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痴漢の否認事件

2021-08-17

痴漢否認事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、通勤に電車を利用していました。
いつものように通勤ラッシュの時間帯に乗車したAさんでしたが、三重県四日市市にある駅に到着し降車すると、後方から見知らぬ女性に声をかけられました。
女性から、「痴漢しましたよね。」と言われたAさんは、突然のことで大変驚きましたが身に覚えがなかったので、「いいえ、そんなことしていませんよ。勘違いじゃないですか。」と答えました。
女性が駅員室に来るよう求められたため、そのまま駅員室で話をすることになりました。
後に、三重県四日市南警察署でも話を聞かれることになったAさんは、今後どのように対応すべきか不安でたまりません。
(フィクションです)

痴漢の否認事件

痴漢否認事件には、大きく分けて2種類のケースがあります。
まず1つめは、上の事例におけるAのように、そもそも痴漢行為をやってはいないと主張するケースです。
つまり、犯人性を否定する場合です。
もう1つは、相手方の身体に触れてしまったこと(もしくは、触れてしまったかもしれないこと)は認めるものの、それはわざとやったのではないと主張する場合があります。
これは、故意を否認するもので、例えば、電車やバスが急に揺れ、体勢が崩れた際に手が相手の身体に当たってしまったとするようなケースです。
これらのどちらの場合でも、罪が成立しない、痴漢の場合であれば、通常は迷惑防止条例違反、場合によっては、強制わいせつ罪という罪が成立しない旨を主張することになります。

否認の弁護活動

刑事事件の被疑者として刑事手続に付せられてしまった場合には、適切に対応するために、弁護士に相談することは重要です。
特に、容疑を否認する場合には、無実や無罪を証明するために、弁護士から専門的なアドバイスを受けることは非常に重要です。

(1)取調べ対応

刑事事件において最も重視されるのは、物的証拠等の客観的な証拠です。
例えば、防犯カメラの映像です。
しかしながら、痴漢行為を収めた映像があることは稀です。
痴漢事件では、電車やバスといった密室空間で行われることが多く、被害者の供述や被疑者・被告人の供述が重要な証拠となります。
そのため、取調べにおいて、自己に不利な供述調書が作成されてしまわないようにする必要があります。
一度作成されてしまった供述調書を後から「やっぱりなかったことにしてほしい。」と言って撤回することは容易ではありません。
取調室で取調官を前にした取調べを受けるのは、日常生活では体験しないことですので、大変緊張するものですので、冷静に受け答えすることも難しいでしょう。
そのような状況下では、取調官の誘導に乗って自己に不利な供述をしてしまう可能性もありますし、意図やニュアンスが相手にうまく伝わらず、結果、相手の思うような形での供述調書が作成されてしまうおそれもあります。
そのようなことがないよう、弁護士から取調べ対応についてしっかりとアドバイスを受けておくことはとても大切です。
また、供述の信用性に関しても、供述の矛盾や変遷が指摘されるおそれがあるため、否認事件においては、基本的に取調べで黙秘することも一つの手段です。
黙秘権は、被疑者・被告人に保障されている権利ですので、無理に取調べで供述する必要はありません。

(2)無実・無罪の立証

痴漢事件では、被害者や(目撃者)の証言、そして被疑者・被告人の証言が主な証拠となります。
捜査段階では、被疑者や弁護人は、捜査機関が所持する証拠を見ることができません。
ですので、どのような証拠が捜査機関の手元にあるのかを予想しながら対応していかなければなりません。
弁護士は、被疑者との接見や連絡をこまめに行い、取調べでどのようなことを聞かれたのかを聞き出し、捜査状況を把握します。
基本的には、この段階では、取調べで不利な供述がとられないよう取調べ対応に関するアドバイスをすることが最も重要な弁護活動となりますが、事件現場に赴き、事件当時の状況を把握しておくことも、無実・無罪を立証するためには欠かせません。
最終的に起訴・不起訴を判断するのは検察官となりますので、検察官に対して、不起訴(嫌疑なし、嫌疑不十分)として事件を処理するよう意見書を提出するなどしてこちら側の意見をしかりと主張します。

起訴後には、弁護側は、検察官が公判で提出する予定の証拠を見ることができますので、どのような証拠に基づいて犯罪の成立を証明しようとしているのかが分かります。
弁護人は、そのような証拠に、有罪を支えるだけの証明力と信用性があるかどうかを検討します。
そして、被告人に有利な証拠を見つけ出し、無罪を主張していきます。
例えば、被害者の供述に矛盾点や変遷がみられることから、その信用性が疑われることを主張したり、現場検証の結果、被告人とは別の人物が痴漢を行った可能性が高いことを主張することがあります。
また、公判では、被告人質問が行われますので、しっかりと質疑応答ができるよう被告人と綿密に打ち合わせを行う必要があります。

このような弁護活動は、刑事事件に豊富な経験を持つ弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
痴漢否認事件で対応にお困りの方は、弊所の弁護士に一度ご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

名誉毀損罪と侮辱罪

2021-08-10

名誉毀損罪と侮辱罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
インターネットの掲示板に、「地元のアイドルとして活躍しているYは、整形をしている。中学の卒アルの写真と比べたらバレバレ。」と書き込み、Yの卒業写真とみられる写真を一緒に投稿したり、「中学時代は男をとっかえひっかえしてた。清純系とかウソ。」などといった内容の書き込みが多数寄せられていることに対して、Yさんは所属事務所に相談した上で、三重県津南警察署に被害届を出しました。
後日、同警察署は、この事件の被疑者としてAさんに話が聞きたいと出頭を要請しました。
Aさんは、どう対応すべきか困っています。
(フィクションです)

他人を誹謗中傷するような内容をインターネットの掲示板やSNSに書き込んだ場合、名誉毀損罪または侮辱罪が成立する可能性があります。
以下、各犯罪について、そして両者の違いについて解説します。

名誉毀損罪

第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

◇客体◇
名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
「人」には、自然人の他に、法人、法人格のない団体も含まれます。
「名誉」とは、人に対する社会一般の評価を意味します。
本罪における「名誉」には、人の倫理的価値、政治的・学問的・芸術的能力、容貌、健康、身分、家柄など、およそ社会において価値があるとされるものが含まれますが、人の経済的な支払能力や支払意思に対する社会的評価は含まれません。

◇行為◇
名誉毀損罪の行為は、「公然と事実を適示し」て「人の名誉を毀損」することです。

「公然」とは、不特定または多数人が認識しうる状態のことをいいます。
不特定については、相手方が特殊の関係によって限定された者でない場合をいい、公道の通行人や公開の広場におけ聴衆などがこれに当たります。
多数人とは、数字によって何人以上と限定することはできませんが、単に数名では足りず、相当の員数である必要があります。
また、名誉侵害表現の相手方が特定少数の場合であっても、伝播して不特定多数の者が認識しうる可能性を含む場合にも公然性が認められます。

指摘される「事実」は、人の社会的評価を害するにたりる事実でなければなりません。
この「事実」は、真実か否か、公知か否か、過去のものが否かは問いません。

「適示」とは、具体的に人の社会的評価を低下させるにたりる事実を告げることをいいます。
事実を適示する方法に制限はなく、口頭、文書、写真などであっても構いません。

「名誉を毀損」するとは、人の社会的評価を低下させるおそれのある状態を作ることをいい、現実に社会的地位が傷つけられたことまで必要とされません。

◇故意◇
本罪の故意は、公然と事実を適示して人の名誉を毀損することの認識・認容です。

◇違法性の特則◇
刑法第230条の2において、公共の利害に関する場合の特則規定があり、一定の場合に違法性が阻却されます。

 

侮辱罪

刑法第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

◇客体◇
侮辱罪の客体は、名誉毀損罪のそれと同じく「人の名誉」です。

◇行為◇
侮辱罪の行為は、「公然と人を侮辱する」ことです。
侮辱する」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。
名誉毀損罪とは異なり、具体的事実を適示することなく、人の社会的評価を低下させるような抽象的判断、批判を表現することで足ります。
具体的事実を適示した場合は、名誉毀損罪が成立することになります。

◇故意◇
事実を適示することなく、公然と人を侮辱することの認識・認容です。

以上の様に、名誉毀損罪と侮辱罪は、具体的事実の適示の有無によって区別され、択一関係にあるため、同一人に対する同一行為の場合、名誉毀損罪が成立する場合には侮辱罪は成立しません。

上記ケースの場合、誰でも閲覧可能なインターネットの掲示板に、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みをしています。
ここで問題となるのが、書き込みの内容が「具体的な事実を示し」ているか否かです。
「中学時代は男をとっかえひっかえしてた。清純系とかウソ。」という書き込みについては、具体的な事実ではなく抽象的な評価を示して、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みであるので、これについては侮辱罪にとどまるでしょう。
しかし、整形をしていると指摘し、中学校時代の個人写真も一緒に投稿している場合、具体的な事実を示して、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みをしていると考えられ、名誉毀損罪が成立するでしょう。

名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、侮辱罪は拘留又は科料と、その刑罰においても異なります。
しかし、いずれの罪も、被害者らによる告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪であるため、事件を穏便に解決するためには、被害者との示談を成立させることが重要です。

インターネットで他人を誹謗中傷し、名誉毀損罪・侮辱罪に問われており、対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

嘱託殺人で逮捕

2021-08-06

嘱託殺人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
医師であるAさんは、SNSを通じて末期がんのVさんと知り合いました。
Vさんは、治療の痛みに耐えるのが辛く、Aさんに殺してほしいと依頼しました。
Aさんは、Vさんの自宅を訪れ、薬物を投与し、Aさんを殺害しました。
Vさんの家族が、Vさん宅を訪れたことでVさんの死が発覚しました。
Vさん宅からは、自殺をほのめかす遺書が見つかりました。
Vさんの身体からは、普段投与されていない薬物が見つかり、捜査の結果、Aさんによる犯行であることがわかりました。
三重県桑名警察署は、嘱託殺人の容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです)

嘱託殺人罪

嘱託殺人罪は、刑法202条に次のように規定されています。

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

刑法202条の前段は、自殺関与罪について、後段は同意殺人罪についての規定です。
本人の依頼のより、又は同意のもとに犯す殺人です。
被害者の依頼や同意がある点で普通殺人より刑が軽減されています。

◇客体◇

同意殺人の客体は、「人」です。
本客体であるためには、殺人の意味を理解し、死について自由な意思決定能力を有する者であることが必要となります。

◇行為◇

同意殺人の実行行為は、「嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺す」ことです。
ここでいう「嘱託」とは、被殺者である人から、その殺害を依頼されてこれに応じることをいいます。
また、「承諾」とは、被殺者である人から、殺害されることについての同意を得ることをいいます。

嘱託」「承諾」は、被殺者本人の意思によるものであることが必要で、通常の弁識能力を有する者の自由かつ真意に基づいてなされたことが求められます。
そのため、欺罔や威迫に基づく嘱託・承諾は無効となり、殺人罪を構成することになります。

◇故意◇

同意殺人の故意は、殺人の事実および嘱託・承諾の存在を認識することです。
この点、嘱託・承諾がないのにあると誤信して殺した場合には、刑法38条2項により同意殺人が成立します。
嘱託・承諾があるのにないと誤認して殺した場合、刑法38条2項を適用することはできませんが、重い罪を犯す意思で軽い罪を犯したために同意殺人が成立するとする立場が通説となっています。
被殺者が自殺意思を有しているにすぎない場合は、行為者と被殺者との間には、嘱託・承諾の関係がないため、殺人が成立します。
また、心中の1人が死亡し他方が未遂にとどまった場合、自殺関与罪若しくは同意殺人罪が成立します。

安楽死をどう考えるか

人や動物に苦痛を与えずに死に至らせることを「安楽死」といいます。
安楽死には、死期を迎えてその苦痛を緩和するだけのものや、死に至る苦痛を緩和するためにいくらか死期を早めてしまうもの、生存を延長させるためだけの治療を停止するなども含まれますが、苦痛の甚だしい死期の迫った人に対し、その苦痛を除去するためにその者からの依頼を受けて、積極的に死期を早める措置をとる場合の安楽死については、違法性が阻却されるのか否かが問題となります。

(1)行為者が医師以外である場合

医師でない者が行った安楽死の場合、通常は嘱託殺人罪が成立するものと考えられます。
過去の判決では、安楽死が違法性を阻却するための要件を次のように挙げています。
①病者が現代医学の知識と技術からみて不知の病に冒され、しかもその死が目前に迫っていること。
②病者の苦痛が甚しく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものなること。
③もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと。
④病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承諾があること。
⑤医師の手によることを原則とし、これにより得ない場合には医師により得ない首肯するに足りる特別な事情があること。
⑥その方法が倫理的にも妥当なものとして認容しうるものであること。
これらの要件がすべて満たされるのでなければ、安楽死としてその行為の違法性までも否定しうるものではない、としています。(名古屋高裁判決昭和37年12月22日)

上の要件から、医師以外の者による安楽死は、その行為の違法性は阻却されることは難しいと言えます。

(2)行為者が医師である場合

それでは、医師により積極的に安楽死を行う行為については、どのように考えられるのでしょうか。

医師による安楽死が違法性を阻却する要件には、
①患者が堪えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること。
②患者は死が避けられず、その死期が迫っていること。
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと。
④生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること。
が挙げられます。

上の事例では、Vさんは末期がんで、治療による痛みに耐えきれず、SNSで知り合った医師のAさんに殺人を依頼しています。
Aさんは医師ですが、Vさんの主治医ではなく、上の違法性が阻却される要件すべてを満たしていたと認められるのは、簡単ではないでしょう。

嘱託殺人逮捕されてお困りであれば、すぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
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少年事件で不処分を獲得

2021-08-03

少年事件不処分となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県四日市西警察署は、迷惑防止条例違反(盗撮)の容疑で高校生3年生のAくんを逮捕しました。
Aくんは、逮捕当日に釈放されましたが、今後どのような流れとなるのか、いかなる処分を受けることになるのか心配でたまりません。
Aくんは母親とともに少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、調査官による調査を行った上で、審判を開くかどうかを決定します。
少年法では、審判を開始するか否かは調査の結果判断するものとされていますが、観護措置がとられている事件については、家庭裁判所の調査官に対する調査命令と審判開始決定が同時になされ、審判期日が指定されるのが実務上の運営です。
審判では、人定質問、黙秘権の告知、非行事実の告知とそれに対する少年・付添人の陳述の後、非行事実の審理、要保護性の審理が行われ、調査官・付添人の処遇意見の陳述および少年の意見陳述を経て、決定が言い渡されます。

家庭裁判所が行う決定には、終局決定と中間決定とがあります。
終局決定は、少年の最終的な処分を決する決定であり、中間決定は、終局決定の前の中間的な措置としてなされる決定です。
終局決定には、審判不開始、不処分、保護処分、検察官送致、都道府県知事または児童相談所長送致の5種類があります。
また、中間決定には、試験観察決定などがあります。

今回は、終局決定の1つである「不処分」について説明します。

不処分とは

家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、または保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければなりません。
この保護処分に付さないとする決定を不処分決定といいます。

不処分決定には、保護処分に付することができない場合の不処分と保護処分に付する必要がない場合の不処分の2種類があります。

①保護処分に付することができない場合の不処分決定
法律上または事実上、保護処分に付することができない場合の不処分決定で、次の場合になされます。
・非行事実の存在が認められない場合。
少年に心神喪失、死亡、所在不明、疾病、海外居住といった事情が生じた場合。
・審判が適法であるための条件を欠く場合。

②保護処分に付する必要がない場合の不処分決定
要保護性が存在しない、もしくは小さくなっているために保護処分に付する必要がなく、児童福祉法上の措置や刑事処分の必要もない場合にされる不処分決定です。
調査・審判の過程で、少年の周囲の環境が調整され、要保護性が解消し、再び少年が非行に陥る危険性がなくなった場合、別件で環境調整が行われていたり、保護処分に付されているために本件では特に処分をする必要がないと認められる場合、非行事実がきわめて軽微な場合などがあげられます。

審判で不処分が言い渡されると、観護措置を取られている少年は審判終了後に帰宅することになります。
不処分の場合、保護観察のように審判後も定期的に保護観察所の指導監督を受けることはありません。

不処分を目指す場合には、審判までに要保護性が解消しており保護処分に付する必要がないと裁判官に認められることが必要となります。
要保護性解消に向けて環境調整活動は、家庭裁判所、学校・職場、少年本人や家族と協力しながら行われるもので、少年と保護者のみで行うことは困難です。
弁護士は、捜査段階から弁護人として、家庭裁判所に送致された後は付添人として、関係者らと協力しつつ、少年の更生に適した環境づくりを支援します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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覚せい剤取締法違反で即決裁判手続

2021-07-30

即決裁判手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県伊賀警察署は、三重県伊賀市に住む自営業のAさんを覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めていますが、身体拘束が長期化すると自身が経営する店への影響が大きくなることを心配しており、どうにか早期に釈放とならないかと考えています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻も、早期釈放の可能性について弁護士に聞いています。
(フィクションです。)

覚せい剤取締法違反事件において、逮捕後に勾留となる可能性は非常に高いと言えます。
覚せい剤の入手経路を明らかにし、売人などの関係者との接触を防ぐためにも、覚せい剤などの薬物事犯の被疑者の身柄を確保しつつ捜査を継続する必要があるからです。
また、覚せい剤取締法違反事件では、傷害事件や盗撮事件といった事件とは異なり、被害者が存在しません。
そのため、被害者との示談によって起訴猶予となることは見込めません。

覚せい剤取締法違反事件では、初犯であり、自己使用目的での少量の所持などであれば、即決裁判手続の対象となり得るでしょう。

即決裁判手続とは

通常の刑事裁判は、冒頭手続に始まり、証拠調べ手続を経て、当事者の最終の意見陳述を行い、終結して判決が言い渡されます。
このような通常の公判手続を簡略化したものに、「即決裁判手続」というものがあります。
即決裁判手続とは、事案が明白であり、軽微で争いがなく、執行猶予が見込まれる事件について、速やかに公判期日を指定して相当な方法により審理を行い、原則として即日に執行猶予判決を言い渡す手続です。

即決裁判手続の要件は、

①事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれるなど、即決裁判手続で審理するのが相当と認められる事件であること。

②死刑、無期、短期1年以上の懲役または禁錮にあたる罪ではないこと。

③被疑者の書面による同意があること。

④被疑者に弁護人があるときは、弁護人の書面による同意があるか、少なくとも意見を留保していること。

の4つです。
これらの要件を満たす場合に、検察官は即決裁判手続の申立てを行います。

即決裁判手続の特徴のひとつに、手続の迅速性があげられます。
即決裁判手続は、起訴からできるだけ早い時期に公判期日が指定され、原則として1回の審理で即日執行猶予判決を言い渡されます。
また、即決裁判手続では、必ず執行猶予判決となることも大きな特徴です。
被告人としては、起訴後速やかに公判が開かれ、執行猶予判決が言い渡されますので、捜査段階から身体拘束を受けている場合には、早期の釈放というメリットがあります。

他方、手続の迅速性と関連して、即決裁判手続では、通常の刑事裁判における証拠調べの方法が大幅に緩和されています。
また、即決裁判手続による審理でなされた判決については、事実誤認を理由とする控訴・上告は認められないという重大な効果が生じてしまう点に留意が必要です。

即決裁判手続には、メリット・デメリットがありますので、事前に弁護士をよく相談し、捜査段階で検察官に即決裁判の申立てをするよう働きかけるべきか否かを検討する必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事犯を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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則竹弁護士が取材を受けコメントが東京新聞に掲載されました

2021-07-29

密漁について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の代表弁護士則竹理宇が取材を受け、コメントが7月15日発行の東京新聞に掲載されました。

潮干狩り感覚の密漁で摘発されるケースが多発

これからの季節、海でのレジャーに出かける方も多いかと思いますが、海に生息する魚介類をむやみに採って持ち帰ると「密漁」となり、漁業法や、各都道府県が定める漁業調整規則に違反する可能性があるので注意が必要です。
中には、潮干狩り感覚で罪の意識がないままに禁止場所で貝類を採ってしまい、密漁として摘発を受けている方もいるようなので十分にお気をつけください。
また実際に各地でこういった事件の摘発が多発しており、海上保安庁等に検挙されると、管轄の検察庁に書類送検されて、刑事罰が科せられる可能性もあります
新聞記事には、こういった「密漁」に関して、漁業協同組合への取材内容や、専門家の意見を掲載し注意を呼び掛けています。

則竹弁護士のコメント

こういった密漁事件に巻き込まれないためにどうすればいいのかについて、則竹弁護士は「管轄の漁協に確認を取ってもらうのが確実だが、それが難しければ、人がいない場所では特に採取や立ち入りを禁止した看板などがないかチェックする。潮干狩り場以外では採ることを避けるのが賢明だ。」とコメントしています。

東京新聞(7月15日発行)の記事

公然わいせつで現行犯逮捕

2021-07-27

公然わいせつ現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、三重県度会郡度会町の公園で、酒に酔って下半身を露出していたところを通行人に目撃され、駆け付けた三重県伊勢警察署の警察官に公然わいせつの容疑で現行犯逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、会社には体調不良で休むと伝えましたが、今後どのように対応すればよいのか分からず、早期釈放に向けて動いてほしいと刑事事件専門弁護士に依頼しました。
(フィクションです。)

公然わいせつ罪について

公然わいせつ罪は、刑法第174条において次のように規定されています。

公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

つまり、公然わいせつ罪とは、「公然と」「わいせつな行為」をする犯罪のことをいいます。

「公然と」とは、わいせつな行為を不特定又は多数の人が認識できる状態を意味します。
認識できる状態であればよく、実際に認識されることまで必要とされません。
そのため、実際に誰かに目撃されていなくても、公共の場でわいせつな行為を行っていた場合には、通行人などがわいせつな行為を目撃し得る状態であったと言え、「公然と」わいせつな行為を行ったことになります。

また、公然わいせつ罪で言う「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」をいいます。
わいせつ性の判断は、一般社会の良識・社会通念を基準として行われます。

公然わいせつ罪の保護法益(法律によって守られる利益)は、性秩序ないし健全な性的風俗と伝統的に考えられています。
そのため、厳密には、目撃者は公然わいせつ罪の被害者とは言えませんので、被害者との示談をもってして事件を終了させることにはなりません。
ただ、目撃者は、見たくもないものを見せられ、精神的損害を被っているとも言えるため、目撃者への被害弁償や示談を成立させることで、被疑者の反省を示すひとつの要素となる得るでしょう。

公然わいせつ罪で逮捕されたら

公然わいせつ事件の多くは、目撃者による通報で事件が捜査機関に発覚しています。
通報を受けて駆け付けた警察官が、現場付近をパトロールしているときに、犯人と思われる人物を発見し、現行犯逮捕するといったケースが多いようです。
現行犯逮捕された場合、逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放する、もしくは、検察官に送致します。
前科前歴もなく、容疑を素直に認めている場合には、警察段階で釈放される可能性が高いでしょう。
ただ、前科前歴があったり、他にも余罪がある場合や犯行態様が悪質である場合には、検察官に送致され、勾留請求がされることもあります。
検察官の勾留請求を受けて、裁判官は被疑者を勾留するかどうかを判断します。
裁判官が勾留を決定すれば、被疑者は、検察官が勾留を請求した日から原則10日間身柄を拘束されることになります。
勾留となれば、その期間中は会社や学校に行くことができませんので、最悪の場合、懲戒解雇や退学といった多大な不利益を被ることになります。
ですので、早期に弁護士に相談・依頼し、身柄解放に向けた活動を行ってもらい、早期釈放を目指しましょう。

また、できる限り寛大な処分となるよう検察官に働きかけます。
先述のように、目撃者は厳密には被害者ではありませんが、被疑者の身勝手な行為で精神的な被害を被ったことに対して被害弁償を行い、示談を締結することも被疑者の反省を示す手段のひとつと言えますので、弁護士を介して、目撃者との示談交渉を行うことも重要です。
目撃者との示談が困難な場合には、贖罪寄附を行うことも検討されるでしょう。

公然わいせつ逮捕された場合には、刑事事件に強い弁護士に相談し、早期釈放や寛大な処分を目指しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

強盗殺人で逮捕

2021-07-23

強盗殺人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県四日市北警察署は、三重県四日市市の駐車場で、男性に暴行を加え、財布などを奪い、男性を死亡させたとして、市内に住むAさんを強盗殺人の疑いで逮捕しました。
調べに対し、Aさんは、「口論になり男性を殴ったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件について詳しいことが分からず不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)

強盗殺人罪とは

まず、強盗罪とはどのような犯罪であるのかについてみていきましょう。

1.強盗罪

刑法第236条は、強盗罪について次のように規定しています。

1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

強盗罪は、
①暴行または脅迫を用いて、
②他人の財物を強取したこと、あるいは、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
を構成要件とする罪です。

■客体■
強盗罪の客体は、「他人の財物」と「財産上の利益」です。
「他人の財物」は、他人の占有する他人の財物を意味し、自分の財物でも、他人が占有している、もしくは公務所の命令により他人が看守しているときは他人の財物とみなされます。
不動産については、「財産上の利益」の客体となります。
「財産上の利益」とは、財物以外の財産上の利益の一切のことをいいます。

■実行行為■
1項強盗については、「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取する」ことが強盗の実行行為となり、2項強盗に関しては、「暴行または脅迫を用いて、財産上不法の利益を得、またはこれを他人に得させる」ことが実行行為です。

ここでいう「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければなりません。
暴行・脅迫が相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであるかどうかの判断は、暴行・脅迫の態様、行為者と被害者の性別・年齢・体格・人数、犯行の時刻や場所、犯行時の被害者と行為者の態度、被害者の心理状況や被害状況、行為者の意図などの事情を総合的に考慮して行われます。

「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらず財物を自己または第三者の占有に移す行為のことをいいます。
強盗罪は、暴行・脅迫を手段とする財産罪であるため、暴行・脅迫と財物奪取との間に因果関係がなければなりません。
相手方の反抗が抑圧されている状況で、被害者が知らないうちに財物の占有を移す場合であっても、知らなかったことが暴行・脅迫に基づく限り、「強取」に当たります。
また、強盗罪は、強盗の手段として暴行・脅迫がなされていることが要件となりますので、単なる暴行・脅迫の意思で暴行・脅迫をおこない、その結果相手方が犯行抑圧状態となった後に、財物奪取の意思を生じて財物を奪った場合には、暴行罪または脅迫罪と窃盗罪の併合罪となると考えられます。
ただし、暴行・脅迫の意思で暴行・脅迫を相手方に加え、相手方が反抗抑圧状態となり、その後に財物奪取の意思を生じて、その反抗抑圧状態を継続させる程度の暴行・脅迫を更に加えて財物を奪った場合には、強盗罪の成立が認められます。

「財産上不法な利益を得」とは、「不法」な利益を得ることを意味するものではなく、利益を不法に得ることをいいます。

■主観的要件■
強盗罪の故意は、暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し、財物を強取すること、あるいは暴行脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し、財産上不法の利益を得、または第三者にこれを得させることの認識です。
これに加えて、不法領得の意思も必要だとされています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用・処分する意思」のことです。

以上の要件を充たす場合に、強盗罪が成立することになります。

2.強盗致死傷罪

強盗の機会に犯人が致傷の結果を生じさせた場合には、強盗罪よりも更に重い「強盗致死傷罪」が成立する可能性があります。

強盗致死傷罪は、刑法第240条で次のように規定されています。

強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

■主体■
強盗致死傷罪の主体は「強盗」であり、強盗犯人のことを指します。
既遂・未遂は問いません。

■行為■
強盗致死傷罪の実行行為は、「人を負傷させ」、または「死亡させ」ることです。
「人を負傷させた」とは、他人に傷害を加えることをいい、強盗の手段として暴行・脅迫を相手方に加えた結果、相手方に傷害を生じさせた場合には、強盗致傷罪が成立します。
相手方を負傷させた場合には、結果的加重犯である致傷と、故意に傷害させた場合(強盗傷人罪)を含みます。
また、「人を死亡させた」とは、他人を死亡させたことをいい、強盗の手段としての暴行・脅迫の結果、人を死亡させた場合に強盗致死罪(強盗殺人罪)が成立し、故意に人を殺した場合(強盗殺人罪)も含まれます。

死傷の結果は、強盗の機会におこなわれた行為から生じたものでなければなりません。
強盗の機会に行われた行為から人の死傷の結果が生じたかどうかは、犯意の継続性、強盗行為との時間的・場所的接着性、強盗行為との密接な関連性等を考慮して判断されます。
人の致死傷の結果と、強盗の手段である暴行・脅迫および強盗の機会になされる強盗行為と密接な関連性を有する行為との間には因果関係が必要となります。

■故意■
強盗の機会に人を負傷させた場合には、強盗致傷罪が成立しますが、これは、強盗犯人が人を負傷させる意思はないが、結果的に負傷してしまった場合に成立するものです。
他方、人を負傷させる認識で、負傷させた場合には、強盗傷人罪という罪が成立します。
ただ、強盗傷人罪について刑法第240条前段以外に規定があるわけではないので、当該条項が強盗傷人罪の根拠規定となっています。

また、強盗の機会に人を殺した場合には、強盗致死罪が成立しますが、これについても、強盗犯人が人を殺害する意思はないが、結果的に殺してしまった場合に成立する罪です。
強盗犯人が、人を殺す意思(殺意)をもって人を殺した場合には、強盗殺人罪という罪が成立します。
通常、故意に犯罪を犯した罪のほうが法定刑が重くなるよう定められています。
例えば、同じ人の死という結果を生じさせる殺人罪と傷害致死罪とでは、故意犯である殺人罪のほうが傷害致死罪の法定刑よりも重くなっています。
この点、強盗殺人罪と強盗致死傷罪は、その根拠規定が刑法第240条後段と同じくしており、法定刑も死刑・無期懲役となります。
ただ、両者は、量刑で大きな差を生じさせるものであり、刑事裁判では殺意の有無が争われるケースが少なくありません。

強盗致死や強盗殺人は起訴されると、通常の刑事裁判ではなく裁判員裁判となります。
そのため、早期に刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼し、対応していく必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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無銭宿泊で詐欺

2021-07-20

無銭宿泊詐欺に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県志摩市のホテルに代金を支払う意思がないのに宿泊し、チェックアウトの手続をせずにホテルを後にしたとして、三重県鳥羽警察署は、詐欺の疑いで県外に住むAとBを逮捕しました。
調べに対して、Aは、「Bが支払いを済ませたと思った。」と述べており、容疑を否認しています。
Aは、警察から弁護人を選任できることを聞いており、刑事事件に強い弁護士との接見を希望しています。
(フィクションです。)

今回は、無銭宿泊詐欺罪に問われるケースについて解説します。

詐欺罪

刑法第246条 
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させ、または財産上不法の利益を得、もしくは他人にこれを得させる犯罪です。
詐欺罪には、相手方の瑕疵ある意思に基づくと点に特徴があります。

■客体■
詐欺罪の客体は、他人の占有する他人の財物、そして、財産上の利益です。
窃盗罪や強盗罪の場合とは異なり、財物には、不動産も含まれます。
財産上の利益とは、財物以外の財産的利益一切をいい、債権・担保権の取得、労務・サービスの提供、債務免除や支払猶予などがあります。

■行為■
詐欺罪の行為は、人を欺いて財物・財産上の利益を交付させることです。
詐欺罪が成立するためには、①人を欺いて、②相手方に錯誤を生じさせ、③その錯誤に基づく財産的処分行為により、④財物・財産上の利益を交付させる、ものでなければなりません。
つまり、①人を欺く→②相手方の錯誤→③財産的処分行為→④財物の領得の一連の流れがあり、これらの間に相当因果関係がなければなりません。

①欺罔行為
「欺いて」とは、人を錯誤に陥れさせる行為のことです。
欺罔の手段・方法に制限はありませんが、人による物・利益の交付行為に向けられたものでなければなりません。

②錯誤
欺罔行為によって相手方を錯誤に陥れることが必要です。
欺罔行為により生じる錯誤は、交付の判断の基礎となる重要な事項についてのものでなければならず、それがなければ交付行為を行わなかったであろうような重要な事実に関するものでなければなりません。(錯誤→交付行為)

③財産的処分行為
詐欺罪の成立には、錯誤により生じた瑕疵ある意思に基づき、物・利益が交付される必要があります。
つまり、騙された者の瑕疵ある意思に基づく交付行為(処分行為)により、物・財産上の利益が移転することが必要となるのです。

④物の移転
相手方の処分行為によって、物の占有が行為者または第三者に移転することによって、詐欺罪は既遂となります。

無銭宿泊のケースでは、主に次の3つの場合が考えられます。
(1)最初から代金を支払う意思がないのにホテル等に宿泊して、支払いをせずに逃げた。
(2)代金支払いの時点でお金がないことに気付き、支払いをせずに逃げた。
(3)代金を支払う時点でお金がないことに気付き、「ATMで下ろしてくる。」と言ってホテルを出て、そのまま戻らず逃げた。

(1)の場合、最初から支払う意思がないのに宿泊を申入れており、その申入れる行為が欺罔行為に当たると考えられます。
その申入れにより、ホテル側は行為者がチェックアウト時に代金を支払うと信じ、宿泊という財産上の利益を交付していますので、この場合は詐欺罪が成立することになります。

(2)の場合、最初は支払う意思があったものの、支払時点で支払能力がないことに気が付いて隙を見て逃げたというものですが、この場合、宿泊の申入れ時には支払う意思があったため、この時点での欺罔行為はありません。
結果的に、支払わずに逃げたため、宿泊代金の支払猶予という財産的利益を取得しているのですが、行為者はホテル側に対して、支払いを猶予する処分行為をさせる欺罔行為を行っていないため、詐欺罪は成立しないことになります。

(3)については、支払いの時点で宿泊代金の支払を免れるために、ホテル側に「ATMで下ろしてくる。」と嘘をいい、ホテル側はそれを信じ承諾したことによって、ホテル側が代金の支払を猶予しています。
「ATMで下ろしてくる。」と言った行為が欺罔行為であり、それを信じたホテル側が代金の支払一時猶予するという財産上の利益を行為者に交付していますので、これについては詐欺罪が成立するものと考えられます。

詐欺罪の成立要件として、欺罔→錯誤→交付行為→財物・財産上の利益の移転という一連の流れのなかに相当因果関係がなければなりません。
このなかでも、欺罔については、行為時に行為者において相手方を騙す意思がなければならず、行為者の主観面の立証が必要となるため、詐欺罪の立証は容易ではありません。
上の事例においても、Aは「Bが支払ったと思っていた。」と述べており、自身は欺罔行為を行っていないと主張しています。
しかしながら、そのような主張をするだけでは不十分であり、行為時のAおよびBの所持金、AとBの供述内容(支払について事前にどのような取り決めがあったのか等)などから、欺く意思があったと認められることがあります。
そのため「支払う意思があった。」、「相手が支払ったと思っていた。」という主張を客観的な証拠に基づいて立証する必要があります。
無銭宿泊詐欺罪に問われており、容疑を否認している場合には、すぐに弁護士に相談し、取調べ対応についてのアドバイスを受けたり、客観的な証拠を収集・提示するなどして、詐欺罪が成立しないことを立証してくことが重要です。

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強制わいせつ幇助で逮捕

2021-07-16

強制わいせつ幇助逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県北方警察署は、大学生のAくん(20歳)を強制わいせつ幇助の容疑で逮捕しました。
Aくんは、知人のBさんが女性にわいせつな行為をすると知りながら、女性に知人宅に来るように呼び出したと疑われています。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、事件について詳しいことを教えられず、どのように対応すべきか分からず途方に暮れています。
(フィクションです。)

強制わいせつ幇助

まずは、強制わいせつ罪がどのような場合に成立する犯罪であるのかについて説明します。

■強制わいせつ罪■

刑法第176条 
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪は、
①13歳以上の者に対し、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、
あるいは、
②13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした場合
に成立する犯罪です。

13歳以上の者に対するわいせつな行為は、「暴行・脅迫」を手段として行われていることが要件となります。
これら「暴行・脅迫」の程度については、相手方の反抗を抑圧する程度のものである必要はありませんが、反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要とされます。
判例は、暴行自体がわいせつな行為である場合には、端的に性的自由を侵害するものであり、強制わいせつが成立するとしています。(大判大正7・8・20)

「わいせつな行為」とは、性的な意味を有し、本人の性的羞恥心の対象となるような行為のことを指します。
例えば、陰部、乳房、尻や太もも等に触れる行為、全裸の写真をとる行為、キスする行為などはその人の意思に反して行われる場合には、「わいせつな行為」に当たります。

更に、強制わいせつ罪が成立するには、罪を犯す意思(「故意」)がなければなりません。
強制わいせつ罪における故意は、「13歳未満の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をする」こと、あるいは、「13歳未満の者に対し、わいせつな行為をする」ことの認識・認容です。
強制わいせつ罪の故意に関して問題となるのが、相手方の年齢の錯誤です。
13歳未満の者を13歳以上であると誤信して、暴行・脅迫を用いずにわいせつな行為をした場合、故意はなく強制わいせつ罪は成立しません。
なお、判例はかつて、強制わいせつ罪の成立には、「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図」が必要であり、もっぱら被害者に報復し、または侮辱し虐待する目的で被害者を裸にして写真撮影をしても、強制わいせつ罪は成立しないとしていました。(最判昭和45・1・29)
しかし、平成29年の最高裁判所の判決は、「わいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ない。」とし、性的意図を強制わいせつ罪の構成要件としてとらえるべきではなく、社会通念上当該行為がわいせつな行為に当たるかどうかを具体的事情から判断するにあたっての一要素として位置づけられるようになりました。

次に、強制わいせつ幇助の罪について説明します。

■幇助■

幇助は、正犯に物的または精神的な援助・支援を与えることにより、その実行行為の遂行を容易にすることです。
幇助犯が成立するためには、①正犯を幇助すること、②それに基づいて正犯が実行行為を行うこと、そして、③幇助の意思、が必要です。
幇助の意思については、幇助者の認識として、正犯が行う特定の犯罪について、ある程度概括的に認識、認容し、かつ、その実行を自分の行為によって容易にさせることを認識していれば幇助犯は成立するとされます。

幇助犯の法定刑は、正犯の刑を減軽した刑となります。

強制わいせつ幇助で逮捕されたら

強制わいせつ幇助逮捕された場合、共犯事件であることから、罪証隠滅のおそれがあると認められ易く、逮捕後に勾留となる可能性は高いでしょう。
勾留されると、検察官が勾留を請求した日から原則10日、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
共犯事件では、勾留と同時に接見禁止が決定することがあります。
接見禁止となれば、弁護士以外との面会を行うことができなくなります。

事件の終局処分、つまり、起訴するかどうかの判断は検察官が行います。
起訴するとした場合には、強制わいせつ罪の法定刑は懲役刑のみですので、略式手続をとることはできず、公判請求されることになります。
公判請求されれば、被告人は公開の法廷で審理を受けることになります。
一方、検察官が起訴しないとする処分(不起訴処分)をする場合には、事件はそこで終了となります。
犯罪が成立しない場合や犯罪を立証するための証拠が十分でない場合だけでなく、犯罪を立証するだけの証拠がそろっている場合であっても様々な事情を考慮して起訴しないとすることもあります。
その事情には、被害者との間で示談が成立しているかどうか、ということが含まれています。
つまり、被害者との間で示談が成立しており、被害届や告訴が取り下げられている場合には、検察官は不起訴処分で事件を処理する可能性は高いです。
強制わいせつ罪は親告罪ではないため、示談が成立し告訴が取り下げられた場合であっても、検察官は起訴することは可能です。
しかしながら、被害者との示談が成立しているのにあえて起訴するということはあまりありません。
そのため、容疑を認める場合であれば、早期に被害者との示談交渉に着手し、示談を締結させることが、早期事件解決、早期釈放を実現させる上で最も重要だと言えるでしょう。

容疑を否認する場合には、自己に不利な供述がとられないよう、冷静に取調べに応じる必要があります。

強制わいせつは決して軽微な犯罪とは言えず、厳しい処分となる可能性もあります。
そのため、強制わいせつ幇助事件で逮捕された場合には、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談し、取調べ対応についての的確なアドバイスをもらい、被害者との示談締結に向けて動いてもらいましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が強制わいせつ事件、強制わいせつ幇助事件で逮捕されて対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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