鈴鹿市の放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
前回は、現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪について解説しました。
今回はまず、建造物等以外に放火した場合に適用される法律ついて解説します。
◇建造物等以外放火罪◇
建造物等以外放火罪とは、現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪の何れにも該当しない物に放火し焼損することです。
自動車やバイク、無人の電車、家具、建具類等の家屋の従物が建造物等以外放火罪の対象となり、液体や固体も含まれます。
建造物等以外放火罪は、自己所有の非現住建造物等放火罪と同様に、公共の危険が生じた場合にのみ刑事罰の対象となり、未遂の処罰規定はありません。
また建造物等以外放火罪は、非現住建造物等放火罪と同様に焼損した物が他人所有の物か、自己所有の物かによって法定刑が異なります。
①他人所有の建造物等以外放火罪の場合
他人所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
罰金刑が定められていないので、起訴されて有罪が確定した場合、執行猶予を得れなければ刑務所に服役しなければなりません。
②自己所有の建造物等以外放火罪の場合
自己所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。放火に関する法律で唯一罰金刑が定められている非常に軽い罰則規定となっています。
◇平成に起こった大規模な放火事件◇
~歌舞伎町ビル火災事件(未解決)~
平成13年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルにおいて発生した火災で、44人の方が亡くなりました。
この火災は、放火によるものとして捜査されているが、未だに犯人は捕まっていません。
また火災のあったビルの防火扉の周辺に物が置かれたりして、避難経路が不十分だったためにここまでの死者を出したとして、ビルのオーナーらに対して、業務上過失致死罪で有罪判決が確定しています。
~武富士弘前支店強盗殺人・放火事件~
平成13年5月8日、青森県弘前市の消費者金融に強盗目的で押し入った男が、要求を断られたことから店内に火を放った放火・殺人事件です。
事件の数か月後に逮捕された犯人は、死刑判決が確定し、すでに死刑が執行されています。
~大阪個室ビデオ店放火事件~
平成20年10月1日、大阪市難波の個室ビデオ店において、客の男性が個室の中で火を放ち、個室ビデオ店が全焼し、16名が死亡した放火事件です。
警察に逮捕された犯人は、その後死刑判決が確定しましたが、その後、別の個室から出火した可能性があるとして弁護団が再審請求をしていましたが、先日、最高裁判所は請求を棄却しました。
~さいたま連続放火事件~
平成16年12月中旬に起こった連続放火事件です。埼玉県内のディスカウント店や、商業施設が連続して放火され、そのうち一店舗では、死者3名を出す大惨事となりました。
逮捕された女性被告人は、裁判において刑事責任を争いましたが、裁判所は被告人の刑事責任を認め無期懲役刑が確定しています。