Archive for the ‘暴力事件’ Category

強盗傷人罪の少年事件で逮捕されてしまったら

2021-11-02

強盗傷人罪の少年事件で逮捕されてしまったら

強盗傷人罪の少年事件で逮捕されてしまった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさん(15歳)は、三重県尾鷲市の路上において、歩いて帰宅途中であったVさん(男性)にけがをさせた上で財物を奪取するつもりで、Vさんを羽交い絞めにして倒し、顔を殴るなどして全治約2週間のけがを負わせ、現金約10万円とキャッシュカードなどが入ったショルダーバッグを奪いました。
三重県尾鷲警察署の警察官は、Aさんを強盗傷人罪の容疑を逮捕しました。
強盗傷人罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、今後の手続きがどうなるのか、三重県内にある刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(2020年10月13日に埼玉新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【強盗傷人罪とは】

刑法240条は強盗傷人罪を規定しており、強盗が人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処すとされています。

強盗傷人罪の主体である「強盗」とは、強盗犯人を意味し、既遂・未遂を問わないとされています(最高裁判決昭和23年6月12日)。
そして、強盗傷人罪の主体となる強盗犯人には、刑法236条の強盗罪を犯した者のでなく、事後強盗犯人(刑法238条・刑法243条)や昏睡強盗犯人(刑法239条・243条)が含まれます。
したがって、強盗傷人罪の主体となる「強盗」には広い意味での強盗犯人を意味するので読解にあたり注意が必要です。

ここで、刑法236条をみてみると、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪として、5年以上の有期懲役に処する。」(刑法236条1項)と規定されています。
強盗罪が成立するためには、他人の財物が「暴行又は脅迫」により「強取」される必要があります。
そして、強盗罪における「暴行又は脅迫」とは、被害者の反抗を抑圧するに足りるものである必要があります。
このような「暴行又は脅迫」により被害者の反抗を抑圧して財物を奪取することを強盗罪における「強取」といいます。

刑事事件例において、Aさんは、Vさんを羽交い絞めにして倒し、顔を殴るなどしています。
このAさんの行為は、被害者であるVさんの反抗を抑圧するに足りるものであるといえると考えられます。
よって、Aさんの行為は、強盗罪における「暴行又は脅迫」に該当すると考えられます。
そして、Aさんは、Vさんの反抗を抑圧して、Vさんの現金約10万円とキャッシュカードなどが入ったショルダーバッグを奪取しています。
よって、Aさんは、強盗罪における「強取」をしたと考えられます。
以上より、Aさんには強盗罪が成立する、すなわちAさんは強盗傷人罪の主体となる「強盗」に該当することになると考えられます。

ところで、強盗傷人罪の成立には、強盗傷人罪における「負傷」が強盗による強盗の機会に発生したものである必要があると考えられています(最高裁判決昭和24年5月28日)。
また、強盗傷人罪における「負傷」の程度としても、医師の治療を必要とする程度のものである必要があると考えられています。

刑事事件例では、AさんはVさんを羽交い絞めにして倒し、顔を殴るなどして全治約2週間のけがを負わせています。
そして、このVさんが負った全治2週間のけがは、強盗に機会になされており、負傷の程度としても医師の治療を必要とする程度のものであると考えられます。

以上より、Aさんには強盗傷人罪が成立すると考えられます。

【強盗傷人罪と少年事件】

刑事事件例におけるAさんは、強盗傷人事件を犯した当時15歳です。
そのため、Aさんが少年審判時までに20歳以上に達しない限り、Aさんは少年法における「少年」として扱われることになります(少年法2条1項)。

しかし、強盗傷人事件では、必ずしも少年事件の手続きのみで事件が終局するわけではありません。
というのは、家庭裁判所が「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪」を犯した少年について、「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」は、刑事事件の手続きに戻される可能性があるからです(少年法20条)。
このように少年事件の手続下で処理されていた少年が刑事事件の手続きに戻されることを「逆送」ということがあります。

そして、少年が刑事事件の手続きに戻された場合、捜査段階においては少年鑑別所ではなく拘置所で勾留されたり、刑の執行の段階においては刑務所に収容されたりする可能性があります。
このように、少年にとって、逆送は数多くの大きな不利益があります。
そのため、逆送を回避するような刑事弁護活動(付添人活動)が重要となると考えられます。

例えば、刑事弁護士(付添人)としては、少年事件に関する豊富な経験と知識から、短い審判までの期間で少年の内省を深めるサポートを行ったり、少年の家族と調整し少年をとりまく環境を整えるといった活動が考えられます。
また、家庭裁判所の調査官や裁判官の考える問題点を改善・協議するなどして、少年にとって少年事件の手続き下での処分がふさわしいことを裁判所に対して強く主張することも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。
強盗傷人事件を起こした少年のご相談ももちろん受け付けております。
三重県尾鷲市強盗傷人事件(少年事件)で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

三重県鈴鹿市の住居侵入・窃盗事件で逮捕

2021-10-08

三重県鈴鹿市の住居侵入・窃盗事件で逮捕

三重県鈴鹿市住居侵入・窃盗事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、Bさんと共謀の上、三重県鈴鹿市のVさんの自宅に侵入し、現金200万円が入った金庫や高級車などおよそ4100万円相当の財物を盗みました。
Vさんが三重県鈴鹿警察署に通報した結果、Aさんは三重県鈴鹿警察署の警察官により住居侵入罪窃盗罪の容疑で逮捕されました。
三重県鈴鹿警察署の警察官は、AさんがVさん以外の人の住居に侵入し財物を盗み取っていないか、共犯者の行方を知らないか厳しく追及しています。
住居侵入罪窃盗罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、三重県鈴鹿市刑事事件に対応している法律事務所への法律相談を検討しています。
(2020年9月24日に東海新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【住居侵入罪とは】

「正当な理由がないのに、人の住居」「に侵入し」「た者」には、住居侵入罪が成立します(刑法130条)。
住居侵入罪の法律に定められた刑(法定刑)は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。

住居侵入罪における「侵入」とは、居住者の「誰の立入り・滞在を許すか」という意思に反して、住居に立ち入ることをいいます。

刑事事件例において、AさんがVさんの自宅に無断で立ち入ることは、Vさんの「誰の立入り・滞在を許すか」という意思に反するものであったと考えられます。
よって、Aさんの立入りは、住居侵入罪における「侵入」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには住居侵入罪が成立すると考えられます。

【窃盗罪とは】

「他人の財物を窃取した者」には、窃盗罪が成立します(刑法235条)。
窃盗罪の法律に定められた刑(法定刑)は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

窃盗罪における「窃取」とは、財物の占有(事実上の支配)者の意思に反して、財物を自己の占有(事実上の支配)に移すことをいいます。

刑事事件例において、AさんはVさんの意思に反して、現金200万円が入った金庫や高級車などおよそ4100万円相当の財物を自己の占有(事実上の支配)に移しています。
よって、Aさんの行為は窃盗罪における「窃取」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには窃盗罪が成立すると考えられます。

【住居侵入罪・窃盗罪と共犯(共同正犯)】

刑事事件例において、Aさんは住居侵入・窃盗行為をBさんと共謀して行っています(共同正犯といいます)。
また、共犯者であるBさんの行方が分からず、当然三重県鈴鹿警察署の警察官によるBさんの住居侵入罪窃盗罪での逮捕も行われていません。

Aさんを住居侵入罪窃盗罪の容疑で捜査する検察官は、このような状況においてAさんが釈放されると、AさんがBさんと口裏合わせをする(住居侵入・窃盗事件に関する罪証を隠滅する)おそれがあると考え、Aさんの勾留を請求する可能性があります。

勾留とは、逮捕に引き続きなされ最大で20日(延長された場合)という長期間に及ぶおそれがある身体拘束を意味します。
勾留期間中は仕事や学校には行くことができなくなるため、失業や退学のおそれが生じてしまいます。

刑事弁護士としては、検察官に対してAさんを住居侵入罪・窃盗罪の容疑での勾留を請求しないよう働きかけることができると考えられます。
また、Aさんの住居侵入罪・窃盗罪の容疑での勾留を決定する裁判官に対しても、勾留の決定をしないよう働きかけることができると考えられます。
住居侵入罪窃盗罪での勾留がなされた場合には、不服申立て(準抗告)をすることもできると考えられます。

【住居侵入罪・窃盗罪と余罪】

逮捕・勾留期間中、Aさんは、三重県鈴鹿警察署の警察官により、Vさん以外の人の住居に侵入し財物を盗み取っていないか、すなわち余罪となる住居侵入罪窃盗罪を犯していないか厳しい追及を受ける可能性があります。

逮捕・勾留期間中はAさんに取調べを受ける義務(取調受忍義務)が生じるため、長期間に及び厳しい追及がなされる可能性もあります。
被疑者の立場からすれば、肉体的にも精神的にも大きな負担となる可能性があります。

刑事弁護士としては、三重県鈴鹿警察署の警察官や検察官による住居侵入罪・窃盗罪の容疑での取調べに対してどのように応じれば良いのか、法的な観点から詳しく助言することができると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
住居侵入罪・窃盗罪を犯した方の刑事弁護活動を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
三重県鈴鹿市の住居侵入・窃盗事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

三重県亀山市の器物損壊事件で示談を目指す

2021-10-05

三重県亀山市の器物損壊事件で示談を目指す

三重県亀山市器物損壊事件示談を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、三重県亀山市において、軽乗用車で道路を走行中、前を走っていたVさんの車がゆっくり走っていたことに腹を立て、信号で乗用車が止まった際にVさんと口論をした後、ハンマーでVさんの乗用車のフロントガラスなどを叩き割りました。
Aさんは、三重県亀山警察署の警察官により、器物損壊罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、三重県亀山警察署の警察官による器物損壊罪の容疑での取調べに対し、器物損壊罪の容疑を認めているということです。
Aさんが器物損壊罪の容疑で逮捕されたと聞いたAさんの妻は、三重県内にある刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(2020年10月19日にCBCNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【器物損壊罪とは】

刑法261条は、以下のように規定しています。

前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する(刑法261条)。

また、刑法264条は、以下のように規定しています。

第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない(刑法264条)。

器物損壊罪は、刑法261条に規定されているとおり、「他人の物を損壊」した場合に成立する犯罪です。

器物損壊罪における「他人の物」とは、公用文書・私用文書・建造物以外の他人の物を指します。
また、器物損壊罪における「損壊」とは、物理的損壊を含む物の効用を滅失させる行為をいいます。

刑事事件例において、AさんがVさんの乗用車のフロントガラスなどを叩き割る行為は、器物損壊罪における「他人の物を損壊する」行為に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには器物損壊罪が成立すると考えられます。

【器物損壊事件と示談】

器物損壊罪は、上述の通り、「第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」(刑法264条)と規定されています。

告訴とは、器物損壊罪を含む犯罪の被害者の方(及びその他一定の者)が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告して、その訴追を求める意思表示をいいます(刑事訴訟法230条)。
器物損壊罪は、この告訴がなければ公訴を提起(刑事裁判へ提訴)することができません。

そこで、刑事弁護士としては、刑事損壊事件の被害者の方と示談交渉をし、告訴を取り消してもらうことができると考えられます。
示談交渉においては、Vさんの乗用車のフロントガラスなどの修理にかかった損害賠償金を支払う被害弁償ができると考えられます。

特に本件器物損壊事件のようなケースでは、被害者の方の情報(氏名や電話番号)が分からない場合が多いです。
そこで、刑事弁護士としては、本件器物損壊事件を捜査する警察官や検察官に対して、弁護士限りで本件器物損壊事件の被害者の方の連絡先を教えてもらえないかと打診することもできると考えられます。

示談締結は、器物損壊事件を起こした場合において寛大な処分を獲得するためには非常に重要な要素となります。
そして、このような示談交渉には刑事事件に関する専門的な知識と豊富な経験が必要であるといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
器物損壊事件において示談交渉を含む刑事弁護活動を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
三重県亀山市の器物損壊事件で示談を目指す場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

他人のペットを傷つけると何罪?

2021-09-14

他人のペットを傷つけると何罪?

他人のペットを傷つけると何罪になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

〜事例〜

三重県桑名市に住んでいるAさんは、隣人であるVさんがペットとして飼っている犬が、AさんがVさん宅前を通りかかるたびに吠えかかってくることに苛立っていました。
そして、ある日、Aさんは我慢の限界を超えてしまい、ついにVさん宅の犬を蹴飛ばして怪我を負わせてしまいました。
ペットの犬が怪我をしていることに気がついたVさんは、防犯カメラの映像などからAさんが暴行を加えて怪我をさせたことを知り、三重県桑名警察署に被害を届け出ました。
被害届を受理した三重県桑名警察署は、Aさんを逮捕
Aさん逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、突然の知らせに驚き、ひとまず弁護士に詳しい話を聞いてきてもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・他人のペットを傷つけると何罪?

今回のAさんは、Vさんのペットである犬に暴行し、怪我を負わせてしまっています。
このケースのように、他人のペットである動物を傷つけたときに成立する可能性のある犯罪としては、まずは刑法の器物損壊罪が挙げられます。

刑法第261条(器物損壊罪)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「前3条に規定するもの」とは、文書や建造物等のことで、それ以外のものが器物損壊罪の対象(客体)となります。
生きている動物を「物」と扱うことに違和感のある方もいらっしゃるかもしれませんが、法律的には動物も「物」として扱われるため、他人にペットとして飼われている動物も器物損壊罪の客体=「他人の物」となります。
器物損壊罪の「他人の物を」「傷害」するという言葉からも、他人が飼っているペットが器物損壊罪の対象として想定されていることが分かります。
なお、「傷害」とは書かれているものの、他人のペットを殺してしまったような場合でも、器物損壊罪の「傷害」に当てはまり、器物損壊罪が成立することにも注意が必要です。

今回の事例では、AさんはVさんの飼っているペットの犬=器物損壊罪でいう「他人の物」に暴行を加え、怪我をさせている=「傷害」しているため、器物損壊罪が成立すると考えられます。

・自分のペットを傷つけたら何罪?

先ほど確認したように、器物損壊罪はあくまで「他人の物」を傷つけた時に成立する犯罪です。
ということは、ペットを傷つけた際、それが他人のペットでなかった場合、自分のペットを傷つけてしまった場合には器物損壊罪とならないのでしょうか。
刑法には、以下のような規定があります。

刑法第262条
自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、前3条の例による。

この条文によると、自分の飼っているペットであっても、差押えを受けていたり、物権を負担していたり、賃貸したりしてているときは、器物損壊罪の対象となることがわかります。
このような場合には、たとえ自分のペットであっても傷つければ器物損壊罪の成立が問題となります。

・器物損壊罪以外の犯罪も成立する?

加えて注意しなければならないのは、ペットを傷つけることによって、器物損壊罪以外の犯罪も成立の可能性があるということです。
ある特定の種の動物を傷つけた場合には、動物愛護法違反が成立する可能性が出てくるためです。

動物愛護法(正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律)は、主としてペット販売や取引を行う事業者に対して規制を加える法律です。
しかし、一般の飼い主やさらには飼い主でない人もこの法律による取締りを受けることがあります。

動物愛護法第44条第1項
愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。

動物愛護法における「愛護動物」とは、牛、馬、めん羊、やぎ、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるとその他人が飼育している動物のうち哺乳類、鳥類、爬虫類に属するものを指します。
刑法に対して動物愛護法の処罰規定は特別法に当たりますので、愛護動物をみだりに殺傷したといえる場合には器物損壊罪ではなく動物愛護法違反が適用されます。
そして、動物愛護法では、動物の種類によっては器物損壊罪のように他人の物か自分の物か区別されていないため、他人のペットでも自分のペットでも、「愛護動物」に当たる動物を傷つければ動物愛護法違反となる可能性が出てきます。

今回のAさんは、Vさんのペットである犬=「愛護動物」を傷つけていますから、動物愛護法違反となると考えられます。
動物愛護法違反は、器物損壊罪と異なり親告罪ではないため、告訴がなくとも起訴される可能性があり、さらにその刑罰も重い物となっています。
迅速に刑事事件に対応できる弁護士に相談することが求められるでしょう。

「人を傷つけるわけではないから」と考える方もいるかもしれませんが、ペットを傷つけることも非常に重い犯罪です。
そういったことをしないよう気をつけることはもちろんですが、もしも当事者となってしまったら、弁護士に相談して対応を練っていくことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、弁護士の初回接見サービスや初回無料法律相談を受け付けています。
まずはお気軽にご相談ください。

器物損壊事件で示談

2021-08-31

器物損壊事件で示談した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、三重県津市の繁華街で酔って、路上に置かれた被害店舗の看板を蹴って壊したところ、店員の通報で駆け付けた三重県津警察署の警察官に器物損壊の容疑で現行犯逮捕されました。
翌日、Aさんは家族が身元引受人となり釈放されましたが、暴行、公務執行妨害の前歴2件があるため、今回はどのような処分となるのか気が気でなりません。
Aさんは、刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

器物損壊罪について

器物損壊罪は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の他人の物を損壊又は傷害させた場合に成立する罪です。
「公用文書等、私用文書等、建造物等以外の他人の物」には、動産、不動産を広く含みます。
「損壊」とは、物の物理的な損壊のみならず、物の効用を害する一切の行為を含みます。
判例では、食器に放尿する行為、鯛や海老が描かれた掛け軸に不吉と墨書きする行為、家屋を建設するために地ならしした敷地を掘り起こして畑地とする行為、施設の堀に赤色スプレーで落書きする行為も「損壊」に当たるとしています。
「傷害」は、客体が動物の場合に用いられ、動物を殺傷したり、逃がすなどしてその効用に害する一切の行為を指します。

器物損壊罪は、親告罪です。
親告罪というのは、被害者などの告訴権者による告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪のことです。
刑法上の親告罪は、器物損壊罪の他にも、未成年者略取誘拐罪、名誉毀損罪、侮辱罪、過失傷害罪などがあります。

器物損壊事件で示談した場合

器物損壊罪は粗暴犯の一種ですので、Aさんは2件の同種前歴をもっていることになります。
そのため、少なくとも罰金刑となる可能性はあると言えるでしょう。
しかしながら、器物損壊罪は親告罪であるため、被害者との間で示談を成立させ告訴を取消してもらえれば、同種の前歴があったとしても不起訴となります。

器物損壊事件で不起訴となるには、被害者との示談が重要なポイントとなります。
ただ、示談は、加害者が被害者に対して金銭の支払いをする一方で、被害者が告訴を行わない、あるいは、告訴を取り下げるとする当事者間の約束ですので、決まったルールがあるわけではありません。
また、被害者は加害者に対して嫌悪感や恐怖心を抱いており、加害者との接触を望まない場合も少なくありません。
そのため、被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのが一般的となっています。
弁護士限りであれば話し合いを承諾してくれる被害者も多いですし、法律の専門家である弁護士を介して交渉を行ることにより、加害者にとって到底受け入れることができない合意内容となったり、法外な示談金となることを避けることが期待できます。

無事に告訴が取下げられれば、起訴されることはありません。
器物損壊事件で被疑事実を争わない場合には、早期に弁護士に相談し、被害者との示談交渉に着手するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
器物損壊事件を起こし対応にお困りであれば、まずはお気軽にお電話ください。

少年事件で試験観察

2021-08-20

少年事件試験観察となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県伊勢警察署は、傷害事件の被疑者としてAくん(17歳)ら少年4名を逮捕しました。
Aくんには、同種の前歴があり、Aくんの両親は、今回の事件で少年院送致となるのではないかと心配しています。
Aくんの両親は、すぐに対応してくれる少年事件に強い弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)

少年事件の流れ

20歳未満の者(以下、「少年」と呼びます。)が、罪を犯したと疑われる場合には、捜査機関が少年の被疑事件として捜査を開始し、捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと認められるときや、犯罪の嫌疑は認められないけれども家庭裁判所の審理に付すべき事情があると思料するときは、すべての事件を家庭裁判所に送致します。
事件を受理した家庭裁判所は、調査官による調査を行った上で、審判を行い、少年に対して処分を言い渡します。
審判で言い渡される処分には、①不処分、②保護処分、③都道府県知事又は児童相談所長送致、④検察官送致、⑤試験観察があります。

試験観察とは

家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもって、相当の期間、少年を調査官の観察に付することができます。
この決定を「試験観察」といいます。
試験観察は、終局決定前の段階で必要がある場合に行われる中間決定です。
試験観察には、相当の期間、調査官の観察に付することによって、調査官の調査を補強・修正し、要保護性の判断をより一層的確にするという機能と、終局決定をいったん留保することで心理的強制効果を利用して教育的措置を行い、その効果を高めるという教育的処遇の機能とが期待されます。

試験観察の要件は、「保護処分を決定するため必要があると認めるとき」であることで、より細かく言えば、①保護処分に付する蓋然性があること、②直ちに保護処分に付することができないか、相当でない事情があること、③調査官の観察活動の結果により適切な終局決定ができる見込みがあること、④相当の期間内に観察目的を達成する見込みがあること、の4要素を満たす必要があるとされています。

試験観察の方法は、事案の内容や少年の抱える問題によって異なりますが、基本的には、調査官が、少年や保護者を定期的に家庭裁判所に呼び出し面接を行い、その中で教育的措置を行ったり、ボランティア活動へ参加させたりします。
試験観察には、在宅試験観察と補導委託試験観察とがあります。
在宅試験観察は、審判で試験観察決定が言い渡されると、その日に自宅に戻ることができます。
基本的には自宅で過ごし、定期的に家庭裁判所に出頭することになります。
補導委託試験観察は、民間の有志家に少年の補導を委託し、民間の社会資源の長所を生かした教育的な働きかけを行いながら、少年の行動等を観察しようとするものです。

このように、試験観察は、終局処分である保護処分を決めかねる場合にとられるもので、試験観察期間中に、少年の要保護性が解消したと認められる場合には、最終的に不処分が言い渡されることもありますし、少年院送致の可能性が高い事案であっても、保護観察となることもあります。
少年院送致が見込まれる場合には、まずは審判で試験観察となることを目指し、試験観察期間中に環境調整に力を入れ、最終的に審判で保護観察処分となるよう働きかけることが重要です。
そのような活動は、少年事件に精通する弁護士にお任せください。
少年事件は、成人の刑事事件と異なる点も多いため、少年事件については少年事件に詳しい弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

名誉毀損罪と侮辱罪

2021-08-10

名誉毀損罪と侮辱罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
インターネットの掲示板に、「地元のアイドルとして活躍しているYは、整形をしている。中学の卒アルの写真と比べたらバレバレ。」と書き込み、Yの卒業写真とみられる写真を一緒に投稿したり、「中学時代は男をとっかえひっかえしてた。清純系とかウソ。」などといった内容の書き込みが多数寄せられていることに対して、Yさんは所属事務所に相談した上で、三重県津南警察署に被害届を出しました。
後日、同警察署は、この事件の被疑者としてAさんに話が聞きたいと出頭を要請しました。
Aさんは、どう対応すべきか困っています。
(フィクションです)

他人を誹謗中傷するような内容をインターネットの掲示板やSNSに書き込んだ場合、名誉毀損罪または侮辱罪が成立する可能性があります。
以下、各犯罪について、そして両者の違いについて解説します。

名誉毀損罪

第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

◇客体◇
名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
「人」には、自然人の他に、法人、法人格のない団体も含まれます。
「名誉」とは、人に対する社会一般の評価を意味します。
本罪における「名誉」には、人の倫理的価値、政治的・学問的・芸術的能力、容貌、健康、身分、家柄など、およそ社会において価値があるとされるものが含まれますが、人の経済的な支払能力や支払意思に対する社会的評価は含まれません。

◇行為◇
名誉毀損罪の行為は、「公然と事実を適示し」て「人の名誉を毀損」することです。

「公然」とは、不特定または多数人が認識しうる状態のことをいいます。
不特定については、相手方が特殊の関係によって限定された者でない場合をいい、公道の通行人や公開の広場におけ聴衆などがこれに当たります。
多数人とは、数字によって何人以上と限定することはできませんが、単に数名では足りず、相当の員数である必要があります。
また、名誉侵害表現の相手方が特定少数の場合であっても、伝播して不特定多数の者が認識しうる可能性を含む場合にも公然性が認められます。

指摘される「事実」は、人の社会的評価を害するにたりる事実でなければなりません。
この「事実」は、真実か否か、公知か否か、過去のものが否かは問いません。

「適示」とは、具体的に人の社会的評価を低下させるにたりる事実を告げることをいいます。
事実を適示する方法に制限はなく、口頭、文書、写真などであっても構いません。

「名誉を毀損」するとは、人の社会的評価を低下させるおそれのある状態を作ることをいい、現実に社会的地位が傷つけられたことまで必要とされません。

◇故意◇
本罪の故意は、公然と事実を適示して人の名誉を毀損することの認識・認容です。

◇違法性の特則◇
刑法第230条の2において、公共の利害に関する場合の特則規定があり、一定の場合に違法性が阻却されます。

 

侮辱罪

刑法第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

◇客体◇
侮辱罪の客体は、名誉毀損罪のそれと同じく「人の名誉」です。

◇行為◇
侮辱罪の行為は、「公然と人を侮辱する」ことです。
侮辱する」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。
名誉毀損罪とは異なり、具体的事実を適示することなく、人の社会的評価を低下させるような抽象的判断、批判を表現することで足ります。
具体的事実を適示した場合は、名誉毀損罪が成立することになります。

◇故意◇
事実を適示することなく、公然と人を侮辱することの認識・認容です。

以上の様に、名誉毀損罪と侮辱罪は、具体的事実の適示の有無によって区別され、択一関係にあるため、同一人に対する同一行為の場合、名誉毀損罪が成立する場合には侮辱罪は成立しません。

上記ケースの場合、誰でも閲覧可能なインターネットの掲示板に、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みをしています。
ここで問題となるのが、書き込みの内容が「具体的な事実を示し」ているか否かです。
「中学時代は男をとっかえひっかえしてた。清純系とかウソ。」という書き込みについては、具体的な事実ではなく抽象的な評価を示して、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みであるので、これについては侮辱罪にとどまるでしょう。
しかし、整形をしていると指摘し、中学校時代の個人写真も一緒に投稿している場合、具体的な事実を示して、Yさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みをしていると考えられ、名誉毀損罪が成立するでしょう。

名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、侮辱罪は拘留又は科料と、その刑罰においても異なります。
しかし、いずれの罪も、被害者らによる告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪であるため、事件を穏便に解決するためには、被害者との示談を成立させることが重要です。

インターネットで他人を誹謗中傷し、名誉毀損罪・侮辱罪に問われており、対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

傷害事件で逮捕されたら

2021-07-06

傷害事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県鳥羽市の路上で、口論になった相手に対して殴る蹴るの暴行を加え、怪我を負わしたとして、会社員のAさんは三重県鳥羽警察署に現行犯逮捕されました。
Aさんは当時酒に酔っていたようで、事件についてあまり覚えていません。
ただ、会社に事件のことが知られてしまうとクビになってしまうかもしれないと心配しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、何とかすぐに釈放されないかと不安でなりません。
(フィクションです。)

傷害事件で逮捕された後の流れ

傷害事件を起こし、警察に逮捕された場合、被疑者の身柄は警察署に移されます。
警察署では、事件についての取調べが行われます。
警察は、逮捕から48時間以内に、被疑者を釈放するか、それとも、証拠物や関係書類と一緒に被疑者の身柄を検察庁に送ります。
逮捕後に引き続いて被疑者の身柄を拘束しながら捜査をする必要がないと考える場合には、警察は被疑者を釈放します。
傷害事件では、犯行態様、被害者の被害の程度や、被疑者と被害者との関係性、被疑者が容疑を認めているかいないかによって、逮捕後に釈放となるケースもあります。
一方、警察が検察庁に送致した場合、検察官は、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、それとも、被疑者に対して勾留を請求するかを判断します。
検察官は、警察から送られてきた証拠物や関係書類、被疑者の取調べを行った上で、被疑者の身柄を拘束したまま捜査をする必要があるかどうかを検討します。
検察官が、勾留を請求した場合には、被疑者の身柄は、裁判所に移ります。
検察官からの勾留請求を受けて、裁判官は、被害者と面談を行い、被疑者を勾留すべきかどうかの判断を行います。
勾留すべきではない場合には、検察官の勾留請求を却下し、被疑者を釈放します。
勾留すべきとの判断を下した場合には、被疑者は、検察官が勾留請求をした日から原則10日間拘束されることになります。
勾留は、延長することができるので、10日間の勾留の後に最大で更に10日間の身体拘束となる可能性もあります。
被疑者の身柄を拘束している場合、検察官は、その勾留期限の間に、被疑者を起訴するか、それとも不起訴で事件を処理するかを決めます。
検察官が、不起訴の決定をすると、事件は終了し、被疑者が身柄拘束されている場合には、即時釈放となります。
一方、検察官が起訴すると、被疑者は被告人となり、勾留も起訴後の勾留にかわります。
起訴後の勾留期間は、2カ月で、以降1カ月ごとの更新が認められています。

会社に事件を知られたくない

刑事事件を起こし、逮捕されたときに、本人やその家族が心配することの1つに、会社に事件が知られてしまうのではないか、ということがあります。
会社に事件が知られてしまうと、最悪の場合、懲戒解雇となってしまうおそれがあるからです。
被疑者の収入を頼りに生活をしている場合には、被疑者が長期間勾留されることにより、被疑者本人だけでなく、その家族も、大きな不利益を受けることになってしまいます。
ですので、会社に事件が知られる前に、被疑者の身柄を解放することが、被疑者やその家族にとってとても重要なポイントとなります。
上で述べたように、裁判官が勾留を決定するまでには、警察や検察官、裁判官それぞれが被疑者の身体拘束についての判断する段階があります。
その段階で、被疑者を拘束する必要がないと判断されれば、被疑者の身柄は解放されることになります。
具体的には、逮捕されてから検察官に送致されるまでの間に、警察に被疑者を釈放するよう働きかける、検察に送致された場合には、検察官に対して意見書や面談を行うことにより、勾留の要件を満たしていないことを客観的な証拠に基づいて主張し、勾留請求をしないように働きかけます。
検察官が勾留請求をした場合には、勾留の判断をする裁判官に対して、当該被疑者については勾留の要件を満たしていない旨を主張し、勾留の決定をしないよう働きかけます。
このような働きかけにより、被疑者が勾留されずに釈放される可能性を高めることができます。
また、裁判官が勾留の決定をした場合であっても、その決定に対して不服申立を行うことにより、勾留を決定した裁判が取消され、被疑者が釈放となる可能性もあります。

逮捕から勾留の決定までの期間は短いため、勾留を回避するためには、迅速に動かなければなりません。
会社に事件のことが知られるのではと心配されておられるのであれば、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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責任能力を争う刑事弁護士

2021-07-02

責任能力について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県志摩市で、同居する親族を殺害しようとしたとして、三重県志摩警察署は、Aさんを殺人未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは、精神障害を患っており、事件当時もその影響が大きかったのではないかとAさんの家族は考えています。
Aさんの家族は、事件について刑事事件専門弁護士に相談し、責任能力について質問することにしました。
(フィクションです。)

犯罪の成立

犯罪は、その行為を行った場合には刑罰が科されるべきものだと言えるでしょう。
もう少し細かく言えば、犯罪とは、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」です。
つまり、犯罪というのは、人の行為であって、①構成要件に該当する、②違法で、③責任がある、という3つの要件をすべて備えたもの、となります。

①構成要件該当性

刑法をはじめとするある一定の法律には、「〇〇した者は、△△年以下の懲役又は□□万円以下の罰金に処する。」といった条文が規定されています。
この「〇〇した」のように、法律により犯罪として決められた行為の類型を、構成要件といいます。
殺人罪であれば、「人を殺した」行為が構成要件です。
この構成要件を満たす場合を構成要件該当性といい、犯罪の成立を肯定するためには必要となります。

②違法性

ある行為が、構成要件に該当する場合であっても、それが違法でなければ犯罪は成立しません。
通常、犯罪として法律に規定された行為は、その行為を禁止するために犯罪として規定されていることから、本来は違法であることが想定されています。
しかしながら、ある一定の事情が存在する場合には、違法性がなく、犯罪は成立しない、ということになるのです。
違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といい、正当行為、正当防衛、緊急避難などがあります。

③有責性

構成要件に該当する行為を行い、その行為は違法である場合であっても、それを行ったことについて責任が認められないのであれば、犯罪の成立を肯定することはできません。
責任は、行為者に対する非難可能性であって、非難することができなければ刑罰を科すことはできない、との考えが基礎にあります。
責任があるかどうかの判断は、「責任能力」、「故意又は過失」、そして、「適法行為の期待可能性」で判断されます。
今回は、上の事例でも問題になっている責任能力について考えてみましょう。

責任能力

犯罪だとされる行為を行ったことについての責任が認められるには、行為者において、責任があるとすることができる能力、つまり、責任能力がなければなりません。
責任能力とは、「事物の是非善悪を弁別し、それに従って行動する能力」のことをいいます。

刑法は、39条で心神喪失・心身耗弱、41条で刑事未成年について規定しています。

第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

第41条 14歳に満たない者の行為は、罰しない。

心神喪失とは、精神の障害により、行為の違法性を弁識し(弁識能力)、その弁識に従って行動を抑制する能力(制御能力)を欠く状態をいいます。
弁識能力又は制御能力いずれかが欠けている場合が心神喪失となり、この場合は、責任能力が欠ける(責任無能力)ため責任が阻却されます。
心身耗弱とは、精神の障害により、弁識能力又は制御能力が欠如するまでには至っていないものの著しく限定されている状態をいいます。
心身耗弱の場合には、責任能力は認められるものの、著しく限定されているため(限定責任能力)、責任減少を認めて刑の必要的減軽が適用されます。

心神喪失・心身耗弱の判断については、病歴、犯行当時の病状、犯行前の生活態度、犯行の動機や態様、犯行後の行動、犯行以後の病状などを総合的に考察して行われます。
責任能力は、あくまでも法律上の概念であり、法律判断であるため、専門家の鑑定を行い、例えその鑑定で心神喪失や心身耗弱の状況にあるとされても、最終的に心神喪失・心身耗弱の判断を行うのは裁判官です。

弁護士は、被疑者・被告人に精神障害が認められ、その精神障害の症状が犯行に影響を与えたこと、そして、被害者・被告人を法的に非難できるかどうか、という点に重点を置き、責任能力がないこと、あるいは限定的であることを客観的証拠に基づいて立証し、責任能力を争います。

刑事事件において、責任能力が争われるケースは少なくありません。
しかし、責任能力がない、あるいは限定的であることを立証することは容易ではありません。
責任能力に疑問のある場合には、できる限り早期に刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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少年事件で観護措置回避

2021-06-29

少年事件観護措置回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
三重県度会郡玉城町に住むAさん(15歳)は、友人Bさんと共謀して、知人のVさんに対して暴行を加え、財布を盗ったとして、三重県伊勢警察署に逮捕されました。
Aさんは逮捕後に、勾留が決定しましたが、高校受験を控えていることから、早く釈放されることを希望しています。
Aさんの両親は、家庭裁判所に送致された後も観護措置により身体拘束が続く可能性について警察から聞き、なんとか回避できないかと困っています。
(フィクションです。)

観護措置について

捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致することになっています。

事件を受けた家庭裁判所は、調査、審判を経て、少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所は、事件が係属している間いつでも、観護措置をとることができます。

観護措置とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置のことです。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護とがありますが、実務上、在宅観護はほとんど行われておらず、観護措置という場合には、収容観護を指すものとなっています。

観護措置の要件は、「審判を行うため必要があるとき」と少年法に規定されています。
一般的には、次の各要件を満たす必要があるとされています。
①審判条件があること。
少年が非行を犯したことを疑うに足りる事情があること。
③審判を行う蓋然性があること。
観護措置の必要性が認められること。

観護措置の必要性については、具体的に次の事由がある場合に認められるとされています。
(ア)調査、審判および決定の執行を円滑かつ確実に行うために、少年の身体を確保する必要があること。
(イ)緊急的に少年の保護が必要であること。
(ウ)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。

観護措置は、法律上、2週間で、特に継続の必要があるときに1回に限り更新が認められるとなっています。
しかし、実務上は、ほとんごの事件で更新がなされており、通常、観護措置の期間は4週間となっています。

観護措置を回避するために

観護措置は、家庭裁判所に事件が係属している間、いつでもとることができます。
しかし、逮捕・勾留されている少年については、家庭裁判所に送致されたときに観護措置をとるのが通常となっています。
そのため、捜査段階で少年の身柄が拘束されている場合には、弁護士は、捜査機関から家庭裁判所に送致される日を確認し、送致される日に付添人として観護措置回避するよう裁判官に働きかける必要があります。
家庭裁判所に事件が送致されると、裁判官は送られてきた記録に目を通し、少年と面談を行い、観護措置の決定が告知されます。
裁判官は、捜査機関から送られてきた記録(法律記録)には目を通していますが、付添人である弁護士は、記録に表れていないと思われる少年に有利な事情や少年の反省状況、被害弁償の進捗状況、保護者の監督状況、通学・就労できないことによって少年が被る不利益などの観護措置の弊害について裁判官に説明し、裁判官に対して観護措置をとらないように働きかけます。
裁判官と少年とが面談する前に、観護措置に関する意見書の提出や裁判官との面談を行い、裁判官に観護措置をとる必要がないことを認めてもらうよう活動します。

捜査段階で身体拘束されていない場合でも、家庭裁判所に送致された後に、家庭裁判所が観護措置をとる必要があると判断したときは、観護措置がとれらることもあります。
そのような事態を回避するためにも、家庭裁判所に事件が送致されたタイミングで、観護措置に関する意見書を提出し、観護措置がとられることのないよう働きかけることも重要です。

観護措置が決定した場合には、異議申立てや観護措置取消の職権発動を促す申立の方法で、観護措置の決定を争うことができます。

観護措置の期間は4週間と長く、その間は学校や職場に行くことはできないため、退学や解雇といった不利益が生じることも否定できません。
そのような不利益によって、かえって少年の更生を妨げることにもなりかねず、不必要・不当な観護措置がとられることのないよう適切に対応することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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