少年事件と被害弁償、示談

少年事件被害弁償示談といった被害者対応との関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県鈴鹿市の書店内で、女子高生のスカート内を盗撮したとして、三重県鈴鹿警察署は、高校生のAくん(16歳)を逮捕しました。
Aくんは、鈴鹿警察署で取調べを受けた後、Aくんの両親が身元引受人となり、釈放されました。
Aくんの両親は、被害者への被害弁償を行い、何とか許してもらえないかと考えており、被害者対応について弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

少年事件の特徴

少年事件は、成人の刑事事件とは異なる点が幾つかあります。

1.全件送致主義

捜査機関は、少年の被疑事件について、捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合でも家庭裁判所に審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
これを「全件送致主義」といいます。
つまり、少年事件では、成人の刑事事件における起訴猶予や微罪処分のように捜査機関限りで事件を終了させることは認められていないのです。
成人の刑事事件では、犯罪の内容が軽微であったり、被害者との示談が成立している場合には、被疑者が容疑を認めている場合でも、検察官は起訴猶予という形で不起訴処分で事件を処理することがあります。
しかし、少年事件では、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されることになっていますので、被害者との示談が成立したことをもって事件が終了することにはなりません。
ただ、少年の被疑事件について、捜査を遂げた結果、捜査機関が少年に犯罪の嫌疑がないとはんだんした場合には、嫌疑なしや嫌疑不十分として、事件を家庭裁判所に送致しないこともあります。

2.少年審判

少年法は、「少年の健全な育成に期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」と規定しており、少年が行った過去の犯罪や非行に対する応報として少年を処罰するのではなく、少年が将来再び犯罪や非行を行わないように、少年の改善教育を行うことを目的としています。
そのため、少年審判では、非行事実(成人の刑事事件でいうところの公訴事実に当たるもの)及び要保護性の2要素が審理されます。
要保護性というのは、多義的に用いられるものですが、一般的には次の3つの要素から成るものと理解されています。
①再非行の危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を排除できる可能性。
③保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
少年審判では、非行事実と併せて要保護性が審理された上で、少年に対する処分が言い渡されます。
成人の刑事事件では、犯罪の軽重が量刑にも大きく影響しますが、少年事件では、非行事実が比較的軽いものであっても、少年に反省が見えなかったり、事件を起こした原因が解消されていなかったりする場合には、要保護性が高いと判断され、少年院送致という収容処分が決定されることもあります。
また、成人の刑事事件と異なる点としては、審判は、家庭裁判所が審判手続を主導して、少年に関する調査を行い、その結果に基づいて審理を行い処分を言い渡す手続手法をとっていることや、原則として審判が非公開であるといったことが挙げられます。

少年事件における被害者対応

少年事件は、成人の刑事事件のように捜査段階で被害者への被害弁償示談が成立したことをもって起訴猶予で事件が処理されることはありません。
しかしながら、少年事件における被害者対応の如何は、最終的な処分にも影響を及ぼすという点では重要です。
少年審判では、非行事実の他に、要保護性という要素が審理の対象となります。
要保護性が高ければ、少年院送致といった厳しい処分が言い渡される可能性があります。
そのため、審判が行われる日までに少年の要保護性を解消しておく必要があります。
要保護性を解消する活動を「環境調整活動」といいます。
簡単に言うと、環境調整活動は、少年が再び非行をしないために少年の周囲の環境を整える活動です。
少年の周囲の環境と言いましても、家族や学校、職場、交際関係など少年と周りの関係の調整だけにとどまらず、少年本人への働きかけは環境調整活動に必要不可欠です。
少年本人への働きかけとは、事件について内省を深め、被害者がいる事件では、被害者に対する謝罪の気持ちと持てるようにすること、事件の背後にある様々な問題と向き合って、それをどのように対処すべきかについて一定の方向性を示すことなど、多岐に渡ります。
被害者への謝罪や被害弁償示談締結は、その結果自体が重要なのではなく、そのプロセスを通して、少年が被害者の気持ちと向き合い、真摯に謝罪の気持ちを持てるようになること、ひいてはそれが再非行の防止につながるため、少年事件であっても被害者対応は重要となります。

通常、被害者への被害弁償示談交渉は、弁護士を介して行います。
少年事件であっても、弁護士を介して示談交渉を行うのが一般的ですが、弁護士は、ただ示談を成立させることにこだわるのではなく、少年の行為により苦しんでいる被害者の気持ちを少年が理解し、被害者への謝罪の気持ちが持てるように、少年に働きかけます。
被害者への真摯な謝罪が、少年の更生にも不可欠であるため、調査や少年審判でも、被害者に対してどのような対応を行ったかという点が問われます。

以上のように、少年事件であっても、被害者対応は重要な意味を有しており、決して軽視することはできません。
少年事件で被害者対応にお困りであれば、少年事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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