Archive for the ‘財産犯事件’ Category

背任事件の取調べについて

2020-02-28

背任事件の取調べについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇背任事件で取調べ◇

三重県津市に住むAさんは、会社役員を務めていました。
あるとき、懇意にしている取引先から融資のお願いをされましたが、貸金返済の見込みをたてることができませんでした。
しかしAさんは、長年の付き合いがあったことから、金銭の融資を決定しました。
ところが、その取引先はその後に倒産してしまい、経営状況を把握していたということで、Aさんは他の会社役員から背任罪の刑事告訴を受けることになってしまいました。
三重県津警察署から背任罪の疑いで事情聴取の呼び出しを受けたAさんは、取調べに向かう前に、刑事事件に強い弁護士に、取調べ対応について相談することにしました。
(この事例はフィクションです)

◇背任罪とは◇

会社の貸付担当者や営業担当者が、債権回収の見込みがないにもかかわらず、金銭や有償サービスを無担保で提供した場合等には、背任罪として刑事処罰を受ける可能性があります。

刑法 247条

他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する

背任罪が成立するための要件として、「自己若しくは第三者の利益」を図る目的があったこと、または、「本人に損害を加える目的」があったこと(図利加害目的)が必要とされています。
すなわち、専ら本人のため(例えば、自分の勤務する会社のため)に行った行為であれば、図利加害目的がなかったとして、背任罪は成立しないことになると考えられます。

~弁護士に相談~

背任事件で弁護依頼を受けた弁護士は、容疑者の立場、職務の内容、背任と疑われる行為の態様、容疑者の認識など様々な事情を丁寧に考察することで、背任罪の成立を妨げる事情がないかを検討いたします。
その上で、背任罪の成立を否認する事情があれば、弁護士が、事件の不起訴処分や無罪判決の獲得に向けて、裁判官や検察官へその事情の主張・立証を行います。
また、弁護士の交渉による、被害者との早期の示談成立も、事件の不起訴処分や刑罰の軽減の判断に大きく影響することになります。
刑事事件化する前に示談を成立させることができれば、そもそも刑事事件化することを防げるかもしれません。

◇Aさんの場合◇

なお、Aさんは会社役員ということで、会社法に規定されている特別背任となる可能性もあります。
特別背任は、株式会社で会社法第960条に規定されている地位にある者が背任行為を行った際に成立します。
特別背任には「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という罰則が規定されています。

◇背任罪に強い弁護士◇

背任罪は必ずしも罪に問われている人が利益を得ているわけではないので、成立するかどうかを判断するためには、専門的な知識が必要となってきます。
そのため、背任罪を疑われている場合には、無料法律相談にお越しいただき刑事事件に強い弁護士の見解を聞くようにしましょう。
また、ご家族が背任罪やその他の刑事事件で逮捕されてしまった場合には、弁護士を派遣させる初回接見サービスを利用するようにしましょう。
刑事事件では、早期に対応することが後悔のない事件解決へとつながっていきます。
刑事手続きが進んでしまい、あのときに活動していれば、と後悔する前に弁護士にご連絡ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件、背任罪に強い弁護士が無料法律相談、初回接見を行っています。
ご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

執行猶予中に万引き事件を起こしたら

2020-01-05

執行猶予期間中に起こした万引き事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

執行猶予中の万引き事件

Aさんは、令和元年11月30日に、三重県津市内にあるスーパーで万引きし、窃盗罪容疑で三重県津南警察署に逮捕され、10日間の勾留の後に、起訴されました。
裁判は、今年の2月10日に判決が言い渡される予定ですが、Aさんは、窃盗罪の前科(平成29年2月1日確定、懲役1年、3年間の執行猶予)があり、現在は執行猶予中です。
保釈中のAさんは、再び執行猶予を獲得できるかどうか不安であったため、窃盗事件などの刑事事件を専門にしている弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

執行猶予

執行猶予とは、有罪判決をして刑を言い渡すに当たって、情状により、その執行を一定期間猶予し、その期間を無事経過したときは刑の言渡しを失効させる制度のことをいいます。
つまり、執行猶予期間を何事もなく経過すれば、裁判で言い渡された刑を受けなくて済む、というのが執行猶予の一番の特徴です。

刑の執行猶予には、大きく分けて「刑の全部の執行猶予」と、「刑の一部の執行猶予」の2種類があり、前者はさらに、「(通常の)執行猶予」と「再度の執行猶予」の2種類に分けられます。
このうち、「刑の一部の執行猶予」は「執行猶予」という名称はついていますが、実質は「実刑判決」の一部です。

通常の「執行猶予」は、判決期日に執行猶予期間中ではない場合の執行猶予、「再度の執行猶予」とは、判決期日に執行猶予期間中だった場合の執行猶予です。
この点、Aさんの執行猶予は平成29年2月1日から3年、つまり「令和2年2月1日の午前0時」をもって満了ということになります。
そこで、Aさんは確かに、執行猶予期間中に万引きしていますが、判決期日時(令和2年2月10日)には執行猶予期間は経過しています。
ですから、Aさんは基本的には、通常の「執行猶予」の制度が適用されることになります。

(通常の)執行猶予の制度 

(通常の)執行猶予(付き判決)を受けるための要件は、刑法25条1項に規定されています。

刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり、(通常の)執行猶予(付き判決)を受けるには

1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号、あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること

が必要ということになります。

執行猶予の猶予期間経過について 

執行猶予(付き判決)を受けるための要件はご確認いただけましたでしょうか?
では、Aさんは前に「懲役1年」の判決を受けていることから、刑法25条1項の「前に禁錮以上の刑に処せられたこと」がある者には当たらないのでしょうか?

この点、確認いただきたいのが次の規定です。

刑法27条
刑の全部の執行猶予が取り消されることなくその猶予期間が経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

「刑の言渡しは、効力を失う」とは、刑が消滅するということ(ただし、前科は消えない)を意味します。
そこで、上の執行猶予の要件との関係でいえば、Aさんは「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」(刑法25条1項1号)に該当することになります。ただし、これは執行猶予が取り消されなかった場合の話です。
たとえば、保護観察に付されていた方が執行猶予期間中に万引きをして遵守事項を遵守しなかったとして執行猶予が取り消された場合は刑が消滅することはありません。

以上の話をまとめますと、「刑の全部の執行猶予が取り消されることなくその猶予期間が経過し、かつ、刑法25条1項の要件を満たす場合」は法律上は執行猶予を獲得できることになります。ただし、これはあくまで法律上の話です。
裁判官が、執行猶予期間中に同種犯罪を犯したことなどを重くみて、実刑判決を下す恐れも十分考えられます。
それを避けるには、裁判で、Aさんにとって有利な事情(情状)をしっかり主張していく必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
執行猶予の獲得等、刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスのご予約・お問い合わせを受け付けております。

津市の窃盗事件 窃盗事件の刑事裁判

2019-12-20

窃盗事件と刑事裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇窃盗事件◇

Aさんは、津市のホテル働いています。
数年前からAさんは、ホテルの更衣室を利用する際に従業員のロッカーの中にある財布から現金を盗む犯行を繰り返していました。
犯行が発覚しにくいように一回で盗む金額は少額にしていたのですが、従業員の一人が更衣室に監視カメラを設置していたらしく、Aさんの犯行が発覚しました。
すでに被害を受けた従業員が警察署に被害届を出していたらしく、Aさんは、これまで何度も警察署に呼び出されて取調べを受けています。
10年ほど前に、近所のコンビニで万引きをして罰金を支払った前科のあるAさんは、今回の事件で起訴されて刑事裁判になるのではないかと不安です。
そこでAさんは窃盗事件の刑事裁判に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(フィクションです。)

本日は、窃盗事件で起訴された場合の手続きと刑事裁判について解説します。

◇略式起訴(罰金)◇

窃盗事件の略式手続とは、公判手続きを開くことなく、100万円以下の罰金を言い渡す手続きです。
  
窃盗事件の略式手続は、簡易裁判所で行われる窃盗事件の裁判で、窃盗事件の容疑者に略式手続を行うことに異議がない場合に行うことができます。
  
窃盗事件の略式手続は、罰金刑が科せられるものの、窃盗事件が早期に終結することによる身体拘束からの解放という利点があります。
つまり、窃盗事件で逮捕・勾留されたとしても、略式手続がおこなわれることで、早期に社会に復帰しこれまでと同じように生活することが可能になります。

◇即決裁判◇

窃盗事件の即決裁判手続きは、公判における判決の言い渡しまでの手続きを一日で行う裁判手続きです。

窃盗事件の即決裁判手続きは、窃盗事件の事案が明白であり、軽微で争いがないこと、証拠調べが速やかに終わると見込まれること等の事情から相当と認められるときに行われることになります。

窃盗事件の即決裁判手続きの最大の特徴は、裁判所が判決で懲役刑の言い渡しをする際、必ず執行猶予付の判決を言い渡さなければならないことです。
また、公判期日1日で終了することから勾留中の場合は、通常の公判手続きに比して、早期に身体拘束から解放されることになります。

一方で、窃盗事件で即決裁判手続きによる審理でなされた判決の場合、事実誤認を上訴の理由とできなくなりますので注意が必要です。

◇通常の刑事裁判◇

窃盗事件での通常の訴訟手続きは、冒頭手続き、証拠調べを経て、論告・最終弁論、判決の言い渡しという流れで行われます。
  
窃盗事件で通常の訴訟手続きが行われた場合、約1~2か月の期間で判決の言い渡しがおこなわれることになります。
起訴後も勾留され、保釈も認められない場合はこの期間も容疑者の身体は拘束され続けることになります。

◇刑事事件に強い弁護士を選任するメリット◇

身体拘束期間の観点からみると、窃盗事件における訴訟手続きは即決裁判手続き、略式手続の方がはるかにその期間が短いといえます。
とはいえ、窃盗事件の即決裁判手続き、略式手続のいずれも検察官が請求することで行われます。
刑事事件に強い弁護士に依頼することで、検察官に即決裁判手続き、略式手続の請求をするように交渉することが可能になります。

◇窃盗事件の刑事裁判に関するご相談は◇

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまで数多くの窃盗事件の弁護活動を行ってきた実績がございます。
こういった窃盗事件に詳しい弁護士に依頼することにより、検察官に即決裁判手続き、略式手続の請求をするように交渉した際の成功率も上がる可能性もあります。
窃盗事件でお困りの際は、窃盗事件に詳しい弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や、初回接見のお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-88124時間、年中無休で受け付けております。

自首で減刑を求める

2019-12-16

自首で減軽を求める手続きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

三重県尾鷲市で飲食店を営むAさんは、店の売り上げが悪化し、数年前から赤字が続いています。
すでに銀行など金融機関からの融資は打ち切られてしまい、Aさんは、仕入れの支払いができずにいました。そんな中Aさんは、高校時代の友人に対して「母親が入院して手術をしないといけない。来月になれば保険料が振り込まれるから一括で返済する。」と嘘の約束をし、借用書まで作成して、300万円を借り入れました。
そしてAさんは、友人から借りた300万円をこれまでの借金の返済に費消しました。
翌月になると友人から借金の返済を迫られたAさんは、あれこれ言い訳をして返済を先延ばしにしていたのですが、ついに嘘をついてお金を借りていたことがばれてしまいました。
そして友人から詐欺罪で警察に訴える。」というメールが送られてきたAさんは、このままだと警察に逮捕されてしまうのではないかと不安で、警察に自首することを考えています。
(フィクションです。)

◇詐欺罪◇

人を騙して財物の交付を受ければ詐欺罪となります。
お金の貸し借りは民事事件だと思われがちですが、お金を借りる際に、目的や返済等について嘘をついて相手を騙してお金を借りると詐欺罪に抵触する可能性があります。
今回の事件でAさんは、実際は借金の返済に充てるお金を、母親の入院や手術費用と、借金の目的を偽っています。更に、借金の返済についても「来月になれば保険料が振り込まれるから一括で返済する。」と嘘をついているので、友人がこの嘘を信じてAさんに300万円を貸していたのであれば、Aさんの行為は詐欺罪に抵触する可能性は非常に高いでしょう。

~量刑~

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
詐欺罪で起訴されて有罪が確定すれば、この法定刑内の刑事罰が言い渡されるのですが、その量刑は、騙し取った金品の額に比例すると言われています。(被害弁償や被害者との示談が成立している場合は、軽減される可能性が非常に高い。)
初犯であっても、騙し取った金品の額が100万円を超える場合は、実刑判決になる可能性があるので注意しなければなりません。
また詐欺罪の中でも、振込め詐欺等の特殊詐欺事件に関して、最近は、裁判所が非常に厳しい刑事罰を言い渡す傾向にあるます。

◇自首◇

自首とは「自らの犯罪行為を警察等の捜査機関に申告する」ことで、自首が成立すれば、刑が軽減される可能性があります。
ただ、自らの犯罪行為を捜査機関に申告したからといって必ず自首が成立するわけではありません。

自首が成立するには
①警察等の捜査機関が認知していない事件
②警察等の捜査機関が認知し捜査を開始しているが、犯人の特定には至っていない事件
の何れかの事件について、犯人が捜査機関に対し、自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めなければなりません。
つまり、既に警察が捜査を開始している事件で、かつその事件の犯人が判明している場合は、警察署に自ら出頭しても、それは自首には該当せず、単なる出頭にすぎません。

Aさんの事件で、Aさんが自ら警察署に出頭したとして、自首が成立する可能性があるのは
①未だ友人が、警察署に被害を申告していない場合
②すでに友人が警察署に被害を申告したが、Aさんが犯人だと判明していない場合
でしょうが、事件の被害者がAさんの友人であることから、②のケースはおよそ考えられないでしょう。

三重県尾鷲市の刑事事件でお困りの方、詐欺事件で警察に訴えられた方で自首を検討しておられる場合は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談、初回接見サービスのご予約はフリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)までお気軽にお電話ください。

刑事処分について解説

2019-12-12

刑事処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

無職のAさん(前科、前歴なし)は、4カ月ほど前に三重県伊勢市の民家に忍び込んで、現金や高級腕時計を盗み出しましたが、高級腕時計を買取りに出したことから犯行が発覚し、事件から1週間後に三重県伊勢警察署に、窃盗罪住居侵入罪逮捕されました。
その後、20日間の勾留を経て、これらの罪で起訴されたAさんは、現在保釈中で、刑事裁判の真最中です。
逮捕当時から選任している国選弁護人が被害者と示談を試みましたが叶っていません。
Aさんは、自分の刑事処分がどのようになるのか不安で、三重県の刑事事件を専門に扱っている弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

◇刑罰の種類◇

刑事処分、いわゆる刑罰には、重いものから順番に「死刑」「懲役」「罰金」「拘留」「科料」の5種類があります。
ここでいう「拘留」は、逮捕や起訴後の「勾留」とは異なります。
刑法を含めた刑罰法令は、「この罪名で有罪となった場合には、この範囲内で刑罰を科すことができる」と定めており、この法律に記載のある刑罰を「法定刑」と呼んでいます。

Aさんが起訴されている二つの罪名でいいますと
窃盗罪(刑法第235条)・・・10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
住居侵入罪(刑法第130条)・・・3年以下の懲役又は10万円以下の罰金
と、それぞれに異なる法定刑が定められています。

法定刑は「有罪が確定すればこの範囲内で刑事処分を科せれます。」というものなので、実際に言い渡される刑事処分は、具体的に事件の内容によって実際にどのような刑の範囲が適当かは異なります。

◇複数の事件で起訴されたら?◇

続いて気になるのが、複数の事件で起訴された場合、どのような刑事処分が言い渡されるのかという点です。
Aさんの場合ですと、窃盗罪と住居侵入罪の二つの罪で起訴されていますが、この場合の刑事処分はどうなるのでしょうか?

法律では、具体的事件の形に合わせて、実際に処罰することが可能な刑の範囲が定められており、この範囲を「処断刑」といいます。
処断刑の定め方は、いろいろありますが、今回は複数の事件がある場合の刑の定め方についてみていきます。

~併合罪加重~

原則として、複数の事件が発生した場合、以下のような形で処罰します。
・最も重い法定刑が定められている罪で処罰する。
・刑の範囲は、法定刑を基準に、懲役であれば1.5倍、罰金であれば複数の罪の合計額を限度とします。
ただし、懲役の場合には、元の罪の懲役の合計を超えてはなりません。
このような処罰の形を「併合罪加重」といいます。

上記した「併合罪加重」が原則となりますが、以下のような例外もあります。

~牽連犯~

2つの行為が目的と手段の関係にある場合には、併合罪加重はせず、重い方の罪の法定刑を遮断刑とするとされています。
これを「牽連犯」といいます。
例えば、Aさんの事件のように家に入って盗みをした場合には、住居侵入罪と窃盗罪が成立しますが、目的(窃盗)と手段(住居侵入)の関係にあるので、処断刑は、窃盗の罪の法定刑がそのまま用いられることになります。

~包括一罪~

法律に定めはありませんが、同じ目的をもって、時間的場所的に近接している状況で、同じ事件を反復継続して起こしている場合には、まとめて1罪として処罰します。

このように、実際にどのような刑が科せられるかは、起こした事件の内容により異なりますので、三重県内で刑事事件を起こし、どのような罪に問われ、どのような刑罰が科され得るのかご不安な方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談や初回接見サービスを24時間受け付けております。
フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。

刑事事件専門弁護士が商標法を解説

2019-12-08

商標法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

◇商標法違反事件◇

四日市市に住むAさんは、有名高級ブランドの模造品をインターネット等で販売していました。
ネット販売する際は、詐欺罪に問われないように注意し、「●●(有名ブランド名)本物そっくり」等と、購入者がブランドの模造品であることが分かるような書き込みをしていました。
そして販売を初めて年ほどで週百万円の利益を得ていたのですが、先日、三重県警の捜査員に自宅を捜索されて、有名高級ブランドの模造品数百点が押収されると共に、Aさんは商標法違反で逮捕されてしまいました。
(この事例はフィクションです)

◇商標法◇

「商標法」とは、事業者が、自社の取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークである商標を保護する法律です。
商標法は、商標を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的にしています。
商標を使用する者の業務上の信用の維持するという目的は、不正競争防止法も共通していますが、商標法が商標権を設定するという国家の行政処分を媒介としているのに対して、不正競争防止法が事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することとしているのと異なります。

◇商標とは◇

商標法にいう「商標」とは、人の知覚によって認識できるもののうち、文字、図形、記号、立体形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものであって

①業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品にして使用するもの
②業として役務を提供し、又は証明する者がその役務についてしようするもの

をいいます。
簡単にいうと「商標」とは、事業者が自己の取り扱う商品やサービスを、他人のものと区別するために使用するマーク、ロゴのことです。

◇商標権侵害◇

~直接侵害~
何ら使用権限のない者が、指定商品又は指定役務について商標登録を受けている商標である登録商標を同一の商標を使用したときは、商標権の直接侵害行為となります。
商標権の直接侵害行為については「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は併科」の法定刑が定められています。

~間接侵害~
商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為(みなし侵害)を行うと、商標権の間接侵害となり、それについては「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は併科」の法定刑が定められています。

◇みなし侵害◇

商標権のみなし侵害行為については以下のとおりです。

①指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用または指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録標章若しくはこれに類似する商標を使用
②指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品でであって、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出するために所持する行為
③指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供にあたりその提供を受ける者の利用に供するものに登録標章又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為。
④指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供にあたりその提供を受ける者の利用に供するものに登録標章又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために譲渡し、引渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為。
⑤指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録標章又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為。
⑥指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録標章又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為。
⑦指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用させるために登録標章又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為。
⑧登録標章又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為。

四日市市の刑事事件でお困りの方、商標法違反事件に強い弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談、初回接見のご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

職場の商品をネットで転売 業務上横領事件と弁護活動

2019-11-26

業務上横領事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

Aさんは、三重県いなべ市にあるディスカウントショップで店長をしています。
Aさんが働いているお店は全国にチェーン展開するディスカウントショップで、5年前にアルバイトとして働き始めたAさんは、その真面目な勤務態度が評価されて3年前に正社員として任用されて、半年前からは、いなべ店の店長を任されていました。
店長になってから、接客は当然のこと、お店の在庫管理から、注文、本部への売り上げの報告等に至るまで、これまでよりも業務量が格段に増え、残業が多くなったにも関わらず、給料があまり上がりませんでした。
そのことに不安を抱くようになったAさんは、お店の商品をインターネットのオークションサイト等で転売して小遣い稼ぎすることを思いつき、お店の倉庫に保管している在庫の数を少なく本部に報告して、倉庫に保管している商品をネットで転売しました。
数か月間のネット転売で数百万円の利益を得ていたのですが、本部が不正に気付いたようで、先日、お店に本部の査察が入って、これまでの帳簿等が回収されてしまいました。
Aさんは、今後のことが不安で刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

◇Aさんの不正が刑事事件化されると◇

Aさんの行為が何の犯罪に当たるのかについて検討します。

~業務上横領罪~

刑法第253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

今回の事件で、店長であるAさんは、お店の在庫商品を管理する立場にあります。Aさんのお店の在庫商品は、当然お店の物であってAさんの物ではありませんので、業務上横領罪でいうところの、Aさんが「業務上自己の占有する他人の物」となります。
また「横領」とは、自己の占有する他人の物を不法に取得することですので、Aさんの行為は業務上横領罪に当たるでしょう。
上記のとおり業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
罰金刑の規定ないため、起訴された場合は、無罪を得るか、執行猶予付きの判決が言い渡されない限りは刑務所に服役しなければなりません。

~窃盗罪では?~

窃盗罪は、他人の占有する財物を不法に領得する犯罪です。
今回の事件でAさんが転売した商品は、自己の占有する他人の物ですので、窃盗罪には該当しないでしょう。
店長のようにお店の在庫商品を管理する立場にない、アルバイトや社員が、Aさんのような行為に及んだ場合は窃盗罪が成立する可能性があるでしょうが、今回の事件では窃盗罪が成立する余地はないと考えられます。

◇弁護活動◇

上記したように、業務上横領罪の法定刑には、罰金刑の規定がありません。
そのため、起訴された場合は、無罪を得るか、執行猶予付きの判決が言い渡されない限りは刑務所に服役しなければなりませんので、まずは不起訴を目指す刑事弁護活動となります。
つまり、検察官が起訴を決定するまでに一刻も早く被害者に被害弁償し、示談を締結する必要があるのです。
これまでの業務上横領罪で起訴された刑事裁判の判決をみてみると、横領額が100万円を超えた場合は、初犯であっても起訴される可能性があるようですので、Aさんの刑事処分の軽減を望むのであれば、起訴を回避するために、早急に示談を締結することが必要不可欠となります。

いなべ市の刑事事件でお困りの方、業務上横領罪などの刑事事件に強い弁護士をお探しの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)まで、お気軽にお電話ください。

万引きを繰り返すと(常習累犯窃盗罪)

2019-11-16

常習累犯窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

無職のAさんは、鈴鹿市のスーパーで食料品を万引きした窃盗事件で警察の取り調べを受けています。
Aさんは、これまで何度も同様の万引き事件を繰り返しており、刑務所にも複数回服役しているのですが、先日の取り調べで警察官から「今回は窃盗罪ではなく、常習累犯窃盗罪で起訴される可能性が高い。」と言われました。
初めて耳にする罪名に不安を覚えたAさんは、今後の刑事処分が不安で、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

◇窃盗罪◇

お店の商品を盗めば「万引き」となり、これは「窃盗罪」に当たります。
窃盗罪とは、「他人の財物を窃取」する犯罪です。
「他人の財物」は、他人の占有する他人の財物です。つまり、他人が事実上支配し管理している他人のものをいいます。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗罪が成立するには、これらの要件に加えて、次の主観的要件を満たす必要があります。

●故意
財物が他人の占有に属していること、及び、その占有を排除して財物を自己又は第三者の占有に移すことを認識すること。
●不法領得の意思
不法領得の意思の要否については争いがありますが、判例では、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として経済的用法に従い利用処分する意思」をいうと解されています。
つまり、窃盗罪の成立要件には、故意に加えて、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として扱う意思(排除意思)と、他人の物をその経済的用法に従い、利用又は処分する意思(利用意思)から構成される「不法領得の意思」が求められます。

~窃盗罪の量刑~

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
あなたが万引きで捕まり、検察官に窃盗罪で起訴され、有罪判決を言い渡された場合には、10年以下の懲役あるいは50万円以下の罰金の範囲内での刑事罰が科されることになります。

万引きの場合、初犯であり、被害金額も少額で、被害弁償が済んでいれば、微罪処分として事件が処理されるケースも多く、検察官によって起訴されずに事件終了となることが多いでしょう。

◇常習累犯窃盗罪◇

窃盗罪は再犯が多い犯罪です。
窃盗罪を常習的に繰り返す常習累犯窃盗罪」が特別法(「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律」)で規定されています。

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

この条文では、常習累犯窃盗および常習累犯強盗について規定しており、常習としての窃盗等を行う習癖を有する者に対して、行為前野一定の前科を考慮し、その習癖のない者より重く処罰することとしています。

常習累犯窃盗とは、
①過去10年間に、窃盗罪等で6月以上の懲役刑を3回以上受けた者が
②常習として窃盗を行うこと
です。

①について、過去10年の内に、窃盗罪等で実刑判決を3回受けていれば当てはまるのですが、例えば、一回目が懲役6月の執行猶予判決、二回目が懲役1年の保護観察付執行猶予判決、三回目が懲役2年の実刑判決であった場合、一回目と二回目の執行猶予が取り消され、三回目の懲役2年の刑の執行後に、引き続き一回目と二回目の刑の執行を受けた場合においても、それらは合計3回の刑の執行を受けたことになる点に留意が必要です。
①の要件に加えて、「反復して犯罪行為を行う習癖」があるか否かという②の要件を満たして初めて常習累犯窃盗が成立するというわけです。

常習累犯窃盗罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。刑法で規定されている窃盗罪の法定刑に比べると非常に厳しいものとなっているので注意しなければなりません。

鈴鹿市万引き事件でお困りの方、常習累犯窃盗罪で起訴される可能性のある方は、三重県の刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律にご相談ください。
フリーダイヤル0120-631-881で24時間365日、初回接見サービス、無料法律相談のご予約を承っておりますのでお気軽に電話ください。

不起訴処分の獲得を目指す

2019-10-17

不起訴処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

会社員のAさんは、4カ月ほど前に、当時アルバイトをしていた津市内の飲食店において、更衣室に放置されていた同僚の財布の中から現金2万円を盗みました。
同僚が、三重県津警察署に被害届を出したことから、Aさんは警察署に呼び出されて取調べを受け、そこで犯行を自供しました。
その後、同僚に謝罪し、盗んだお金を弁償しましたが、先日、津地方検察庁の検察官から呼び出しがあり、検察庁に行きました。
そこで検察官の取調べを受けましたが、取調べの最後に、検察官から「今回の事件は不起訴処分にするので、今後は気を付けてください。」と言われました。
初めて刑事事件を起こしたAさんは不起訴処分の意味が分かりません。
(フィクションです)

◇検察庁◇

まず、警察の捜査を終えた事件が送致される検察庁について説明します。
三重県内に検察庁はいくつかありますが、津市内の刑事事件に関しては基本的に

〒514-8512
三重県津市中央3番12号 津法務総合庁舎内
津地方検察庁 津区検察庁

送致されます。

◇不起訴処分◇

不起訴処分とは、刑事手続きにおいて、検察官が決定する終局処分(その事件について起訴・不起訴を終局的に決める処分)の一種で、その意味は文字通り、起訴されないということです。

不起訴処分は、検察官が決定する終局処分の一種ですから、当然「検察官」の判断で決定します。
検察官は、警察や検察の捜査で収集した証拠や、被疑者を取り調べた内容を総合的に判断して、事件を起訴するか、不起訴処分にするか判断します。

このことは、以下の通り刑事訴訟法に定められています。

●刑事訴訟法第247条(国家訴追主義)
公訴は、検察官がこれを行う。

●刑事訴訟法第248条(起訴裁量(便宜)主義)
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴をしないことができる。

ちなみに不起訴の決定時期については、法的な制限がありませんので、全て検察官の裁量に委ねられています。
検察官は、捜査の過程で収集した証拠に基づいて終局処分を決めますし、証拠の収集には一定程度時間を要しますから、終局処分の判断までにも一定の時間を要します。
ただし、身柄事件の場合は時間的制約がありますから、在宅事件に比べて証拠収集のスピードがあがり、その分、終局処分を下す時期も早くなります。

◇不起訴処分の判断基準◇

検察官が収集した証拠に基づき判断するものなので、法律的に具体的な判断基準があるものではありません。
検察官は、起訴するだけの証拠が集まったか否かを見極め、証拠が集まっていないと判断した場合、あるいは集まっているが、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況から起訴を必要としないとき(刑事訴訟法248条)は不起訴を決定するといわれています。

◇不起訴処分の種類◇

検察官が不起訴と判断するに至った理由の「題名」のことを裁定主文といいます。
よく目にするのが、「嫌疑不十分」と「起訴猶予」です。

~嫌疑不十分~
検察官が起訴するに足りる証拠が集まっていないと判断したときに裁定するものです。
~起訴猶予~
検察官が、証拠から犯罪であることは明らかであるが、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況から起訴する必要がないと判断したときに裁定するものです。

「嫌疑不十分」「起訴猶予」の他にも不起訴の理由には様々なものがあり、例えば、そもそも被疑者が死亡している場合は「被疑者死亡」により不起訴となりますし、訴訟条件が欠けている場合も不起訴となります。

◇不起訴になったらどうなるの◇

刑事裁判にかけられること・刑罰を受けること・前科が付くことがなくなります。
したがって、裁判所や検察庁からの呼び出しに応じる負担もなくなります。
また、不起訴処分の獲得によって職場の雇用や資格取得の場面でもよい影響が出るでしょう。

津市で刑事事件を起こしてしまい検察庁に送致された方、不起訴を望んでおられる方は、不起訴処分の獲得に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談、初回接見サービスのご予約をフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。

鈴鹿市の背任事件

2019-09-09

鈴鹿市の背任事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇事件◇

Aさんは、鈴鹿市内にある信用金庫で、融資担当課長として働いています。
Aさんは、鈴鹿市内で生まれ育っていることから、信用金庫の顧客には、鈴鹿市内で自営業を営んでいる知り合いがたくさんいますが、その中で、工務店を営んでいる幼馴染にも、数年前から融資をしています。
融資を開始した当初は毎月利息が返済されていましたが、幼馴染の工務店の業績が悪化し始めた5年ほど前からは、返済が滞っていました。
しかし幼馴染に懇願されて断ることができなかったAさんは、単に既存の貸付金の回収を図るとの名目(救済融資)で、その後も約50回にわたって合計5000万円を無担保で貸し付けました。
その後、幼馴染の工務店が倒産し、救済融資を含めて全ての貸付金の回収ができなくなったことによって、Aさんの不正融資が信用金庫で問題視されたのです。
Aさんは、これまで何度も信用金庫から聞取り調査を受けており、信用金庫は、Aさんを背任罪で刑事告訴することを検討しているようです。
不安を感じたAさんは、鈴鹿市で刑事事件に強いと評判の、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用しました。
(フィクションです)

◇背任罪~刑法第247条~◇

背任罪は、他人のためその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立する犯罪です。
背任罪で起訴されて有罪が確定すれば「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。

~背任罪の主体~

背任罪の主体は「他人のためにその事務を処理する者」ですが、株式会社の発起人、取締役、会計参与、監査役、執行役等の役職員は背任行為に及べば、刑法第247条に定められた背任罪ではなく、会社法第960条に定められた「特別背任罪」の適用を受けます。
特別背任罪の法定刑は「10年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその併科」と、背任罪に比べると非常に厳しいものです。
Aさんの身分は、信用金庫の融資担当課長ですので、特別背任罪の主体にはなり得ず、背任罪が適用されます。

~図利加害目的~

背任罪が成立するには、その背任行為に「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要となります。
これを「図利加害目的」といいます。
背任罪が財産犯であることを考えると、ここでいう「利益」「損害」は、財産上のものに限るという説もありますが、判例では、自己の社会的地位、信用、面目、経営権等を保全、維持することなどの身分上の「利益」、これらを失墜させる「損害」など、財産上に限られず身分上の「利益」「損害」も含むとされています。

◇救済融資◇

救済融資とは、すでに多額の融資を受けている者が、業績の悪化等で経営上の屈強に陥った際に、そういった状況から救うために更に追加融資する等、一般的に倒産に瀕した企業の経営改善のための資金として貸し付けられる融資を総称する金融上の実務用語です。

◇救済融資による背任罪の成否◇

救済融資の性質上、それを実行するに際しては、融資先から十分な担保を徴することが困難で、かつ貸し倒れの危険が大きいと言えるでしょう。
しかし、融資する金融機関とすれば、救済融資によって融資先企業が経営を持ち直して業績が回復する見込みが望める場合には、むしろ若干のリスクを冒してでも救済融資を続けることによって、焦げ付いた既存の貸付金の回収が可能となり、最終的には金融機関の損失を防ぐことになります。
このような観点から、融資先である企業の業績が回復する見込みがあり、融資する金融機関自体も、融資先企業の業績回復に応じて既存の貸付金の回収のために必要な措置を講じていたとすれば、任務に違背したとはいえないので、背任罪は成立しないでしょう。
逆に、融資先企業の業績が回復する見込みがない状況で、新たな担保物件を徴する等の措置を講じずに漫然と救済融資したのであれば、背任罪が成立する可能性が高くなります。

◇Aさんの事件を検討◇

上記のように、背任罪の成立には図利加害目的が必要となります。
つまり、本人の利益を図る目的で行為に及んだ場合は背任罪を構成しない場合もあるのです。
本来、信用金庫の業務における「融資」は、融資先と信用金庫の利益を図る目的で行われるものですが、同時に、それまでの融資の焦げ付きを防ぐなどの本人の利益を図る目的が、自己又は第三者の利益を図る目的と併せて認められることがあります。
このような場合には、目的の主従により背任罪の成否が決定することになるのです。
その目的がなければ当該行為に出なかったようなものが主たる目的と認められますが、本人の利益を図る目的が決定的な動機ではない場合には、背任罪の図利加害目的が認められてしまうでしょう。
また救済融資の観点からも、Aさんは、工務店を経営する幼馴染から新たな担保物件を徴することもせずに、幼馴染に懇請されるまま、単に既存の貸付金の回収を図るとの名目で、友人の利益を図るため漫然と救済融資に応じているので、Aさんの行為は、背任罪に当たる可能性が高いでしょう。

鈴鹿市の刑事事件でお困りの方、勤務先から背任罪で刑事告訴されるおそれのある方、三重県鈴鹿警察署に、ご家族、ご友人が逮捕された方は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料

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