淫行条例違反と児童ポルノ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
SNSで知り合った15歳の女子中学生とホテルで性交し、その様子をスマートフォンで撮影したとして、三重県伊賀警察署は、会社員のAさんを淫行条例違反及び児童ポルノ処罰法違反(児童ポルノ製造)の容疑で逮捕しました。
女子中学生の母親が、娘とAさんとの関係を知り、警察に相談したことで事件が発覚しました。
Aさんは、取調べにおいて、「相手が確実に未成年だとは分からなかった。」と述べています。
(フィクションです。)
1.淫行条例違反
各都道府県において、おおむね18歳未満の者とのみだりに性交や性交類似行為を行うことを禁止する内容の条例が制定されています。
三重県は、三重県青少年健全育成条例第23条で、青少年とのみだらな性交等をすることを禁じ、その違反行為に罰則を設けています。
第23条 何人も、青少年に対し、いん行(青少年を威迫し、欺き、又は困惑させる等不当な手段を用いて行う性交又は性交類似行為及び青少年を単に自己の性欲を満足させるための対象として行う性交又は性交類似行為をいう。次条において同じ。)又はわいせつな行為(いたずらに性欲を興奮させ、若しくは刺激し、又は性的な言動により性的羞恥心を害し、若しくは嫌悪の情を催させる行為をいう。次条において同じ。)をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又はこれを見せてはならない。
条例において、「青少年」とは、18歳未満の者をいい、婚姻により成人に達したものとみなされる者は「青少年」から除外されます。
禁止の対象となる行為である「いん行」と「わいせつな行為」については、括弧書きで説明されています。
「いん行」とは、「青少年を威迫し、欺き、又は困惑させる等不当な手段を用いて行う性交又は性交類似行為及び青少年を単に自己の性欲を満足させるための対象として行う性交又は性交類似行為」と定義されています。
福岡県の淫行条例違反事件ではありますが、判例は、淫行条例の規定の趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によって精神的な痛手を受け易く、また、その痛手から回復が困難となりがちである等の事情に鑑み、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであると解しています。
その趣旨に基づいて、条例で禁止される「いん行」は、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為の他、青少年を単に自己の性的欲求を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当であるとしています。(最大判昭60・10・23)
したがって、交際中の場合、少なくとも知り合って相当期間は性交等がない状況が続いた上、性交等に至った場合や、結婚を前提に真剣交際をしていた場合には、「いん行」に該当しない可能性があります。
逆に、SNSなどで知り合い、実際に会った日に性行為を行ったのであれば、上述の「いん行」の定義に該当することが認められる可能性が高いでしょう。
また、「わいせつな行為」については、「いたずらに性欲を興奮させ、若しくは刺激し、又は性的な言動により性的羞恥心を害し、若しくは嫌悪の情を催させる行為」と定義しています。
もっとも、18歳未満の者に対償を供与するなどして性交等をする行為は、児童買春に当たり、より重い罰則(5年以下の懲役又は300万円以下の罰金)が適用されます。
2.児童ポルノに関する罪
Aさんは、相手との性行為の様子をスマートフォンで撮影していましたが、この行為については、児童ポルノ製造の罪に問われる可能性があります。
児童ポルノに関する罪は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に規定されています。
この法律における「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、
①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの、
②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの、
③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの、
をいいます。
「児童」とは、18歳未満の実在する児童をいいます。
児童に、上の①~③の姿態をとらせた上、これを写真撮影等して児童ポルノを製造した場合の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
Aさんは、淫行条例違反及び児童ポルノ製造罪に問われていますが、これらの罪はいずれも故意犯ですので、罪を犯す意思がなければ犯罪は成立しません。
これらの罪において、故意の点で問題となるのが、相手方が18歳未満であることの認識の有無です。
Aさんは、「相手が確実に未成年だとは分からなかった。」と述べていますが、故意は、犯罪事実の発生を確定的なこととして認識・予見している場合(確定的故意と、犯罪事実の確定的な認識・予見はないが、その蓋然性を認識・予見している一定の場合(未必の故意)とがあり、確実に結果(犯罪の実現)が発生するだろうと思っている場合だけでなく、結果が発生する「かもしれない」と思って認容している場合でも故意が認められるのです。
つまり、「相手が確実に18歳未満であるとは分からなかった」のであっても、「確実ではないけど、もしかしたら18歳未満かもしれない。それでも、まあいいか。」と思っていたのであれば、未必の故意が認められることになります。
そのため、相手方の外見や話し方、行為に及ぶまでの当事者間のやり取りから、Aさんが相手方を18歳未満であるとの認識・認容があったことが認められる可能性があります。
逆に、18歳未満との認識・認容がなかったことを立証するだけの客観的証拠がある場合には、それらの証拠を収集し提示し、不起訴や無罪の獲得に向けて活動することが重要です。
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