死体遺棄罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
三重郡菰野町に住むAさん(28歳)は、自宅の敷地内で発見された息子(9歳)の死体に関し事情を知っていると疑われ、三重県四日市西警察署から任意同行を求められました。そして、Aさんは死体損壊・遺棄罪で逮捕されてしまいました。
Aさんは接見した弁護士に「殺したのは私ではない。」「殺したのは内縁の夫だと思うが、今どこにいるのか分からない。」などと話しています。
(フィクションです。)
◇死体遺棄罪◇
死体遺棄罪は刑法190条に規定されています。
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以上の懲役に処する
「死体」とは、死亡した人の身体をいい、その一部や臓器でもよく、人の形態を備えた死胎も含まれます。
「損壊」とは、物理的に損傷・損壊することをいいます。
「遺棄」とは、通常は、社会通念上の埋葬とは認められない方法で死体などをその現在の場所から他の場所に移して放棄することをいいます。したがって、殺人犯が、死体を単に現場に放置したまま立ち去ったとしても、一般には、殺人罪のほか死体遺棄罪は成立しません。しかし、その死体について葬祭の義務を負う者が、葬祭の意思なく死体を放置してその場所から立ち去った、あるいは放置し続けていた場合は、不作為による遺棄に当たり死体遺棄罪が成立することがあります。
◇死体遺棄事罪で逮捕されると殺人罪も疑われる!◇
死体遺棄罪で逮捕された場合は、直ちに弁護士に弁護活動を依頼して取調べに対するアドバイスを受けべきです。
なぜなら、死体遺棄罪で逮捕され、死体遺棄罪の件で取調べを受けていたとしても、捜査機関としては「殺人にも関与したのではないか?」と疑い、死体遺棄罪の取調べの中で殺人につて根掘り葉掘り聴いてくる可能性があるからです。
もちろん、この場合、捜査機関が死体遺棄に至った経緯、動機などを解明する趣旨で殺人について関する取調べを行うことは許容されるでしょうが、もやは殺人に関する取調べが主となったと認められる場合は、それは死体遺棄罪ではなく殺人罪での身柄拘束ではないか、つまり別件逮捕・勾留ではないかとも疑わなければなりません。
また、仮に、殺人に関する取調べが許容される場合であっても、殺人に関与していないのであれば取調べで絶対に認める供述をしてはいけません。捜査機関は死体遺棄罪に続いて殺人罪での再逮捕も考えており、長期の身柄拘束を受けてしまうばかりか、いわれのない罪まで負わされてしまう可能性(冤罪の可能性)があるからです。
重大、凶悪事案で再逮捕が活用されるということに理解はできます。
20日間の勾留期間では、起訴するに足りるだけの証拠が集まらないということは現実的にあり得るからです。しかし、ときに、被疑者に対する嫌がらせ、精神的な心の揺さぶりから再逮捕を活用しているとしか思えないケースも存在します。20日間の勾留期間が終わった、保釈が認められやっと釈放されるかと思いきや留置場を出たとたん逮捕される、というケースはいくらでも存在します。被疑者・被告人からすれば、長く、辛い留置場生活にやっとお別れできると思いきや、再び、長く、辛い留置場生活に戻されるのですから、その心情は察するに余りあります。しかし、捜査機関側とすれば、そうした被疑者・被告人の心情を利用して再逮捕を活用してくるのです。
こうした事態を避けるためにも、はやい段階から弁護士のアドバイスを受けましょう。