チケットの不正販売について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
※※チケットを不正に転売をすれば罰せられます。※※
今年はラグビーのワールドカップが、そして来年は東京オリンピックが日本で開催されますが、これらのチケットを巡って、海外のチケット転売サイトのトラブルが多発しており、最近、消費者庁が注意を呼び掛けています。
さて、みなさんは今年の6月に、チケットの不正転売を禁止する法律「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)」が施行されたのをご存じでしょうか?
この法律が施行されるまでは、各都道府県の迷惑防止条例によって、不正なチケット転売が取り締まられていましたが、この条例で取り締まりの対象となるのは、公共の場所や乗り物で取り引きが行われた場合だけで、インターネット上での取り引きまでは、取り締まりの対象となっていませんでした。そのため、正規販売価格の何倍もの高額で取り引きされることがあり、人気のコンサートやスポーツイベントのチケットは何十倍もの値段で取り引きされることもあったようです。
こういった高額転売によって利益を得ることを目的にした、人気チケットの買い占め行為が横行していたことから、正規ルートでのチケットの購入が困難になり、集客にも影響を及ぼすなど、主催者側に大きな不利益をもたらすだけでなく、競技や文化の振興の妨げになっていたとされています。
その様な状況を打開することを目的に施行されたのがチケット不正転売禁止法です。
◇チケット不正転売禁止法◇
~禁止行為~
この法律で禁止されているのは
・特定興行入場券(チケット)の不正転売すること
・特定興行入場券(チケット)の不正転売を目的として、特定興行入場券(チケット)を譲り受けること
です。
~特定興行入場券~
販売されている全てのコンサートや、舞台、スポーツイベントのチケットがチケット不正転売禁止法の対象となるわけではありません。
チケット不正転売禁止法の対象となるのは、特定興行入場券といわれるもので、この特定興行入場券とは
①販売の際に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止される旨を明示し、その旨がチケットに記載されていること
②興行の日時、場所、座席(または入場資格者)が指定されていること
③例えば、在籍が指定されている場合、購入者の使命と連絡先を確認する措置が講じられており、その旨がチケットに明記されていること
の全てに該当する、不特定または多数の者に販売される芸術、芸能やスポーツイベント等のチケットです。
~特定興行入場券(チケット)の不正転売~
この法律でいう「不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものです。
「業として」とは、利益を得ることを目的として、反復継続して行う転売だという解釈でしょう。
例えば、一つのコンサートや、スポーツ観戦のチケットを複数枚正規購入して、そのチケットを購入後すぐに、定価以上の値段で転売する場合などは「業として不正転売している」と認定される可能性が高いでしょう。
~不正転売を目的とした特定興行入場券(チケット)の譲受け~
実際には、購入したチケットを不正転売していなくても、不正転売する目的でチケットを購入しただけで違反となる可能性があるので注意しなければなりません。
~罰則~
これらの違反行為の有罪が確定すれば、違反者は「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は併科」が科せられます。