インターネットへの書き込みや動画投稿が刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
最近は、スマートフォンやパソコンを利用して、誰もが簡単にインターネット上に、様々な情報を発信できるようになりました。
しかし、書き込みや動画投稿によって、インターネット上に情報を提供することが、その内容によっては刑事事件化される場合もあるので、インターネットを利用している方は気を付けなければなりません。
不確かな情報や、冗談のつもりで投稿したことが、思いもよらない事件に発展し、警察の捜査を受けることもあるのです。
そこで本日は、刑事事件に強い弁護士が、この様なインターネット犯罪について解説します。
◇名誉毀損罪◇
名誉毀損罪とは、刑法第230条に規定されている犯罪行為で、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損することで、その法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。
「公然と」とは、不特定または多数の者が認識し得る状態を意味します。これは、不特定であれば少人数でよく、多人数であれば特定人であってもよいということですので、インターネット上の誰でもが閲覧できる、掲示板や、SNS、動画投稿サイトがこれに該当するでしょう。
「事実の摘示」とは、人の名誉を低下させるおそれのある具体的事実を摘示することをいいます。
その事実は、必ずしも悪事などとは限らないですし、公知、非公知を問いません。
そして、この事実については、真実であったとしても名誉毀損罪は成立しますが、死者の場合は虚偽であった場合のみとなります。
なお、具体的な事実の適示がなく、単に抽象的判断、抽象的批評を加え、人の名誉を低下させる場合は、侮辱罪となります。
「人の名誉」とは、人の社会的評価を意味します。
~事例~
=デマ情報の公表・拡散=
実際に、昨年東名高速道路で発生した、あおり運転による死亡事故の被告人の職場に関して、謝った情報(被告人とは無関係の建設会社を被告人の勤務先とした内容)を、ネットの掲示板サイトやSNSに投稿し、建設会社の名誉を損壊した事実で、複数人が名誉毀損罪で警察の取調べを受け、検察庁に書類送検されています。
今年にも、常磐道におけるあおり運転の犯人をかくまった女性被疑者(犯人隠避罪で逮捕)に関して、女性被疑者が警察に逮捕される前に、事件とは全く関係のない女性を犯人だと誤った情報(デマ情報)をインターネット上に公表したり、そのデマ情報を、不適切な表現を用いてツイッター等で拡散させた行為についても、刑事告訴が検討されています。
◇業務妨害罪◇
業務妨害罪とは、刑法第233条(偽計業務妨害罪)と刑法第234条(威力業務妨害罪)に規定されている犯罪行為です。
この二つの業務妨害罪は、業務を妨害する方法が異なり、偽計業務妨害罪は偽計を用いて業務を妨害することで、威力業務妨害罪は、威力を用いて業務を妨害することです。
「偽計」とは、人を騙(欺罔)したり、人の不知や錯誤を利用したり、人を誘惑することの他、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を意味します。
「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力を意味します。暴行、脅迫は当然のこと、それに至らないまでも、社会的、経済的地位、権勢を利用した威力等であって「威力」とみなされる可能性が高いです。
業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
フォロワーや閲覧者数を増やすために、過激な画像をインターネット上に投稿しているのをよく目にしますが、投稿の内容によっては業務妨害罪に該当する可能性があります。
特に最近では、アルバイト従業員が、勤務先での不適切動画をネット投稿したことによって、お店の業務に支障が出たとして偽計業務妨害罪や、威力業務妨害罪が適用された例が多くあるので注意しなければなりません。
◇その他◇
上記した二罪以外にも、投稿の内容が他人を脅迫するような内容であった場合は、刑法第222条の「脅迫罪」が適用されたり、別れた交際相手のわいせつ画像を投稿したことによってリベンジポルノ法違反で検挙されたりした方もいますので、インターネットの掲示板やSNSへの書き込みや、画像、動画投稿には十分に注意してください。