盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇事件◇
会社員のAさんは、津市内にある商業施設のエスカレーターにおいて、スマートフォンを利用して、女性のスカートの中を盗撮する事件を繰り返していました。
先日も、盗撮をする目的で施設に入ったのですが、エスカレーターに向かって歩いていたところを、施設の警備員に声をかけられて、事務所に連れていかれました。
そこで、施設の責任者から「盗撮されたと複数人から申告があり、監視カメラにも盗撮している状況が写っていたので声をかけさせてもらいました。警察に通報しています。」と告げられました。
そして通報で駆け付けた、三重県津警察署の警察官によって警察署に連行されたAさんは、スマートフォンを押収されました。
(フィクションです)
◇三重県津警察署◇
【所在地】〒514-0033 三重県津市丸之内22番1号
【電話番号】059-213-0110
三重県津警察署は、津市の北部を管轄する警察署です。
三重県津警察署は、三重県の県庁所在地である津市の中心部を管轄する大規模な警察署です。
平成30年度の刑法犯認知件数は1500件を超えており、その中でも窃盗事件が1000件を超えています。
(三重県警察のホームページを参考)
◇三重県の迷惑防止条例◇
三重県では、盗撮行為を「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「迷惑防止条例」とする。)」で禁止しています。
この迷惑防止条例で禁止されている盗撮行為は以下のとおりです。
第2条2項2号
公共の場所又は公共の乗物においての盗撮行為
第2条3項
公衆浴場、便所、公衆が利用できる更衣室、その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における盗撮行為
なお、盗撮行為に関する罰則については「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(第15条1項1号)」ですが、常習として盗撮行為を行った場合の罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第15条6項)」と厳罰化されています。
なお、ここでいう「常習として」とは明確な基準はあるわけではありませんが、多数の余罪が立件された場合や、過去に何度も盗撮行為で刑事罰を受けている場合は「常習として違反している」と判断されて、厳しい刑事罰が科せられる可能性があります。
◇事件を検討◇
それでは、Aさんの事件を検討します。
盗撮事件は、被害者や目撃者によって現行犯で捕まって立件されるケースがほとんどです。
Aさんのような過去の盗撮行為を立件するのは、盗撮した画像が発見されない限り、証拠がないので、立件することは困難だと思われます。
また、仮に盗撮画像を捜査機関に押収されたとしても、その画像から被害者を特定することが困難でしょう。
ただ今回の事件では
①被害者が既に被害を訴えている。
②施設の監視カメラに、Aさんが盗撮している状況が写っている。
ので、もし警察に押収されたAさんのスマートフォンに、過去の盗撮画像が保存されていれば、Aさんの行為は、上記した「迷惑防止条例第2条2項2号」の適用を受けるでしょう。
逆に、警察に押収されたAさんのスマートフォンに、過去の盗撮画像が保存されていなかった場合は、実際に盗撮したかどうかを立証するのが困難になるため、上記した「迷惑防止条例第2条2項2号」の適用が困難になるのではないでしょうか。
そこでAさんの行為に適用される可能性があるのが
公共の場所や乗り物においての卑猥な言動(迷惑防止条例第2条2項3号)
です。
ここでいう「卑猥な言動」とは、盗撮や痴漢行為に該当しない、人を著しく羞恥させたり、人に不安を覚えさせる言動を意味します。
また、建造物侵入罪(刑法第130条)が適用されるおそれもあります。
迷惑防止条例第2条2項3号が適用された場合の罰則規定は、上記した盗撮行為と同じ「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、建造物侵入罪が適用された場合は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」となります。