を見ていきます。

【特別背任罪の要件(1)】

まず、会社法960条の特別背任罪の主体(行為者)は、上述の通り、「次に掲げる者」として法定の者に限られています。
そして、会社法960条1項3号には、「取締役」が規定されています。
刑事事件例では、AさんはB株式会社の取締役を務めています。
よって、会社法960条の特別背任罪の「取締役」に該当すると考えられます。

次に、会社法960条の特別背任罪の要件である行為は「任務に背く行為」です。
会社法960条の特別背任罪の本質は信任関係の破壊にあると考えられます。
よって、会社法960条の特別背任罪の「任務に背く行為」とは、誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されているところに反する行為をいうと解されます。

そして、事務処理に関し、法令や契約等により手続的規制が加えられている場合、その法定や契約等の手続的制約に反する行為であれば、原則として会社法960条の「任務に背く行為」に該当すると考えられます。
なお、任務違背性は、信任委託の趣旨に則り、実質的に会社に不利益になる行為といえるかという観点から判断されるという考え方もあります。

特別背任罪などは、なかなか聞きなれない犯罪であることから、どういった人がどのような行為をすると特別背任罪に当てはまるのかなど、分からないことも多いでしょう。
だからこそ、刑事事件に詳しい弁護士に説明してもらい、アドバイスをもらうことが重要なのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
株式会社会社法違反・特別背任事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

株式会社の会社法違反・特別背任事件で逮捕(後編)に続きます。

公務執行妨害・傷害事件で現行犯逮捕

2021-12-10

公務執行妨害・傷害事件で現行犯逮捕

公務執行妨害傷害事件現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは三重県鈴鹿市にある飲食店で、友人のBさんと食事をしていたところ、些細なことから口論となりました。
AさんとBさんは飲食店前の通りに出て、殴り合いの喧嘩をはじめました。
しばらくすると、その喧嘩を見ていた周辺住民の通報により、三重県鈴鹿警察署のV警察官が駆けつけ、仲裁に入りました。
Aさんは喧嘩を邪魔されてことに立腹し、V警察官の顔面を1発殴りました。
その結果、Aさんは公務執行妨害罪傷害罪の容疑で現行犯逮捕されました。
V警察官は全治5日間の打撲傷を負ったといいます。
また、喧嘩の相手であるBさんも打撲傷や切り傷を負ったといいます。
(2021年2月18日に神戸新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【公務執行妨害罪とは】

刑法95条1項
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪の「公務員」とは、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」(刑法7条1項)をいうとされています。
刑事事件例の三重県鈴鹿警察署のV警察官は、「国又は地方公共団体の職員」として、公務執行妨害罪の「公務員」に該当します。

また、公務執行妨害罪の「職務」とは、公務員が取り扱う各種各様の事務をいうと考えられています(最高裁判所判例昭和53年6月29日)。
このとき、公務執行妨害罪の「職務」は適法(合法)な者である必要があると考えられています。
刑事事件例のV警察官による臨場及び仲裁は、警察官としての適法な職務であったとして、公務執行妨害罪の「職務」に当たると考えられます。

さらに、公務執行妨害罪の「暴行」とは、公務員に直接又は間接的に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
刑事事件例のAさんによるV警察官の顔面を1発殴る行為は、公務員に直接向けられた不法な有形力の行使として、公務執行妨害罪の「暴行」に当たると考えられます。

以上より、Aさんには公務執行妨害罪が成立すると考えられます。

なお、公務執行妨害罪は、公務の執行を保護するために規定された犯罪であり、厳密には被害者は公務員個人ではなく、国家を考えられることになります。

【傷害罪とは】

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の「傷害」とは、人の生理機能の障害をいいます。
傷害罪の「傷害」に当たる具体例は、擦り傷や打撲傷などです。

刑事事件例では、V警察官はAさんに殴られた結果、全治5日間の打撲傷を負っています。
よって、V警察官さんの怪我は、人の生理機能の障害として、傷害罪の「傷害」に当たると考えられます。

以上より、Aさんには傷害罪が成立すると考えられます。

【喧嘩による傷害罪】

刑事事件例では、Aさんは、口論をきっかけに、殴り合いの喧嘩をはじめています。
そして、この喧嘩により、Bさんも怪我を負っています。
よって、AさんにはBさんに対する傷害罪も成立すると考えられます。

【公務執行妨害罪と傷害罪の関係】

以上のように、Aさんには公務執行妨害罪傷害罪が成立する可能性がありますが、これら犯罪は、AさんのV警察官を暴行するという社会的見解からして1つの行為によって生じたものであるといえます。

このように複数の犯罪が社会的見解からして1つの行為によって生じた場合、複数の犯罪のうち「最も重い刑」で処断されます(刑法54条1項、観念的競合)。

ここで、刑事事件例で成立する公務執行妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」であり、傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

このとき、法定刑が重いのは傷害罪であるので(刑法10条2項参照)、公務執行妨害罪傷害罪が同時に成立する場合には傷害罪の刑で処断されることになります。

【公務執行妨害・傷害事件の刑事弁護活動】

公務執行妨害事件を起こした場合、被疑者の方は公務という国家的法益を侵したと考えらます。
このとき、公務の保護という観点を強調し、公務員の方が勤務する役所(刑事事件例でいえば三重県鈴鹿警察署)より、公務員の方に対して、示談を受けないように指示が出される可能性があります。

一方、傷害事件を起こした場合、被疑者の方は被害者の方の身体の安全という個人的法益を侵したといえます。
傷害事件は個人的法益の侵害であるという点を強調すれば、傷害事件の被害者の方に対して正式な謝罪と相当な被害弁償をすることにより、示談を締結することができる可能性があります。

刑事弁護士としては、以上を踏まえ、公務執行妨害・傷害事件の被害者の方との示談交渉をしつつ、示談が不成立になる可能性も踏まえ、公判対応などの刑事弁護活動をしていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
公務執行妨害・傷害事件で現行犯逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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