強盗殺人で逮捕

強盗殺人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県四日市北警察署は、三重県四日市市の駐車場で、男性に暴行を加え、財布などを奪い、男性を死亡させたとして、市内に住むAさんを強盗殺人の疑いで逮捕しました。
調べに対し、Aさんは、「口論になり男性を殴ったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件について詳しいことが分からず不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)

強盗殺人罪とは

まず、強盗罪とはどのような犯罪であるのかについてみていきましょう。

1.強盗罪

刑法第236条は、強盗罪について次のように規定しています。

1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

強盗罪は、
①暴行または脅迫を用いて、
②他人の財物を強取したこと、あるいは、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
を構成要件とする罪です。

■客体■
強盗罪の客体は、「他人の財物」と「財産上の利益」です。
「他人の財物」は、他人の占有する他人の財物を意味し、自分の財物でも、他人が占有している、もしくは公務所の命令により他人が看守しているときは他人の財物とみなされます。
不動産については、「財産上の利益」の客体となります。
「財産上の利益」とは、財物以外の財産上の利益の一切のことをいいます。

■実行行為■
1項強盗については、「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取する」ことが強盗の実行行為となり、2項強盗に関しては、「暴行または脅迫を用いて、財産上不法の利益を得、またはこれを他人に得させる」ことが実行行為です。

ここでいう「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければなりません。
暴行・脅迫が相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであるかどうかの判断は、暴行・脅迫の態様、行為者と被害者の性別・年齢・体格・人数、犯行の時刻や場所、犯行時の被害者と行為者の態度、被害者の心理状況や被害状況、行為者の意図などの事情を総合的に考慮して行われます。

「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらず財物を自己または第三者の占有に移す行為のことをいいます。
強盗罪は、暴行・脅迫を手段とする財産罪であるため、暴行・脅迫と財物奪取との間に因果関係がなければなりません。
相手方の反抗が抑圧されている状況で、被害者が知らないうちに財物の占有を移す場合であっても、知らなかったことが暴行・脅迫に基づく限り、「強取」に当たります。
また、強盗罪は、強盗の手段として暴行・脅迫がなされていることが要件となりますので、単なる暴行・脅迫の意思で暴行・脅迫をおこない、その結果相手方が犯行抑圧状態となった後に、財物奪取の意思を生じて財物を奪った場合には、暴行罪または脅迫罪と窃盗罪の併合罪となると考えられます。
ただし、暴行・脅迫の意思で暴行・脅迫を相手方に加え、相手方が反抗抑圧状態となり、その後に財物奪取の意思を生じて、その反抗抑圧状態を継続させる程度の暴行・脅迫を更に加えて財物を奪った場合には、強盗罪の成立が認められます。

「財産上不法な利益を得」とは、「不法」な利益を得ることを意味するものではなく、利益を不法に得ることをいいます。

■主観的要件■
強盗罪の故意は、暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し、財物を強取すること、あるいは暴行脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し、財産上不法の利益を得、または第三者にこれを得させることの認識です。
これに加えて、不法領得の意思も必要だとされています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用・処分する意思」のことです。

以上の要件を充たす場合に、強盗罪が成立することになります。

2.強盗致死傷罪

強盗の機会に犯人が致傷の結果を生じさせた場合には、強盗罪よりも更に重い「強盗致死傷罪」が成立する可能性があります。

強盗致死傷罪は、刑法第240条で次のように規定されています。

強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

■主体■
強盗致死傷罪の主体は「強盗」であり、強盗犯人のことを指します。
既遂・未遂は問いません。

■行為■
強盗致死傷罪の実行行為は、「人を負傷させ」、または「死亡させ」ることです。
「人を負傷させた」とは、他人に傷害を加えることをいい、強盗の手段として暴行・脅迫を相手方に加えた結果、相手方に傷害を生じさせた場合には、強盗致傷罪が成立します。
相手方を負傷させた場合には、結果的加重犯である致傷と、故意に傷害させた場合(強盗傷人罪)を含みます。
また、「人を死亡させた」とは、他人を死亡させたことをいい、強盗の手段としての暴行・脅迫の結果、人を死亡させた場合に強盗致死罪(強盗殺人罪)が成立し、故意に人を殺した場合(強盗殺人罪)も含まれます。

死傷の結果は、強盗の機会におこなわれた行為から生じたものでなければなりません。
強盗の機会に行われた行為から人の死傷の結果が生じたかどうかは、犯意の継続性、強盗行為との時間的・場所的接着性、強盗行為との密接な関連性等を考慮して判断されます。
人の致死傷の結果と、強盗の手段である暴行・脅迫および強盗の機会になされる強盗行為と密接な関連性を有する行為との間には因果関係が必要となります。

■故意■
強盗の機会に人を負傷させた場合には、強盗致傷罪が成立しますが、これは、強盗犯人が人を負傷させる意思はないが、結果的に負傷してしまった場合に成立するものです。
他方、人を負傷させる認識で、負傷させた場合には、強盗傷人罪という罪が成立します。
ただ、強盗傷人罪について刑法第240条前段以外に規定があるわけではないので、当該条項が強盗傷人罪の根拠規定となっています。

また、強盗の機会に人を殺した場合には、強盗致死罪が成立しますが、これについても、強盗犯人が人を殺害する意思はないが、結果的に殺してしまった場合に成立する罪です。
強盗犯人が、人を殺す意思(殺意)をもって人を殺した場合には、強盗殺人罪という罪が成立します。
通常、故意に犯罪を犯した罪のほうが法定刑が重くなるよう定められています。
例えば、同じ人の死という結果を生じさせる殺人罪と傷害致死罪とでは、故意犯である殺人罪のほうが傷害致死罪の法定刑よりも重くなっています。
この点、強盗殺人罪と強盗致死傷罪は、その根拠規定が刑法第240条後段と同じくしており、法定刑も死刑・無期懲役となります。
ただ、両者は、量刑で大きな差を生じさせるものであり、刑事裁判では殺意の有無が争われるケースが少なくありません。

強盗致死や強盗殺人は起訴されると、通常の刑事裁判ではなく裁判員裁判となります。
そのため、早期に刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼し、対応していく必要があるでしょう。

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